マンガで読む皇国の歴史
「ふぉぉぉぉ……」
出来上がった本をキラキラとした目で見ていたイブがこちらを振り返る。まぁ、自分の為に作られた本って事で、特別感があるだろう。
出来るとは思ってたが、できたよマンガ。TCGとか作ってる時点で分かってたけど。もっと、版画ってか、浮世絵みたいな方法で作るのを想像してたけど、エッチングって言ったか? 想像以上に普通に“描く”って感じに描けたやね。まぁ、トーンとかの表現はファティマ頼みに成っちまったが。スクリーントーンが欲しいスクリーントーンが。あ、スクリーントーンじゃ、印刷に使えんじゃん。結局ファティマ頼みじゃんかね。
『【奮起】望む所です』
うん、その心意気は買うわ。
製本までは行ってるけど、本綴じの方法は和本形式。昔コピーの小冊子作った時はステープラーで中綴じだったけどなぁ。そもそもステープラー無いけど。
てか、前世の本は樹脂接着剤で背とくっつけてたんだったか。
ヴィヴィアンに頼めば探してくれるかね? 都合の良さそうな植物。
現物あれば、セフィが量産できるし。
「トール、様、読んで!」
「あん?」
イブさん、文字読めるよね? 何で俺に頼むのかな?
『【推測】恐らく、マンガを読む作法が分からないのではないかと』
「はい?」
いや、普通に読めば……そもそも“作法”とかって改まる様な代物じゃないじゃんマンガって。
『【説明】この世界では初めての代物です。どう読み進めれば良いのかは、マスター以外は分かってないでしょう……私は別ですが』
『【訂正】ボクも分かるデス!』
……そうか、そう言うものか。うっかりだったな。俺にとっては、あまりに当たり前の物だったから、失念してたわ。
そう言えば、マンガの黎明期だと、吹き出しやら移動してる線なんかも特殊な表現方法だったらしいしな。
それと分かってる人間には理解出来るだろうけど、知らん人間にとっては『なんじゃこりゃ!?』って代物になるのか。
「そうか、じゃ、どう読むか説明するためにも読み聞かせをやるか……ほら、本持って隣に来い、イブ」
「ん!」
いそいそと、俺の隣に腰を下ろすイブ。……いやちょっと、おまいら……イブは良いんだが、ラミアーにセフィにティネッツエちゃんまで、集まって来たんじゃが!?
「むー!!」
「あたしにも見せてぇ~」
『なにしてるのさぁ』
「済みません、いぶねーさま。わたしもちょっと見たいです……」
興味津々やねぇ君ら。イブがちょっとおかんむりだわ。当たり前だけど。
「わん!」
「アオン?」
ミカとバラキ! おまいらもか!! ってか二人は理解出来んと思うんじゃが!! いや、みんな集まってるから加わりたくなったんだろうけど、大人しくしててくれよ?
******
「『分かってるのか? ここからは既に死出への道行きなのだぞ!!』『はっ! 地獄への旅程、丁度、旅の仲間を探してたところさ。お前となら、退屈だけはせんだろう?』『ふっ、不器用だな、貴様も……』『ほざけ』」
「おお~!」
「エモい」
「ソー様! リュー様!! あ、あ、トール様!! これからどうなるんですかっ?」
『あじわいぶかい』
ふふっ、親戚の子供達から『七色の声』と恐れられた(?)この俺のキャラ別に声色を変えるテクニックに、皆すっかり虜のようだな!
……うん。あれだな、前世でも親戚の子供とかに読み聞かせは良くやってたが、自分で描いた物の読み聞かせって、ちょっとした羞恥プレイだぁね。
てか、ティネッツエちゃん、この件、勉強でやった所だからね? いや、確認のテストで8割方正解してるし、ちゃんと覚えてるだろう事は分かってるんよ? まぁ、それくらい話にのめり込んでるんだって事も分かってるんだが。何だろう、おじさん、その純粋さがちょっと心配になるんだわ。
しっかし、流石は子供。頭が柔らかい。そう長い間読み聞かせてた訳じゃないのに、もうすっかりマンガの読み方をマスターしたらしいやね。
「これなら、後は自分で読めるよな?」
「むぅっ」
「やっ!」
「え? あのっできれば、このままで……」
『いや、よんで』
「わんわん!!」
「ワオン? ワンッ!!」
即座に全員から否定が入ったんじゃが? いや、別に俺が読むんじゃなくても……
あ、はい。なんか全員から圧が。
いや、まぁ、良いけんどもさ。




