被害者が訴えなければ犯罪じゃないって言ってる時点でどうだろう?
本当にこの娘さん皇女なんかね? そんな感想が出る程度には、隠密行動が様に成ってるのな。
件の和服然としてた格好から、忍然とした格好に……ってどっちも和装じゃねぇか!!
とは言え、着替え前も後もかなりパチモンっぽい、ジャパニメーション、ジャパニメーションしてるヤツだけんどもよ。
ミニ着物網タイツとか、本物の忍者を冒涜してると思うの。いや、ここ、前世の世界じゃないし、コッチじゃアレが正しいんかも知れんけんどもよ。鉢金も大切かもしれんが、他国で隠密行動してんのなら、せめて頭巾か何かで顔くらい隠せと言いたい。
いや、俺が言えるこっちゃねぇのかも知れんが。
まぁ兎も角、とっとと確保しちまいますか。
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はい、と言う訳で、こちらが確保した皇女さんなんだけんどもよ。アレな、時代劇とかで良く有る、振り向かせざまに腹パンからの担ぎ上げてって言う、拐かしコンボを自分が遣る事に成るとは思わなんだわ。
皇女さんの格好も相まって、時代劇感半端ねぇっす。
まぁ、何時までもウロウロしててもしょうがないんで、取り敢えず、確保した皇女さんと手近な空き部屋へ。
なんかもう、言い訳出来ない状況だよなぁ。本来なら未婚の貴族ってか、一人は皇族なんだけんども。そんな二人が密室へ、なんて言ったら、キズモノ扱いになっちまうからなぁ。何も無かったとしても。
そういう事態を避けたいなら、本来、俺達が宛がわれてる部屋に連れて行くのが良いんだろうけど、そんな事してる時間がねぇし、人担いで悠長にその辺歩き回ってる訳にもいかねぇだろう。
壁走って行けばワンチャンあるかもだけど、外なんて不特定多数に見られる可能性があるから、逆に危険かもしれんので却下なんだわ。
その代わりと言っちゃなんだが、部屋ではイブ達が頑張って俺の存在証明をしてくれているはずだしなぁ。
取り敢えず、暴れられても困るんで、手足を柔らかい布で縛っておく。変に跡が残ってもアレだし。
皇女さんの能力を鑑みれば、もしかすればこの程度の拘束くらい、解けっちまうかもしれんけど、そん時ゃ俺の擒拿術が火を噴く事に成ろうさ。
本当はファティマ辺りに立ち会って貰った方が安全なんだろうけど、流石に隠形術やってる俺には着いて来れんし、武器モードだったとしても、大きすぎて秘密裏に動くのにゃ向かんのよね。
そういう意味では短刀か短剣辺りをサブウエポンにしたい所なんだが、そうなると聖武器’Sがなぁ。浮気だと何だと……うん。やめておこう溜め息しか出ない。
まぁ、いざとなったら【エクステンド】もあるしな。プラーナバカ食いするけど。まぁ、昔は兎も角、最近はそんな使い方しても、プラーナ使い果たす事は殆ど無くなったけどさ。
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気を失ってる状態の皇女さんに、少しづつプラーナを注ぎ込む。生命力が活発に成って来ている所為か、次第に体温が上昇し、それに伴って頬が上気してきた。
……いかん。状況も状況だし、犯罪臭半端ない。実際やってる事は犯罪者と変わりないんだろうけんどもよ。
ただ、次第に酔っ払いの様な弛緩した表情にもなってきている。これなら、起こしても大丈夫か?
そう思い、軽く肩をゆする。
あんまり意識はハッキリとはしてなさそうだが、それでも皇女さん、薄っすらと目を開けた。
「おい、俺の言葉はわかるか?」
そう訊ねるも、何かボウっとした表情のままだな。まぁ泥酔と変わらん意識レベルだろうから、当たり前かもしれんが。
ただ、この状態で、ちゃんとこっちの質問に応えられるか?
と、皇女さんが、俺の事をじっと見ていることに気が付いた。うん? 思ったよりも意識がハッキリしてるのか? もしかして不味いか?
「……りゅう、王、さまぁ……」
「はい?」
何の事だ?




