悪魔ですか? いいえ魔族です
「オンディーヌはねぇ。気分屋でいたずら好きなのよぉ」
バフォメットの名前を出した途端に、即効真面目に成りやがったな。こう言う、他人の威を借りる様なやり方はどうかとは思わんでもないが、本気で亡き者にする以外の方法が、俺って言う個人ではできない以上、致し方なしやぁね。
『【進言】他者の力を借りるのも戦略デス! 効率よく物事を進める為にも必要な処置デス!!』
せやね。使えるものは親でも使えって言うしな。……立ってる者だったか? まぁ良いか。
しっかし、バフォメットは何やらかして、ゴモリーにここまで脅えられるんだか。いや、多分やらかしたのはゴモリーの方な気がするけど。確か魔人族国の時は、それでも普通にゴモリーもバフォメットに対応してたよな? 向こうは嫌ってる様だったけど。
うん。藪蛇に成る予感しかしないから突っ込まんが。
「オンディーヌはぁ、水のある所ならどこでも行けるし、人の認識をまどわせられるから、こういう工作は得意なのよぉ。でもね? 彼女もちょっと利用されてるだけだから、あんまり怒っちゃダメよぉ」
いや、実質的な被害ってのは獣人の嫌がらせ位だし、それもこっちで対処できる程度だったからな。皇国に関しちゃ、逆に友好を深めるってぇ結果に成ってる訳だし、触接的に手ぇ出してこないってんなら、オンディーヌに恨みなんざないぞ、と。
やっぱりと言うか何と言うか、前世で言う悪魔の名前を冠してやがるんな。名前からして【水】に関わる能力を有してるって事で良いのかね? そして多分オンディーヌの喰らう【オド】は“困惑”とか“不信”とかそう言った感じか。
ってか……
「利用?」
「そう、黒幕は別にいるわぁ」
ゴモリーの話では、オンディーヌが決まった様に個人を対象にして、こう言った噂話何かをばら撒いたりするってのは珍しい事なんだそうな。まぁ、聞いてる限り気まぐれっぽいからなぁ。
そうなると、黒幕は別にいて、オンディーヌの性質を分かってて利用してるって方がしっくりくるし、実際、オンディーヌの方も彼女らしからぬ動きをしてるらしい。
ただ、流石にその黒幕って輩も警戒してる所為なのか、その尻尾は掴めてはいないそうだ。
『継続して調査はするけどねぇ』と、ゴモリーは話を締めくくった。
「……その黒幕ってのは、魔族だと思うか?」
「十中八九そうでしょうね、でなければ、彼女を利用なんて出来ないわぁ」
まぁ、そうだろうな。しっかし、黒幕ねぇ。『赤銅のゴブリンライダー』の話を知ってるって辺りで、その辺りの手引きをしていた連中の中に居たって事かね。
アレも、早々にトカゲの尻尾切をされてるから、上に居た連中の事は、結局良く分かってないんだよなぁ。
もしそうだったとしたら、その辺りから目を付けられてたって事かね? いや、その辺りでは、多少の警戒はされてたとしても、脅威だとは思われてはいなかっただろうさね。
う~ん。それは今も同じか? ただ、俺に余計な手出しをされたくないって感じの意志が見え隠れはしている。積極的に排除したいとまでは行って無い様だけど。
結局、今の所は、警戒レベル上げとくって事くらいしか出来んからな。
今までの感触から、獣人の王国の時が一番積極的な干渉だったか? つまりは、そこで起こる事に関わって貰いたくないって事なんかね? そうなると、やっぱりもう一度、獣人の王国に行ってみた方が良いか?
どうも碌な事しなさそうな輩だし、その邪魔するってぇ意味も含めて。
先に手を出してきたのは向こうだし、やられたらやり返すさね。何もしなくても、ちょっかい掛けられるってんなら、喜んで迎撃しちゃるわ! 俺達の平穏な日々の為にもな!!




