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何だその属性

 ええ~~。ってのが、俺の偽らざる気持ちだ。


 いや、意思を持(インテリジェ)つ武器(ンスウエポン)って事だし、最近どころか昔のラノベなんかでも良くある展開だしさ、ぶっちゃけ俺も嫌いじゃ無いけどさ。武器の人化。

 だとしても、これだけは言っておきたい。


 これは、人化じゃなくて変形だ!!


 一瞬まばゆい光に聖斧が包まれたと思ったら、そこから魔法的何かで人の姿になるのかと思えば、分割線が走ってバリッた感じで変身じゃなく変形バンク。


 そして現れたるは少女型のロボット娘メイド風。属性盛り過ぎなんじゃああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!


 その、聖斧改めロボメイドは、俺の前でモップを構えている。

 現状で唯一の不幸中の幸いは、このロボメイドが命令に忠実故に敵対している訳じゃなく、自身の存在意義を守るために敵対してるって事だろうか?

 もし、命令に忠実ってだけなら、つまりは命令なり、マスター権限なりを上書きしてやらなきゃいけないって事に成るんだが、ぶっちゃけ俺に、ロボメイドのプログラムの書き換えなんて技能ないからな!

 存在意義を守るためってなら、つまりは彼女……彼女? 一応女性人格っぽいし、少女風に造形されているんだから彼女だと思うんだが……

 まぁ、今は置いとくか。

 つまりはコイツが納得さえすれば交渉に持ち込む余地がある訳だ。


 まぁ、逃げられると厄介だし、ここは肉体言語を駆使してのOHANASHIしかないか。

 てか、ここ数日でのバトルの過密さ加減がちょっと危険領域な感じ。闘い過ぎだろ俺。


 確かに毎日狩りで戦ってはいるが、あれは倒す方法が確立された“狩り”であって“闘い”では無い。

 俺はウリみたいな戦闘狂(バトルジャンキー)じゃないんだ。


 今、『え?』みたいな表情でこっち見てた犬達、おまいら後で説教な。


 ロボメイドがジリジリと間合いを詰める。俺は身体能(フィジカルエ)力向上(ンハンスメント)とアドアップを発動し、魔力“外装”を纏った。


『【納得】やはり【プラーナ使い】の様ですね、これは気を引き締めなければ成らないようです』

「は?」


 ここに来て更に謎ワードが増えたんだが? 何? プラーナ使いって。え? これ魔力じゃねぇの?

 成程、変形してから一気に掛かって来なかったのは、俺がそのプラーナ使いと言う奴だったから、それで警戒してたって事か。


 プラーナね、インド哲学で“神秘の流動”とか“気”を意味する言葉だったか。そう考えると、何かしっくりくるな。

 しかし、プラーナ……魔力ですら、なかった……


 てか、何かちょいちょい、前世の世界と被ってる用語とか出てくるよな。まるっと違う世界じゃないって事か? うん、分からん。


 とりあえずはロボメイドの確保だな。うん。


 いつまでもこんな所に居る訳にも行かないし、お見合いしてても埒が明かないんで、俺の方から先手を取る事にする。

 巌流島だったら「小次郎! 破れたり!!」とか言われる場面か? いや、あれは鞘を放り捨てたからだったか。まぁ良い。


 俺は一気に加速し、ロボメイドの正面に突っ込む。迎撃のためにモップの柄で突きを放ってくるロボメイドの、その突きの引き際に合わせ、その横を更に加速しながら通り過ぎ、ついでに足を刈った。

 重心を戻し切る間際で前足を刈られたロボメイドは、体勢を崩し、それを立て直そうと、刈られた脚を地面に戻そうとするが……残念、それは悪手だ。俺が後ろに回ってるってのに体勢を直す方を優先させるとは……

 やはりと言うか、武器形態で“使われる”事が本分なんだろうな、人型での対人戦闘の“経験”が不足している。せっかくの棒術なのだから、そこは棒を地面につけ、重心を棒の方に乗せて、俺の追撃に備えるべきだった。

 だから、こうして両足を刈られる事に成る。


 当然だが、両手両足が空中に投げ出された状態って事は、全くの『死に体』だ。これでまた戦闘の経験が豊富なら、引き戻しつつあった前足でバランスを取って、体勢を立て直そうとしたり、重心の移動で慣性のモーメントを動かし、次の攻撃を避けるために的を絞らせない様にするんだろうが、コイツはどうして良いのか分からなかったらしく、その状態で硬直しちまってる。


 はい、チェックメイト。


 俺は、地を蹴って前方に回転させると、ロボメイドの背に踏み乗った。

 腹ばいの状態で地面に叩き付けられたロボメイド。跳ね起きる事で俺を吹き飛ばす事もできなくはないが、動き出しに体重を掛ける事でロボメイドの行動は制限できる。

 さて、ここまでされれば俺との実力差は十分理解できたと思うが、まだやる気はあるかな?


 そう思って、様子を窺って見たんだが……


『【悲哀】ふえええええええええええん!!!!!!』

「は?」


 え? 泣くの? ロボなのに!?


「……トール、さま……」

「オヌシ様、それはちょっと、どうかと思うのじゃ」


 エリスに言われて気がついたが、ロボであることを抜かせば、少女メイドを背中から踏みつけにしてる俺の図。

 いや、本来武器だし、ロボだし、勝負だしっ!?


「いや待て、戦闘だろ? 攻撃されるのも、負ける事があるのも織り込み済みだろ? 普通。ねぇ!!!!」

『【悲哀】ふえええええええええええん!!!!!!』

「あおん?」

「く~ん」

「いや、お前らもそんな目で見るな!!」


 ******


 何でか、涙まで流して泣き叫ぶロボメイドを宥めすかして落ち着かせ、何とか泣き止まさせる。


『【弁解】衝撃によって冷却液が漏れただけです』


 ブスッとしたロボメイドは、開口一番そう言った。てか、ロボの割に感情豊か過ぎね?


 要は力量差を正確に把握したんで、自分では俺から逃げられないって事を理解し、邪竜の所に行けない=命令の達成ができない。つまりは、自分の存在意義が失われるって事で、感情が決壊したっぽい。

 感情か……確実にシンギュラリティは超えてるんだな。AIだったら。

 コイツが魔法的手段で人格を得てるとか、誰かの人格をコピーしたとか、あるいは誰かの魂が封印されてるとか、そんなんじゃ無ければだけどな。


 ……頭部開けたら生味噌入りとかじゃないよな? うん、これ以上考えてはダメだ。うん。


 で、俺からは逃げられないと思ったのか、ロボメイドは今の所大人しく座っている。めちゃくちゃ不満顔だけどな。


「……さて、話を聞いてもらいたいんだけどな」

『【拒否】貴方とは対話を行いたくありません』

「……なぁ」

『【拒否】貴方とは対話を行いたくありません』

「お」

『【拒否】貴方とは対話を行いたくありません』

「……」

『……』


 うんうん、任務を邪魔されて、その上ボコられて、それで大泣きして……腹立たしいのも、気に食わないのも、恥ずかしいのも分かる分かる。うん。


 でも、ちょっとOHANASHIが必要かな?


 大丈夫だエリス。今回はお前に対してじゃないから、そんな顔を青くしなくても大丈夫だぞ?

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