天空の覇者
空中からの攻撃での最大のメリットってのは、元来地上で生活している生物にとって死角と成る、頭上からの奇襲が容易な事と、障害物の無い空と言う地形の有利さと、位置エネルギーを使用しての高速での攻撃が可能だって事な訳だが、それは俺達の感知能力と、イブとジャンヌの魔法攻撃によって潰させて貰った訳だ。
そしてそのあと残るのは、全くの個人としての戦闘能力と格闘センス。その辺りは、理性によって考える人間なんかより、本能で対応できる野生生物の方が上に成るはずだが、それを覆せるのが知識と知恵なんよ。
加速と最高速度では勝るグリフォン達に対し、オファニムの各所に設置された噴出孔を使用しての小回りと、グリフォン達の軌道を予測しての先読みで、その攻撃に対応する俺。一撃での攻撃威力で言えば俺の方が上で、主に鋭い爪と嘴による攻撃が主なグリフォンではオファニムと魔力鎧の鉄壁と言える防御力を抜いてダメージを入れるのは困難であるらしい。
その事に気が付いたのか、その攻撃を体当たりと風塊によっての打撃ダメージと、その攻撃で、俺を落下させる事によるダメージへと変えて来たのは流石の本能によるセンスと言った所か。
ただね、高速で移動するモノに対応しての空中機動に関しては、俺も一家言はあるんだよ。
「アオーーーーーーーーン!!!!」
翼持つ者に対して、その速度で劣らず、むしろ小回りで言えば俺にすら勝り、こと、戦闘に関し天才と言って良い程に高いセンスとパフォーマンスを見せる犬がさぁ。
大空を自在に駆け回り、むしろ空の王者たるグリフォンを追い詰めるまでに至ってるウリと、日頃から模擬戦を繰り返しちゃ居ないってんのよ。
「【詠唱破棄】!! 【ファイアランス】!!」
『【支援】【詠唱破棄】!! 魔法名【ファイアランス】デスゥ!!!!』
ましてや、イブとジャンヌからの援護射撃付きなら尚更な!!
一撃でも食らえば致命傷になる【ファイアランス】を嫌って、その攻撃目標をイブ達に変えようとするグリフォンも居るが、この俺が、そんな事をさせると思うかよ!!
「ファティマアアアァァァァ!!!!」
『【了解】サー!! イエス!! サー!!』
プラーナを高速で循環させ、【エクステンド】を聖斧の表面にまで拡張する。オファニムの全身のスリットから明滅する赤光が、高速で駆け巡り、プラーナを増幅する。
ブゥオンッ!!!!
大気を切り裂く様な音を響かせた一撃は、その刃の延長線のグリフォン達を切り裂き、一撃で絶命させた。
ウリの方も、前足から赤色の光を伸ばし、まるでガントレットでも着けて居るかの様に巨大な爪を顕現させると、その威力を本能的に察知したグリフォンが逃げようとするのも許さず、その体を引き裂き、両断し、撃墜する。
って、魔力外装まで使いこなしてるだとぅ!! うをぉぉい、ウリさん。そんな域まで達したのかよ!!!!
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「まだ生きてるのな」
『【嘆息】生命力だけは高いようですね』
「ん!!」
いやいや、十分に強かったからな? あの高高度から落下したにも関わらず、グリフォンの何頭かは未だに息があった。
地上で見たグリフォンはその全高こそ4m近くの巨体ではあるが、思ったよりも前後に寸詰まりな印象があったわ。
ってか、これ下半身はただの風切羽だな。通常の猛禽類みたいに横に伸びるんじゃなく、下方に伸びている風切羽が、あたかも後ろ足の様に見えてるだけなんだわ。
それと、尻尾に用に見えるのも、孔雀何かの尾羽世同じ様な飾り羽なんね。いや、これも風切羽ってか、テールスタビライザー的な役目の羽根なんかね?
って、言うか、コイツグリフォンなんか? 第一印象でそう思っちまったが、ただの鳥じゃね?




