折った後には再構築するまででワンセット
できる事すらやらせて貰えないってのは、人間の尊厳とやらを著しく侵害するらしい。それも自身の身体に関わる事ならなおさら。
実際の介護でされるのともまた違うんだろうが、一切の行動についての自由を阻害されるだけってのともまた違って、その上で強制的に世話をされるってのは、されてる方にしてみれば『まるで荷物に成った様だ』って思うらしく、何かをしようとか何かをしたいってぇ気力を根こそぎ奪われっちまうんだそうだ。
これで、逐一声を掛けて貰えるなら、また違うんだろうけど、それすら無しに、ただ淡々と世話され続けるってのは、ある意味、人格無視な訳だからなぁ。
と、言う訳で、抜け殻状態に成っちまったセネスさんがこちらです。
年嵩のオバちゃん強引に運動させても、駄々こねて動かなくなるのなんか目に見えてるんで、別の意味で心だけ折ってみた。
そういう意味では、体力に自信のある野郎の方が素直に動いてくれるんで楽っちゃぁ楽だよね。『動ける』=『やれる』って、無意識にでも思ってくれるから。『いやだと思った』=『もうできない』になるオバちゃんだと、そうはいかないから。まぁ、オバちゃんが全員そうだって訳でもなけりゃ、野郎が全員そこまで単純って訳でもねぇけど、この侍女さんはそういうタイプだったって話。
心を折るって事一つ取っても、相手に合わせて適した方法を取らねばならんと言う事だな。
『【嘆息】あまり、尊敬を集められる様な特技ではないと愚考します』
『【尊重】でもボクは、そこに痺れるデス! 憧れるぅ~デス!!』
うん。こんなときどんな顔をしたら良いのか分からないや。
「笑えばよいと思うよぉ~」
……これも俺が言ってたか? ラミアーの前で、こんだけ口滑らせてたんか? 俺。いや、別に秘密にしてるって訳じゃないからポロっと口にしてんのかも知れんが。
「うん、頭の中で」
「って、俺の思考読んでただけかよ!!」
いや、それ以前に、この辺り前世の知識なんじゃが!? え? 前世の記憶、この体の脳とかに残ってるの!?
「魂で繋がった相棒故に!!」
「って、魂から直接情報読んでるの!?」
ラミアー、恐ろしい娘!
『【憤慨】その程度、私にだって出来ますが?』
『【追従】ボクもできるデェス!!』
何の対抗意識だよ。
『あたしもできるよぉ』
お前もか、セフィ。
収集つかなくなるわ。取り敢えず置いとくぞ、と。
心折っただけだと、ただの無気力なオバちゃんが出来上がるだけなんで、まともに思考できるように刺激を与えんとな。
「じゃぁ、連れて行くんで、ちゃんと後で送るから、先、進んでて良いよ」
「分かりました」
護衛騎士の人にそう言うと、彼は素直に頷いてくれた。確かに助けはしたんだが、基本、得体の知れない俺に、こんなに簡単に、侍女さん託しちゃって良いのかと、少し悩む。
いや、、彼らにとって大切なのは聖女様であって、彼女を批判しまくるこの侍女さんは煙たがられてたのかも知れんが。まぁ、良いか。連れて行こう。
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「あはーははは!! あはーははは!! まるでゴミのようじゃぁないか!!」
「ひいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「わん!!」
「アオン!!」
「ワンワン!!」
「グルルル、ワオン!!」
逃げ惑うホブゴブリンを追い、回り込み、打ち倒す。今日はファティマとジャンヌでの二刀流。刀は一本も持っちゃいないが。
ミカ、バラキ、ウリ、ラファの四頭も、それぞれがホブゴブリンを蹂躙して行く。
こうして、害獣を狩りまくってると、自分が随分とストレスを溜め込んでいたんだと気付かされる。
やっぱ、人間、ストレス溜め込んじゃだねだよね。
「ひいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
ジャンヌで突き、ファティマで薙ぎ、蹴りを入れ、返す刀で袈裟に斬る。このホブゴブリンの集落は幾つかの集団が合流していたらしく、100匹を超えるホブ共が群れを作り、それを指導できる個体すら出現していた。
これ、放っておいたらスタンピートが起こってたんじゃねぇの? 獣人の王国の冒険者ギルド、何やってたのよ!
あー、そういえば、ヴォルフガングとかってイキリ冒険者が牛耳ってたんだっけか。そうだったそうだった。
いや、アイツも、ちゃんと冒険者活動すれば良いのに、何やってんだろうね?
「ひいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
そんな事を考えながらも、俺は次々にホブゴブリンを屠って行く。
「ひいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
さっきから侍女さんが悲鳴しか上げてないんじゃが……
はい、侍女さん連れて来てますよ? ホブゴブリン狩りに。ケルブに縛り付けて。
生きる気力を無くしたなら、“生”に近しい場所で、刺激を与えてやれば良いって事で。まぁ、ここは“死”も近しい場所ですけど。
まぁ、精々侍女さんには、“生と死”の刺激を受けて貰いましょう。俺達のストレス発散にもなるし。




