帰路
「一方的な個人の感想~」
『しりめつれつだったよ~』
『【自慢】論破してきたデス』
あ、そっちにも行ったんだ。って、論破って、いったい何があったおまいら。買い出しの品は多少足りてないんだが、また巻き込まれても嫌なんで、早々に出国。
やっぱりと言うか何と言うか、ラミアー達の方にも獣人冒険者、出没してたらしい。何でも俺が大怪我してラミアー達の事呼んでるとかなんとか。
オレオレ詐欺かな?
もしそれが本当でも、伝言に獣人冒険者は使わないと思うの。多分、幼女集団だったから、それで行けると思ったんかね? ジャンヌとラファは幼女じゃないけど、美術品ゴーレムと犬ですしおすし。
色々と引っかかる感じだけど、まぁ、獣人王国出ちまえば関りは……なくなるよな? 何かモヤるなぁ。後でルーガルーの爺にでも詳細を調べてもらうか。
隣の大陸だし、情報が集まらないって事もねぇだろう。もしなんだったら、この“扉”を使うことも許可するって事で。
碌に市場調査は出来なかったけど、取り敢えずあまりお近づきには成りたくない国って事で。いや、国自体の雰囲気が悪いって訳じゃないんだが、厄介事の種があるって時点でなぁ。今回はあまり日数が掛けられないってのに、しょっぱなからケチが付いちまったんで、他の国を回るって気も失せた。
「って、事で、今回はこのまま帰るって事で良い?」
「んっ」
「ワン!!」
「アオン」
「ワオン?」
「ワンワン!」
「いーよー」
「ふぁいぃ……」
『かまわないよぉ』
『【了解】マスターの御心のままに』
『【了承】オッケーデス』
反対意見は無い様だな。まぁ、一旦戻って仕切り直しって所か。まぁ隣の大陸に繋がる“扉”だって分かったって事だけでも充分な成果ではあるんだけどもね。
獣人冒険者の事も含めて、すこぉしばっかし、情報を収集してからまたって所か。いや、俺達が直接来る必要もないんだが、冒険者活動の方は、俺の趣味的な意味もあるんでな。まぁ、息抜きがてらって所はある。
そんな感じで、一路“扉”のある平原へって針路を取ってたんだがね。
「厄介事の臭いしかしねぇ」
「トール、様?」
「んー……」
『【嘆息】どうしますか? マスター』
俺達の向かう先には横転した馬車がいくつも転がり、こと切れた護衛と思しき騎士たちの姿。
いや、もう護衛騎士が居る時点で貴族決定じゃん? その上その騎士、獣人なんよね。獣人の国から退避してきたってのに、ここに来て獣人に出くわすか。
まぁ、獣人王国が近いって事を考えれば、獣人に出くわす可能性の方が高いのかもしれんけど。
「まぁ、助けるけどさ」
生きてたら。
まだ騒ぎが起こってる場所に視線を移すと、明らかに護衛騎士から奪ったであろう剣を振り回す毛むくじゃら達と、生き残りらしい騎士たちの姿。
毛むくじゃらの方はご丁寧に、恐らく襲った相手から入手したのであろう鎧を身に着けてやがる。
「ゴブリン……じゃねぇな。ホブゴブリンってヤツか?」
『【正解】当たりです。マスター』
『【困惑】乱戦に成ってるデス。広域魔法で一気に殲滅するのは難しいのデス』
だな。騎士達の後ろには恐らく侍女らしき女性たちの姿も見えるな。そしてその女性達も、誰かを守ってる様に見える。
「広域魔法は無しで、個別撃破、いけるか? イブ、ジャンヌ」
「ん!!」
『【嘆息】一気に行ければ良かったのデス。面倒だけど、それしかないデス』
できないとは言わない辺り、流石だわな。
「んじゃまぁ、ストレス発散がてら、ホブゴブリン狩りと行きますか」




