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反骨精神があるのと話が通じないのはイコールではない

 獣人の聖女様、お礼を言う、言わせないという侍女さんとの謎の言い合いでちっとも話が進まん。漏れ聞こえる言葉から、聖女様、教会内での権力闘争で命を狙われてるから、怪しい人間に近付いては駄目だとか、直接、不浄な俗世の者にお声がけするのはNGだとか、命の恩人なのだから直接礼を言わなければとか何とか。


 このくだり続けるなら、礼とか要らんから帰って良いかな?


 そんな言い合いに辟易しながら、それでも黙ってると、護衛の騎士の1人が戻ってきて、年嵩の侍女さんにごにょごにょ。

 したら今度は、その侍女さん、俺達の方を向いて口を開いた。


「あなた方のその馬車、接収して差し上げます」

「え、嫌だけど?」


 まぁ、豪快に横転してたからね。多分車軸とか逝ってたんじゃろね。てか、人の馬車欲しがる輩が多いやね。馬車ブームなんじゃろか?


「な、な!!」


 俺が断るとか思ってなかったのか、侍女さんが顔を真っ赤に染めて口をパクパクさせてる。金魚の物真似かな?

 ヨークシャーテリア似だとは思ってたんだが、前世はランチュウかもしれんな、この侍女さん。


「せ、聖女様の思し召しなのですよ!! 国の民として、奉仕する義務があるのです!!」

「セネスさん!! さすがにそれは失礼です!!」


 侍女さん、セネスって言う名前なんか。一方的な物言いに、流石に聖女様が声を上げる。そもそも聖女様は馬車寄こせとか言ってねぇじゃん。

 まぁ、足が欲しいのは確かなんだろうけど、それで即『寄こせ』とか言い始めるところを見ると、この侍女さんも良い所の出身なんだろうな。その上で、聖女様(けんりょくしゃ)の側付とかを長年やってたんじゃねぇかね。()()()()()()()に慣れ過ぎて、当然とか思ってるんだろう。


「あのさ、俺はこの国の住人じゃねぇし、アンタん所の信者でもない。見た所、馬車が全部お釈迦になって、馬もみんな逃げて足が無くなったんだろうけど、アンタが先ず言わなきゃいけねぇのは命令じゃなくお願いだ」

「んまっ!!」


 まるで俺が暴言吐いたかの様な態度だが、そもそも俺達は助けたことに対する礼すら言われてないんじゃが?

 礼節を守るヤツ相手なら、こっちも礼節を守って対応するけど、のっけから人を見下した様な態度をとるなら、こっちだって相応の対応をするさね。


 聖女様はそれなりに礼節をもって対応してくれようとはしてるが、侍女を御しきれてない時点で上司としてどうなんだ?

 もしかして侍女じゃなく、聖女様の教育係かもしれんけど、だとしても、この態度はどうだろう。


 侍女さんの中に『こうあるべき』って理想があるのかもしれんが、相手に成ってるのは感情持った人間なんだからさ。


 さっきからちょろちょろ聖女様だってのが漏れてるから、俺達は『ああ、聖女なんだ』とか思ってるけど、実はこっちに対して名乗りすらしてないからな? こっちも名乗らせて貰えてないが。つまりは貴族的な言い分だったとしても顔見知り以前の見知らぬ他人同士なんよ、今の状態。


 例えは『私達は実は聖女の一行で、足をなくしてしまったので、その馬車を頂けないでしょうか?』とか言われれば、相応の態度で接するけどさ。

 もっとも、馬車ってかキャンピングカーはやれないんだが。

 そもそも引いてるのケルブだし、普通の馬じゃ、多分引けないし。

 もし、ケルブごと召し上げるとか言う話だったら、面の皮が厚いなんてもんじゃねぇんだが?


 獣人全体が悪いって訳じゃないんだろうが、強烈に印象の悪い相手に立て続けに当たった所為で、俺の中の獣人の印象がすこぶる悪いんだが?


「取り敢えず、話を聞いてもらいたいってんなら、それなりの態度を取れ、まずはそこからだ」


 何か侍女さんがギャーギャー言ってるが、話をしたかったら、相手を尊重する姿勢を見せろや。

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