そう言う策
ルールールーの一族ってのは、本当に優秀だよな。獣人の王国に行った人員からの報告で、どうも、件のヴォル……
『【補助】個体名【ヴォルフガング】ですね』
いやいや、早々間違えないから。大丈夫覚えてる。
『【重複】個体名【ヴォルフガング】です。マスター』
あ、はい。
まぁ、兎も角、ヴォルフガングの一党が、商人を始めとした別の職種の獣人にも声を掛け始めてるって事が分かってきた。表立って大々的にってやり方じゃなく、裏でこっそりって感じらしいが。
怪しい事この上ないよな? これ、商人だけじゃなく職人やら裏ギルドの連中にもらしい。
そして、やんわりとだが、町中から、獣人以外の人間を締め出し始めてるらしい。ただし、こっちはそんな感じがするって程度の話。件の接触のあった商人が、獣人以外の弟子を余所の町の支店に移したりとかな。
まぁ、こっちに関しては、ルールールーの所の人間が、『余所の町で儲け話があるんだが、一口乗らないか?』って感じで話を持ち掛けられたって所からなんとなく不審に思い、いろいろと調べた結果、そんな感じでの動きが見えたらしい。
つまりは、話を持ち掛けられなければ、完全にスルーしてたって事だ。もっとも、向こうが獣人以外の締め出しをしてたとすれば、遅かれ早かれ接触はあった筈だから、早い段階で分かって良かったとは思う。
これ、遅かったら、多分、強制的に排除されてただろうからな。
「ルールールー、報告有り難う。人員は、獣人の王国から引き揚げてくれ。多分これからもっときな臭くなると思うから」
「分かりました」
ルールールーに下がって貰い。俺は溜め息を吐く。
「なぁ、これってどう思う? 俺の予想だと、クーデターまではいかないと思うんだけど、それも、向こうの上層部次第だと思うんだが……」
『【予想】恐らくオーナーの思って通りだと思うデス。上層部にどれだけ食い込んでるか次第デス。クーデターが起こるまでもなく終わるデス』
しっかし、俺の考えてる通りであるなら、まぁ、ヴォルフガングとやらの気持ちは、全く理解できないって訳でもないんだが、だからってそこまでするかとも思う。
いや、アイツの中じゃ、それが最善の策って事なんだろうけんどもさ。
ただ、例えばそれそのものが、魔族の暗躍の結果だったとして、『何故?』って疑問は尽きないし、それが成ったとして、魔族にどんなメリットがあるのかが全く分からない。
いや、最終的に、大量の【オド】を手に入れる為の策なんだろうが……
まぁ、その魔族魔族によって必要な“感情”は違うし、こんな所で考えてたって分からん事ではあるんだが。
『【疑念】マスター』
「うん」
「どゆ事?」
今までの情報を聞いても、良く分からなかったらしいラミアーが首を捻る。
「多分だけどな、ヴォルフガングは、獣人の王国を獣人だけの国にした上で、『独立』させ様と考えてるんだと思う」
つまりは『鎖国』だ。




