広めるにも大前提が要るって事で
まぁ、為政者としてこう言った物を活用したいと言うのは分からんでもないが、一般的に普及させる為には識字率の問題って物があるからなぁ。
当然だが、マンガって物を独りで読む為には、文字が読めなきゃいけない。まぁ、今回みたいに読み聞かせをするってのも手の一つではあるんだが、それにしたって、そもそも聞かせる為には読めなくちゃいけん訳だ。
自慢にはなるが、俺の領だと、基本的に学校の様なものを作って最低限の勉強、読み書き計算程度は教えている。
って言っても計算なんて足し算引き算程度のものだけど。家の館に居る奴等にはもうちょっと高等な物も教えてるけどなぁ。
だが、家の領以外の所だと、そこまで教育って物に力を入れてる訳じゃない。貴族連中は最低限の教養としてやっちゃいるが、市井を見れば、商人がその子弟に簡単な読み書きと計算を教えてる位か? 農村に至っては『読み書き? 何それ』な状態だからな。
そう言った所は村長なんかの血筋か、教会関係者ぐらいじゃねぇかな? 読み書きができるの。いや、もっと酷い所は、その辺治めてる領主と、そこから派遣されてる代官が出来るって程度で、村長すら、村のまとめ役ってだけの立場だったりするからな。
まぁ、実情、それで困らないって事でもあるんだが。前世での農家みたいに土の量に対してこの肥料をこの割合で混ぜて、この土地の量に対して、防虫剤をこの割合で撒いてとかってやらんだろうしな。基本、耕して種蒔いて水撒いてってだけの簡単なお仕事。もっとも、小麦の生産量は蒔いた種の五倍程度。それもすべてがきちんと育ったらって割合で、だ。
確か一人が満足に食べたとしての一年当たりの消費量は30kgぐらいだったか? いや、前世の話だけど。そう考えると、税で持ってかれる分も入れて60kgは確実に必要で、その種が12kgは必要って事に成る。
ただしさっきも言ったが、これ、最低限でって話。全てがちゃんと育ってすべて収穫出来てって上での計算。基本バラ蒔き、水撒きも天候任せって考えると、その予備的な物も考えての耕地面積がアホ程広いから、重労働ではあるんだけんどもよ。
最低一人で二人が一年食べる分を作れなきゃ成立せんのだし。諸々の税として5割は持っていかれるって事を考えればなぁ。
ただ、これ安く見積もっての話だかんな? 人頭税、借地税 粉引き税 パン窯税 教会税etc.etc.……
生きてくだけで、これだけかかるから、それ以外に使う時間がもったいないって事に成る。そうなれば子供を他に使おうなんて考えん訳だ。
ただし、それも農民はって話でしかない。農民以外だって食べにゃならんし、その分も作ってもらわにゃならんから、その為に必要な農地も労働力もその分跳ね上がる。結果、増々使える時間は無くなる訳だ。
そうなれば、それが出来るのは、よっぽど家に余裕のある階級か、それ以外の事が必要不可欠な職業か。
何にせよ、識字率を上げたいならその辺も考えんといけんけど、早々簡単にはいかん訳だ。
まぁ、話がループするが、家の領は、その辺の民衆の生活の余裕は上げてるし、そこかしこで、簡単な教育は出来る様になってるから、結構、識字率は高かったりするんよ。




