町を練り歩くさね
「「ふぉぉ」」
獣人初見であろうイブとティネッツエちゃんが感嘆の声を漏らす。ミカとバラキも尻尾をぶんぶんと振っているな。ウリは通常営業だけど、ラファはちょっと緊張してるのか尻尾がピンっと立ってる……獲物狙ってるって訳じゃねぇよな?
色々と獣人に対して反応を見せてる彼女達とは反対にラミアー、セフィは町中の屋台の方に見入ってるわ。こっちは獣人ってものを見た事があるってことかね?
俺? 俺はなんかホ〇ムズとかサ〇タリウスとか思い出してちょっと懐かしくなった。いや、これ今の俺のじゃなく前世の方の記憶なんだけんどもよ。懐かしいって思うのはちょっと変だろか?
獣人の国だからと言って住んでる人間が獣人だけって事はない様だわ。当たり前だけど。なる程。基本ネコ科動物系の顔立ちと、手は五指をもってるって感じか。ぱっと見は尻尾の方がバラエティーに富んでる様に見えるけど、よくよく見れば耳や顔立ちも結構違う感じ。
ただ、角やら蹄やら鱗やらってのは見当たらないから、偶蹄目とか爬虫類系は居ないって事かね? まぁ、今見えてる人達が獣人の全てって訳じゃないんだろうけど。
それでもやはり他の国に比べりゃ獣人が多い。まぁ、この国の王様も獣人なんだから当たり前っちゃぁ当たり前なんだろうけんどもよ。あーそうなると、貴族連中ってやつも獣人なんかね?
『【肯定】この国の貴族の80%は獣人が占めています』
ああ、やっぱりそうなんね。
「あつい……」
そう言ってラミアーが俺にもたれかかってってか、後ろから抱き着いて頭に顎を乗せてくる。暑いんなら引っ付くなや。
それを見たイブが右腕にしがみつき、ティネッツエちゃんが左手を握ると、セフィが正面から俺の胴にしがみついて来た。蝉かよ。
一瞬だけミカがこっちを振り向いたが、『しょうがない子達ね』みたいな表情をした後、再び前を向く。俺としちゃ、何とかして貰いたいところなんだがね。いや、ミカがどうにか出来るかって言われれば、できないだろうけど。
「アオン?」
バラキが対抗心なのか何なのか俺の足元へ。バラキ、対抗して足に纏わり着かなくて良いからな? 上目遣いで見てくるの可愛いけど。
向こうの大陸では、すでに涼しい季節なんだが、こっちは若干汗ばむ位の気温やね。赤道に近いんじゃろか? 本当は宿にチェックインした方が良いんだろうが、最悪、野宿でも構わんのよね。キャンピングカーでの寝泊まりを野宿と言うのかどうかは知らんが。
キャンピングカーを引いたケルブも一緒に、全員でお上りさん状態で町中を練り歩く。食べ物やら雑貨やらを冷やかしつつ、お土産も探しながらの市場調査と言う名の物見遊山。
いや、価格とかはちゃんと確かめてるんねんで? 主にファティマが。って言っても値段聞いたりしてるだけだけど。
流石に情報も入らないほど遠い大陸って訳じゃないんで、価値観とかはそれほど違わないらしい。高級美術品でもある発掘ゴーレム二体も連れてる、小ざっぱりした格好の子供は、裕福な家の子と思われるらしく、立ち寄った屋台やら店屋らの店主は、愛想よく対応してくれる。
いやまぁ、俺一応貴族なんで、間違っちゃいないっちゃ間違っちゃいないんだが。
「トール、様、アレ、何」
「ん? おお!!」
イブが指さした方向を見れば、そこには黄色くて細長い、湾曲した果物が。
「バナナだ!!」
「ばなーな」
って、知っているのか! ラミアー。




