割とすごかったっぽい
獣人の王国で、密かに他種族を国外へと追いやると言う計画が少しづつ進行していると言うのは理解した。その情報については、証言などの資料と共に獣人の王国の聖女さんと共有した訳だが。
「ほう」と、聖女さんが溜め息を吐く。ラブラドールにも似た面長の美獣人さんだ。そんな憂いのある表情も絵に成るな。
って、ミカとバラキ! 何で頭で小突いて来るんよ!! しかも分身してまで!! ちょ、止め!!
「魔族……ですか。そんな者がこの国に……」
「あー、気にしない方が良いと思うぞ? 俺の確認してるだけでも、結構な人数が人間社会に紛れてるみたいだし」
俺の言葉に、聖女さんを含めた侍女さんや護衛騎士の面々もギョッとした表情になる。うん? 何か有ったっけか?
『【説明】マスター、魔族は一体でも現れると、その社会を破壊し、絶望のどん底に陥れる存在だと言われていますので……』
『【追加】ただでさえ、人外の膂力を持った怪物なのデス! 普通に模擬戦やったり、戦闘タイプじゃないからって圧倒できるオーナーはイレギュラーなのデス!!』
あー、前にグラスと話してた時に、そんな話が出てたっけ。でもなぁ、テモ・ハッパーボこと、バフォメットの正体知ってるイブだって良く分からなさそうな表情してるし。
『【嘆息】そういう意味では、個体名【イブ】も規格外でしょう。あの年齢で聖槍と肩を並べられるのですから』
『【苦笑】ただ、個体名【イブ】が平気な顔をしてられるのはオーナーの存在が大きいデス』
そう言うもんか。でも、イブが規格外だってのには同意できるな。冒険者パーティー『緑風の調べ』のリシェルなんかは、魔法学校出のエリートさんだったと思うんだが、そんな彼女でも【詠唱破棄】は覚えられんかったからなぁ。いや、絶対無理ってぇレベルではなかったらしいが。
才女であるだろう彼女ですら、ジャンヌから見たら凡人らしいからな。そんなジャンヌですら称賛する程の才能をイブは持ってる訳だ。
「やっぱり、家のイブは天才だな!!」
俺がそう言うと、イブが顔を真っ赤にして俯く。うんうん、可愛い可愛い。
バフォメットの正体については、ティネッツエちゃんは知らないだろうし、ラミアーもセフィもモンスターだもんな。それも結構な強さの。ラミアーは俺と肩並べられるって事は、バフォメットにもそれなりに対抗できるって事だし、セフィは……神に匹敵するってぇ【龍樹】の化身だしなぁ。犬達は、言わずもがなってぇレベル。
今さらながら、家のパーティーの異常さに気が付いたわ。
おっと、聖女さん達、ほったらかしにしちまった。いまさら、紛れてるけど平気だよとか言った所で、疑念は拭えんか。
あぁ、そう言えば。
「人間社会に紛れてて、クーデターを起こそうとしたり、魔導国に戦争吹っ掛けて来た魔族は、ちゃんと倒したから、問題は無いと思うぞ?」
「え!! た、倒されたのですか!! 魔族を!!」
「魔人族国でクーデター画策してたやつはな。魔導国に戦争吹っ掛けてきたヤツに関しては、俺は召喚したモンスター討伐の手伝いだけだったけど、多分、魔導王がじきじきに」
バフォメットとかゴモリーは野放しだけど、大本の計画を立てたであろうガープの方は、な。驚愕の表情の聖女さん達に対して、侍女さんの方は『ああ、やはりわたくしの闘神様!!』とかって呟きながら『ヘブン状態かよ!!』ってぇ突っ込みを入れたくなる程の恍惚状態に成ってやがる。
そもそも俺、【闘神】とやらじゃないんだからね!!
う~ん。これ、ちょっと対応間違ったか?
それはそれとして、今は獣人の王国の事だな。
これ、獣人の王国から他種族を排斥したとして、この裏に居る魔族に何のメリットがあるのか分からんのよね。
大凡、大量の【オド】を摂取するためだってのは理解できるんだが、その【オド】ってのは、感情と紐づいてて、魔族毎に好みの【オド】が違う訳だ。
俺としちゃ、そもそもその企みを潰したいってぇ思惑があるんだが……
何せ、何もなくても、俺の悪い噂話何かをばら撒いて、こっちの動きを牽制しようとかして来る位だからな。多分、俺の性格や行動指針とは相容れない価値観の持ち主なんだろうさ。
つまり、俺が自由に動いてると、自分の計画成り何なりに支障が出るから牽制する必要があるってぇこった。
そういう事なら、こっちだって積極的に介入してやるさ。もっとも、それを見越しての計画を立てられたも厄介だから、情報はなるべく収集しつつ、裏をかかれない様に慎重に、だがね。




