どうしてかこうなった
「お茶、です」
「あぁ、有り難う、イブ」
部屋で作業している俺に、イブが甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
俺が何をしてるかって言えば、ネーム作業な訳だな。『何の』って聞かれれば、皇国の建国記の。
世話を焼いてくれているイブには申し訳ないが、こう言う作業してる時はコーヒーのが欲しくなるよな。
まぁ、コーヒーなんざ見つけちゃいないんだが。どっか落ちてないかね? コーヒー。
一応、ヴィヴィアンにも探して貰った事があるんだが、大森林付近には無いってことは分かった。植物薬効狂が無いって言ってるんだから、この付近には無いんだろう。もっと熱帯に近い気候じゃないと生えてないのかもしれんな。
それは兎も角、聞き取りして文章化して、ネーム切って添削してもらう。最近やってる事ってのはこんな感じ。
あれ? 俺、何時から漫画家に転職したんだっけ? 転職の神殿にも行ってないのに。
『【嘆息】皇国の建国記の漫画を皇子達に発見されたのが致命的でしたね』
こん畜生。あの脳筋第一王子め。何故片付けて於かなかったし!!
いや、あの漫画が見つかった経緯ってのが、第一王子の部屋に出しっぱに成ってた物を案内された皇子が目にしちまったってのが、事の発端なのよ。
本来ならさ、そう言った他国の情報を勝手に纏めた樣な書物を作ってるって、敵対行為と取られても可笑しかない訳じゃん?
例えば同盟国であったりすれば、それなりに情報を持ってても不自然じゃない訳だけどさ。それまで交流のなかった国で、しかも向こうの国から『仲良くしましょう』『そちらに表敬訪問させてください』って話をされて、それほど経って無いにも関わらず本なんざ作られてたら、その裏を疑りたく成るのもしょうがないと思うんよ。特に皇国側に疾しい所があればあるほど、な。
で、第一王子、目の前でそんな殺気を出されているにも関わらず、能天気に言い放ったのが、『おお! それか!! トール殿が作ったのだ!! 器用よなぁ!!』って、セリフだったらしい。
何と言うキラーパス!! 天然か? 天然だよな? 天然だったわ!!
そうなると、最早俺も『趣味で、色々な説話なんかを集めてマス』としか言い様が無かったわ!! それも、この本だけじゃないんですぅ、自国のも作ってるんですぅ。て言うようなアピールしながらなぁ。
てか、あの漫画を特に皇国の人間に見られたら不味いってぇ、考えには至らなかったんかね!? 第一王子様はよぉ。
そもそも、色々まだ問題が有るから、一部の人間にしか見せないってぇ話だったと思ったんじゃが!!
まぁ、そんなこんなで、正確な皇国建国記を書くべく、皇女さんから聞き取りして、それを文章化した上で、ネームを切って皇子さん所に見せに行くっていうね。
何してんだろ? っていう日々を送ってる訳なんですがね。
……ホント、王城で何やってるんだろね? 俺。




