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発見したった

「本当にありおったのじゃ」


 愕然と、そう言葉を発したのはエリス。それを見て更なるドヤ顔を披露するイブ。ドヤ顔、2段階目……だとっ……!?

 てか、エリス、お前はコレを探してたんだろうが。「ありおった」て。よっぽど悔しいのか『ぐぬぬ』って気持ちが表情から漏れ出ていやがる。


「ぐぬぬっ」

「ホントに言った!?」


 ******


 奈落と呼ばれる程の谷底は、日の光も殆ど届かず薄暗い。そんな中に小山とも言える大きさの朽ちた骸が横たわっている。


 それは、鯨並みの大きさのカブト虫……


「って、カブト虫!?」


 爬虫類ですら無いんか!!!!

 まぁ、その角は節が幾つもあって、そこだけ抜き出して見ればムカデの様にも見える。何と言うか昆虫のキメラみたいな感じか?


 全体で見ればカブト虫って感じなのだが、サソリの様な尾は生えてるし、頭部の角は節が幾つもついていて、どちらかと言えば触角と言った方が正しい感じがする。

 昆虫型ではあるが、蜘蛛何かと同じ様な古い蟲の類かも知れない。


 そんな“邪竜”の角の根元。昆虫で言えば神経が集中している場所に、柄の長い斧が突き刺さっていた。

 形状としてはハルバードに近いかもしれないが、アレが……


「聖斧か?」

「うむ」


 しっかし、イブはよくこんな所まで【探査】出来たな。ここ、俺とウリでも()()()()()()()2時間近くかかったぞ?

 ちなみにここに居るのは、空を飛べるエリスと、彼女に抱えられて降りて来たイブ。壁面を走って降りたウリと俺。そして、俺に圧し掛かって離れなかったんで、仕方なく背負って来たバラキの三人と二頭。

 ミカ達は崖の上でお留守番。きっとポニョっとした表情で待って居る事だろう。


 とにかく、アレを持って帰れば、とりあえずの対抗手段は出来る。本当は、俺が貰いたい位なんだがね。バフォメットに狙われてるし。

 と言っても、むしろ必要なのはエリスの方だからそう言う訳にも行かない。ひとまず魔人族の国に送る所までは使わせてもらって、国元に届けた後は向こうで活用してもらうって形になるか。惜しいけど。


 そうなると、やっぱ魔力装甲の方を鍛え上げるしかないな。そうすれば自力でも対抗できる様に成るし。

 う~ん。あと一歩、何かが足りないんだよな。それさえ分かれば、()()()の再現ができると思うんだが。


 そんな事を考えながら、邪竜の亡骸から聖斧を回収しようと歩みを進めた。


『【警告】それ以上進みますと、危険領域へと踏み込む事に成ります。速やかに歩みを止め、この場から退避する事をお勧めします』

「は?」

「?」

「何なのじゃ?」


 電子音声の様な感情の籠らない声に、思わず足を止める。

 俺の勘違いでなければ、その音声は“邪竜”の方から聞こえた気がしたからだ。

 魔人族の方では伝承として受け継がれていた話ではあろうが、しかし、何百年も前の話だ。下手すりゃ、何かの暗喩だったり、邪竜なんて物に見立てられた魔族や魔人族が居たと言う話かもしれないとも思っていた。

 なので実際、邪竜の実物がここに居る事にも驚いたが、そんな存在が言葉を掛けて来たのだ。

 俺は、身体能力向上を起動すると、邪竜に向かい構えをとった。

 いや、アレが生きていて、襲って来たとすればサイズ的には猫とノミ位の体格差がある。何をしても潰されて終わる未来しか見えないが、それでも守るべき(イブ)と守る事を約束した(エリス)が居るんだ。

 どんな手を使っても抗ってやる。


 そう思ってしばらく様子を見ていたが、邪竜の方に動きは見えなかった。


「……どう言う事だ?」

「の、のう、オヌシ様」


 エリスが不安そうに俺の服を引っ張る。どうしたら良いのか分からないんだろう。俺だってわからねぇけどさ。

 ただ、このままお見合いだけしてても埒が明かないのも確かだ。

 俺は意を決して一気に間合いを詰める。

 それについて来れたのはウリだけ。いや、バラキは俺の意を汲み取って、イブとエリスのガードに回ってくれた。不本意なのか尻尾が不機嫌に揺れてはいるが。


 本当に良い雌犬(おんな)だよ、お前は!!


 さっきの声が、文字通りの警告だったとするなら、あそこが境界線って事だ。なら、最低限の安全の保障は有るって事に成る。

 なら、なるべく早く危険地帯の奥に突っ込んで、あの場所から距離を稼ぐ方が、安全圏に居るイブとエリス(ふたり)の身の安全につながるって事だ。


 突っ込みながらアドアップまでを起動し、魔力外装を高速循環させる。いや、ここに来て一つ思い出した。確か俺は()()()体内も高速で循環させてなかったか? ガープの時はその前の魔力装甲のインパクトで、体内循環の方が頭から抜け落ちてた。

 すでに身体能力向上を使いこなしているらしい、赤い軌跡を引きながら疾走するウリを脇目に見ながら、俺は体の中と外、両方の魔力を高速で循環させ始めた。


『【警告】その場所は既に危険領域です。速やかに立ち去ってください。個体名【邪竜】が本能に従って行動を開始してしまいます』


 どう言う事だ? この声は邪竜の物じゃないって事か? なら、この声の主は誰だ?

 そう思いながらも、俺の頭の中では“もしや”と“まさか”と言う思いが行き来していた。


 チラリと邪竜の頭部にささる聖斧を見る。


 この声が邪竜の物じゃ無かったとしたら、その対象は一つしかない。

 つまり聖斧、いや、聖武器は意思を(インテリジェ)持つ武器(ンスウエポン)だったんだよ!!

 な、なんだってー!


『【警告】それ以上個体名【邪竜】に接近すると、私の持つ麻痺の能力より個体名【邪竜】の本能が勝ってしまいます。接近者はすみやかに退避してください』


 そして、このあからさまな電子ボイス。古代文明とか古代文明とか古代文明とかの香りがプンプンしやがる!!


 ファンタジーで古代文明!! 男の子心(ちゅうにびょうかいろ)がくすぐられますなぁ!!!!

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