知り合いにもいるんよ、セイントさん
何も言う事は無い、って言うか……
「魔法一撃で終わるとかねぇわ」
「うう~……」
『【謝罪】ごめん、デス』
「いや、二人がどうこうってか、“ホブ”とか付けておきながら、不甲斐がなさ過ぎだって話な。むしろ二人はよくやった」
ホント、それな。ストレス発散しようとしたのに、発散する隙すら与えて貰えんかった。初遭遇だったからどれ程の強さか分らんかったけど、まさかの【ファイアボール】で全滅とか。護衛騎士巻き込まん為に威力も抑えてる筈……筈だよな?
『【当然】あったり前田のクラッカーデス!!』
どこで覚えた、そんな言い回し。
『【説明】前にオーナーが言ってたデス』
マジか。てか、意味通じとるんじゃが? 言語違うのになんでや!? まぁ、悩んだ所で事実が覆るわけでもなし、流しとくか。
ほら、助けた騎士さん達もあまりの呆気なさに呆然としてるじゃないか。全く不甲斐ないホブ達だよ!!
『【嘆息】多分騎士たちが呆然としてるのは、別の意味でだと思われます』
うん、そうだろうね。自分達が多大な犠牲を出しながらも応戦し、その上で劣勢に立たされてた相手が、ここまであっさりと倒されれば、呆けたくもなるさね。
ただ、言わせてもらえば、家のイブとジャンヌ、二人だけでワイバーンの巣を壊滅できる猛者だからね。その上可愛い。うん可愛い。
年ごろの娘さんに“可愛い”はそろそろ禁句かもしれんけど。
『【進言】個体名【イブ】なら、マスターに“可愛い”と言われれば、喜ぶと思います。ついでに私も』
マジで?
「イブ、可愛いよ」
「!!」
俺の言葉に、イブが頬を押さえて口をもごもごさせる。……これ、照れてるのか? 照れてるのか。
あれ、他の娘さん達からの視線が痛い。
「いや、ティネッツエちゃんもセフィも可愛いよ?」
「あたしはぁ~?」
ラミアーは美人枠だから。美少女だから。ティネッツエちゃん達への言葉で、ティネッツエちゃんの方は顔を真っ赤にしてうつむき、セフィがドヤ顔をさらす。
俺の思考を読んだのか、ラミアーもフフンと鼻を鳴らした。
ハイハイ、そんなに俺の方を見なくてもファティマとジャンヌも美人系だと思ってるから。
いきなり俺がメンバーを褒め始めたんで、騎士さん達の呆け顔が、別の意味でのソレに変わってきたから、この話はここでやめようよ、な?
一応、二人が魔法を放つ前に『手助けします』って声を掛けたけど、その言葉を覚えてるかどうかすら分からんわ。
その後の衝撃が強すぎるだろうから。
それでも『敵意はありませんよぉ』って感じで、両手を挙げながら近づいて行く。結構な犠牲も出してる様だし、ここで何も言わずに立ち去る方が不自然な上、怪しいだろうし。
騎士達がどうしようかとお互いの顔を見合わせる。もしかしたら、隊長格の人間は、早々に倒れちまったって所か? だとすると、明確な命令系統を失ったってのに、良く持ちこたえられたもんだわ。
相当、練度の高い集団だったって事だな。
うわぁ、そうなると、そんな集団に守られてる人って、相当な貴人って事じゃねぇか。
俺が内心、溜め息をついてると、侍女らしき人達に守られていた女性が立ち上がる。白いローブに高価そうな金の装飾のアンクっぽいシンボルの付いたネックレスを着けた、その女性が口を開いた。
「あ、あの……」
「い、いけません! 聖女様!!」
意を決したらしきその一声は、しかし、年嵩っぽい侍女さんの声に遮られた訳だけど……えー、聖女ぉ?
俺に声を掛けてきた聖女様と呼ばれた獣人の女性……うん、鼻筋の通った美人さんだね。ちょ、ミカ? バラキ? 何で俺の脚を頭で小突くの? ちょ、止めてマジで。




