少年の主張
話を聞いてる限りだと、もう結構やばいんじゃね? ってぇ感じだな。商人やら枢機卿の中には、すでに取り込まれてんだろ、ソレって感じの輩がちらほら居るし、聖女さんの耳に届く程度には、城勤めの貴族の中にもシンパが出来て居るらしいからな。
「その辺、この国の王様はどう考えてんだ?」
「王は代替えしたばかりでして……」
聖女さんが嘆息すると、何か鼻息荒く侍女さんが口を開いた。
「先王が急に病気でお隠れに成ってから、2年程しかたって居りませんから。立場固めもまだ完全ではございません!! そもそも、『力こそパワー』の王家においては、力を示せていない王は、軽んじられていますので」
『ふふんっ』と鼻息荒く、パタパタと尻尾を振りながら彼女は、そう説明をした。
……頭悪そうな王家だな。てか急な病死? それもしかして暗殺されたとか? まぁ、その辺は王宮も調べたんだろうし、今更その辺突いても詮無き事な気がするから放っておくか。
それよりも、力を示せない“王”ねぇ。どう言う事だってばよ。
「現国王は、まだ12才であらせられるのです」
俺の困惑を感じたのか、聖女さんがそう答えた。
ああ、単純に若いせいで力が弱いって事ね。若いんだから経験も技術も足りない、と。そりゃ仕方がないかぁ……って! 納得するかあああぁぁぁぁ!!!!
「年齢若かろうと、ある程度の才能と死ぬ程の努力さえやれれば若くして成り上がる事だって出来るんじゃあぁぁぁ!!」
俺、今、6才やぞ!! 俺の倍生きてて、力がないとか、舐めとんのかぁ!! 王子様だったってんなら、生きるだけならナンボでも世話して貰えたやろが!! それ以外の時間は全て修行っとけやあああぁぁぁ!!
突然の俺の叫び声に、聖女さんギョッとした表情でビクリと身を震わせた。護衛騎士の方々が剣の柄に手をかけ、それに反応して犬達や聖武器’S、ラミアーとセフィからも殺気があふれ出す。
おう、しまった。俺との境遇の違いの、あまりの理不尽さについ声を荒げてしまったわ。
「悪い、大声を出した。だが、俺は間違った事を言ったとは思ってないからな」
「……それは、その……」
いやだって、これが普通の王族だったら、『そんなもんかな?』と、思わんでもないが、『力こそパワー』なんてとんちきなスローガンの王族の王子が、その年まで力を見せる事が無かったとかって、いくら何でも可笑しいやろ。
恐らく聖女さんも同じようには感じてるからだろう。否定の言葉が出てこないのは。
「流石は闘神様の神子様!! 全くのその通りでございます!!」
侍女さんに至っては称賛までしやがるし、いや、この人、俺の言葉ならどんな言葉でも称賛しそうな危うさが有るから、ノーカンだろう。
てか、王族の考え方を聞けば、むしろ彼女の考え方の方が獣人の王国じゃぁ一般的な気がするわ。むしろ聖女さんの考えの方が少数派なのか? てか、そう言や俺、光教会の教義とか知らんやん。まぁ、関係ないか。
「一先ず、国王さんの考えがどうなのかって事を確認せんとなぁ。下手すりゃ、丸め込まれてるってぇ可能性だってあるが、もしかすれば、心から称賛してる可能性だってある訳だし」
もしそうだった場合、国策ってぇ事に成る訳だし、そうなると俺が介入する方が不味いって事にも成りかねんからな。




