取り敢えずは仕切り直しと言う事で
『【結果】結構ずれた位置にあるようデス』
ああ、やっぱりかってのが正直な感想だぁね。
「トール、大陸!!」
「トール大陸ですね!!」
「トール大陸~w」
『と~るたいりくぅw』
「喜んでるところ悪いが、まだ、新大陸と決まった訳じゃないし、そもそも俺の名前なんざ付けんからな?」
何か喜んでるイブとティネッツエちゃん二人の方を見ると、キョトンとされた。
そのついでで騒いでただけのラミアーとセフィ。おまいら後で体育館裏な? wって何だ、wって。
「むぅ」
『うへぇ』
いや、イブとティネッツエちゃんが、心の底から俺が偉く成ったり、有名に成ったりするのを喜んでくれてるのは分かるんだが、こっちとしては、仲間の皆と楽しく暮らせる以上の事は望んでいないんよ。
だからこそ、その為の苦労は厭わんし、それを妨げようって輩と対立するってぇ覚悟も有る。
彼女達にとって、俺の名誉が大きくなるのは誇らしいって事も分かるし、そう思ってくれてる事自体は嬉しいんだが、その辺、割と保守的な部分のある俺の思考と乖離があるよなぁ。傍から見てるとそうは見えんだろうけど。
『【苦笑】マスターは野心的に見えますから』
『【進言】これはもう、覇王を目指すしかないと思うデス』
煩いよ。ってもまぁ、しょうがないって部分はあるからなぁ。
そんな風に思ってため息を吐くと、バラキが足元に擦り寄ってきてくれる。しゃがんで、首元から顎にかけてをわしゃわしゃとくすぐると、目を細めて尻尾をユラユラと揺らした。
そんな俺の背に、ミカも頭を摺り付けて来る。
俺の心情を即座に汲んでくれる、本当に良い女達だわ。
「……それはそれとして、ここって、既存の大陸とは違うんか?」
『【困惑】正直、自分達の時代にはすでに知られていた大陸だとは思うのですが……』
そうだよな。現行だと、見つかってないかも知れない大陸とか分かるはずもないもんな。もし新大陸だとすれば、その情報そのものが表に上がってない訳だし、ここが“扉”で繋がってる以上、ファティマ達の時代には既存の大陸な訳だもんな。
う~ん。予定だと、もうちょっとこの大陸で活動する予定だったけど、一旦戻って情報の整理をした方が良さそうだな。
『【賛成】そうですね、このままあてどもなく人の痕跡を探すよりは、情報を集め直した方が良いかもしれません』
「だな」
よし、そうと決まれば、取り敢えず戻るか。いや、ウリよ、悲しそうな瞳でこっちを見るなや。確かにお前からすれば、満足行くまで狩りが出来んかったんだろうけんどもさ。
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そんなこんなで自領に戻る。半月一寸の旅だったが、なんだかんだ言って、ここに戻ると『帰ってきた』感が半端ねぇな。
もうすっかり、ここがホームな訳だわ。
それについては犬達や他の皆も同じらしい。全体的にちょっと緊張が緩んでる。
「トール、様っ」
「あん?」
イブが俺の袖を引っ張りながら指を差す。
『【疑問】何か集まってるデス』
と、ジャンヌの言葉通り、領館の前に人が集まってやがる。おいおい、嫌な予感しかしないんじゃが?




