話をずらす
23/05/14
最後がごっそり抜け落ちていたので修正しました。
この事によってのお話の流にの影響は有りませんが、皇女側への印象は変わるかも知れません。
皇女さんから見た俺の屋敷は不思議なもので溢れてるってぇ印象らしい。その後も色々と聞かれたんで、答えられるモノは答えて行ったけんどもよ。土台に使ってるコンクリートの事とか。家の窓に使ってるガラスとか。
特にガラスの平らさに驚いてたけどもさ、ガラス作りとかだって、秘匿技術ちゃ、秘匿技術なんよな。
家はドワーフとコボルトとが居ついてくれたんで、ガラスの原料の珪砂や、セメントの材料である石灰石を集める事も、制作する事もできるが、普通は早々大量には出回らない製品でもある。だからこそ、結構な高級品扱い。
そもそも、ガラスを真っ平らにするのだってすごい技術なんだからな。その技術の情報自体は俺の前世の記憶から持って来たものだけど。
この世界、下手に魔法やら魔物の素材やら古代遺跡のオーパーツやらがあるせいで、全体的な科学レベルが低いんよね。ファンタジーなんだからしょうがないってぇレベルではなく。何と言うか、個々人での能力依存が激しいと言うか。
知識にしろ、技術にしろ、出来ない事を出来る様に解明するよりは、出来る奴を連れて来る方が早いって言うかね。それ位に個人個人でのばらつきも多ければ、出来る人材も多いし、世に出回るオーパーツも多い。
そのせいで、逆に“絶対的不便さ”って物がないからか、それ以上を求める事が少ないって言うか。何とかなっちまうって言うか。
もっとも、そもそも、“不満を持てる”ってぇ程の教育もされてないみたいだがね。
『本当の不幸は、自らが不幸だと知らないと言う事だ』とか『本当に不幸なのは、自分の境遇が不幸だと知ってしまう事だ』ってぇ言葉もあるくらいだしな。
まぁ、それは兎も角、皇女さん、結構屋敷探索を満喫してくれた様で良かったわ。それに伴う商品のお買い上げも有り難うございましただな。
けど、新たな馬車の提供は出来るけど、俺のキャンピングカーはやれんし、あれだけは再現が難しいんよ。下手なオーパーツよりオーパーツだし、俺のプラーナ使用で行うギミックも有るからなぁ。
まぁ、限りなくキャンピングカーには近い感じの仕上がりにはするし、馬車内で寝泊まり出来る様にはしとくからって事で妥協して貰ったわ。
後、ケルブも再現は出来んからな? そこは馬を4頭立てでやって貰うしかないんよ。
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「では、世話になったな」
「いえ、あまりお構いも出来ませんでしたが」
家で購入した製品や三冊の建国記を持っての、皇女さんの帰国を見送る。本人は様々な品を入手できた事と、『新約、皇国建国記』を無事に制作する事が出来たって事で、満足してた様だけども、まぁ、本命であったはずの“神器”探索の方はすっかり忘れて貰ってくれた様だわ。
それだけこっちが提供したモノが、興味深く満足して貰えるモノだったって事なんだろうけんどもさ。
はい、狙ってましたともさ。興味を逸らして、“神器”の事やら、俺の取り込み工作を忘れさせるって事をさ。
いや、どうせなら、楽しい思いをさせて忘れて貰うって遣り方のほうが良かろうと。そもそも、“神器”なんざない上に、『ない』ってぇ事を証明する事なんざ不可能なんだしさ。
まぁ、大人しく帰ってくれたってぇのは、こっちの『計画通り』ってぇ事な訳だ。
もっとも、皇女さんだってバカじゃぁないし、隠密さん等だって居た。
こっちのおもてなしに満足してくれたからだろうけどもさ。
とは言え、問題無く帰ってくれて、良かった良かった。
「うぬ、また来て欲しいものじや……」
「ノシ」
『またあそぼー!』
……随分仲良くなったな、おまいら。




