ほうれんそうは大切だよ
「……あー、やっぱり俺を指名したのは皇国なんですね?」
「うむ。中々に気に入られて居る様ではないか。トールよ」
「本気で言ってます?」
俺の言葉に苦笑する国王様。確かに、今はなついているって様に見えるんだがよ、最初の敵愾心は今更無かったことには成んねぇんだよ。
多分そうだろうなぁとは思ってたけど、やっぱり、俺をエスコート役として指名してきたのは皇国の方で合ってたんだわ。
態々指名した上で敵愾心を見せて来るなんざ『何か裏があります』って、宣言してる様なもんじゃん? ただなぁ、相手の考えを読むって為にも情報が必要なんだけんどもよ。そもそも相手は戦争で大陸統一を果たした国な訳だ。そりゃ、諜報って事に関しての一日は向こうの方にある。それこそルーガルー翁の一族ですら容易に情報を持ち帰る事が出来ないくらいにな。
「せっかく内部に引き込んだのだしな、何がしかの“成果”を得たい所なのだが、如何せんガードが固くてな……」
それってつまり、王城の内部ででさえ情報を得る事が出来ないくらいに、向こうの諜報員の能力が高いって事やん。
「何かを企んでいるのは確かなのだがな、ソレの裏付けが出来んのだよ」
「そして狙われてるのは十中八九、“俺”と」
「うむ」
うわぁ、面倒臭い。
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四六時中一緒にいなけりゃならん訳じゃないとは言え、ホスト役はホスト役。何がしかの用事や予定を皇国の皇子達が言い出せば、それに付き添わなきゃならんって事もあって、今、俺達は、城の中の一室を宛がわれて居る訳だ。
「悪いな、退屈してないか?」
「ん-ん」
戻ってきて早々、飛びついてきたミカとバラキを受け止めると、二頭をわっしゃわしゃにしながら、部屋にいるメンバーを見る。
真っ先に、イブの返事の言葉にティネッツエちゃんが頷く。それとは逆に、俺の言葉には答えはしてないが、ラミアーとセフィは、ソファーに寝転びながら退屈そうにボケっとしている。もうその態度だけで、暇を持て余しているのはまる分りだわ。
『【説明】待機時間もメイドの職務の内ですので』
『【自慢】スリープモードになってれば、待機など何ぼのもんデス』
いや、それ居眠りしてるだけじゃ? まぁ、良いけど。
「どうも、皇国連中の動きがきな臭いんよ。なんで、お前らも気を付けててくれるとありがたいんだわ。具体的に言うと、一人で動くのはまず避けてくれ」
全員が頷いた事を見る。とは言え、ティネッツエちゃん以外のメンバーが、どうこうされるってイメージは湧かんのだがね。
それでも、相手は大国だ、その上、その建国以来、常に戦い続けてきたってぇ超戦闘国家でもある。そう言った輩が手段を選ばなかった場合、それこそ、どんな犠牲も払うであろう事は想像に難くない。
だからこそ、気を抜いちゃならんのだがね。
しっかし、情報が入手できないってのは、色々、辛い所やね。こっちも作戦を立てられん。
ただ、俺を狙ってるってのなら、下手な小細工とか良いから、とっとと来て貰いたい所なんだわ。
キッチリ返り討ちにはするけんどもよ。




