枢機卿をなんとかしたい所
鎖国派は、誘導が有るとは言え、自身の信念に基づいて動いてるんだろうから、それを力づくで捻じ曲げるってのは本意ではないんよね。まぁ、説得出来るんなら、その方が良い訳だし。
ただ、その先にあるのが、多分デストピアだってのが予想出来るが故に、阻止する方向で動きたい訳だ。
「聖女さんは……」
「カスティーリャです」
「はい?」
「カスティーリャ・ラマンベックです。ワタシの名前。スーリヤと呼んで下さい」
……そう言えば、俺は名乗ったけど、名前聞いてなかったな。『獣人の王国の聖女さん』で通じてたし。
うん、今まで一寸、失礼だったな。申し訳ない。ってか、何故スーリヤ?
「では、わたくしは『Iちゃん』と」
「御免被る!!」
何に対する対抗心か!! てか、一寸キャラ崩壊激し過ぎやしませんかねぇイネスさんよぉ!!
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「魔族が関わっていると言う所で、鎖国とやらが危険であるとワタシは納得できるのですが、それを素直に伝えると言うのではいけないのでしょうか?」
「魔族が関わってるってぇ情報のソース自体が“俺”と言う『他国人』って辺りで、信じられんって人間は必ず出るんよ、それこそ、他国による欺瞞工作だとかな」
それでなくても冒険者ギルド辺りでは既に目の敵にされてる訳だし。そういう意味では、すでに工作は成ってるとも言えるんよな向こうのだけど。
「そのような輩、神子様のご威光を示せば幾らでもどうとでも成ります!!」
「それ、今一番やっちゃなんねぇ事だからな!?」
力づくでとか、不信をばら撒く様な物だし、絶対に反感が出るだろう。例え、獣人の王国が力至上主義だったとしても、だ。
「そもそもの話、獣人以外を排斥する事でメリットがあるからこそ、実行しようとしてる訳だろう? そう言や、その枢機卿は教会的には何のメリットが有ると言って、獣人以外を排斥させようとしてるんだ?」
「教義の厳密化だそうです。根源的な種の在り様が違うのだから、別種族同士が混じっていては、厳密な教義の施行が出来ないと……」
「別の種族と合同だと、どうしても妥協せざるを得ない部分が出るとか何とかって事か」
俺がそう言うと、聖女……スーリヤがコクンと頷いた。
純粋な信仰心からって事か。厳密に教えを行う事での、より研ぎ澄まされた信仰を行いたいってぇ事なんだろう。
ただなぁ。前世日本人な俺としちゃ、許容と寛容さの無い宗教ってどうなんだろ? って思うんだがね。
まぁ、仏教なんかは修行によって悟りを得るってぇ部分もあるから、厳格に成らざるを得ない部分もあるんだろうけど。
それ以外の宗教って、神の教えを守り感謝するってのが大本なんじゃないのかって思うんだが、そうでもないのか?
ぬう、ファンタジー好きではあったが、特に宗教に詳しくは無かったから、その辺どうなのか分からんな。
「理屈は分かるが、それ、国単位でやる事じゃないんじゃないのか?」
「と、言うと?」
「いや、普通に分派しろよって言うかさ」
「……そう言えば、そうですよね」
多分、その辺りも思考誘導をされてるんだろうな。オンディーヌに。




