魔人族女王の評価
皇女さん、エリスの前だと、流石に相手が女王だって事で、多少の緊張があるようだわ。さっきから漫画二冊を興味深そうに読むエリスの事をチラチラと見ながらも、大人しくお茶を飲んでいる。
あ、キャルは解放してやったよ。真面目にメイドをやりんしゃい、と。
「のう、オヌシ様よ」
「分かった、じゃ、取り敢えず明文化してくれ」
「おおう、わしが何も言っておらぬと言うのになのじゃ。これが以心伝心なのじゃ?」
流れで分かるだろうよ。言い出しそうな事くらい。ってか、国王様から二人目だしな。
「てか、魔族から魔人族に至った逸話とかあるんだろ?」
「うむ、それこそが建国のキッカケであったのじゃからの」
てか、魔人から魔人族に成り、迫害されて寄り集まって出来たんじゃなかったか? 違ったか?
「まぁ、その辺のことも詳しく書くとするのじゃ。聖弓が」
『【吃驚】これ以上、わたくしの仕事を増やそうと言うのですか? 個体名【エリステラレイネ】』
「わしが書くより、ちゃんと文章の体を成しているのじゃ」
若干、視線を逸らしながら、エリスがそう言った。流石は元じゃじゃ馬王女。伊達に生肉鷲掴みで食べてなかったわ。
『【疑問】生肉を鷲掴みにする事と、文章を書けない事の因果関係が理解しかねるのですが?』
うん? いや、文化度と言うか文明度のね? “火”を扱う事で人類の文明が始まった的なね。
『【成程】生肉を鷲掴み=“火”を扱えない。つまり文明度が低いから文章が下手って言う事を婉曲に指摘したデスね!』
いや、ちょっとしたブラックユーモアを態々解説されて納得されると、ちょっと気恥しいんだけんども!?
第一、それ以前に詩作とかは乙女の嗜みじゃないんか? にも拘らずに文章苦手って時点でどうかと思うんじゃが?
『【嘆息】そういう事は、口に出して指摘した方が本人の為だと思いますよ? マスター』
『【苦笑】嗜める程、乙女があるか疑問デス! 詩作したって夕食の肉を炙るか生のまま行くか悩んでるって様な内容に成るデス!!』
『【含笑】ブフッ!!』
「え? 何なのじゃ? どうしたのじゃ、聖弓」
うん? あ、もしかして聖武器ネットワークのグループチャットは今、生きてる感じ?
『【肯定】イエス、マスター』
ああ、俺の【念話】自体はロボセイントに届いてなくても、おまいら同士の【念話】は分かるんな。
それで、察したんね。いや、ちゃんと乙女心くらいは残ってるだろう? 少なくとも俺と接してる時は、結構、乙女な感じだと思うんだが?
『【訂正】猫を被ってるだけですね』
『【追従】オーナーの前限定デス』
マジかぁ、あれ? そうなると、俺、騙されてる? いや、そもそも空飛んで国境破り繰り返すような奴だったわ。
乙女以前に、人としてそれはどうよって感じだった。うん。取り敢えず、文明人としてやり直させんとあかんかったわ。
「な、何なのじゃ? 何で皆して、わしを憐憫の目で見るのじゃ?」
「肉はね? 焼いた方がおいしいと思うぞ?」
『【含笑】ブフッ!!』
「は? 何でそうなるのじゃ? と言うか、何で聖弓は笑って居るのじゃ!?」




