確認するのも領主の仕事
獣人の国があるって話を聞いた時は『ああ、そう言うのもあるんだな』程度にしか思ってなかったんだわ。
何せ、獣耳付けて、尻尾を生やした人達なら公都でも随分と見かけたし、何なら家の孤児院にも何人かいるしな。
『【解説】それらの者達は、いわゆる【半獣人】であって獣人ではありません。マスター』
マジか。ちょっと話を聞いた所、所謂獣人って輩は、直立した獣って感じの人達で、よく見かけるケモミミ&尻尾の人達とはちょっと違うらしい。
どっちかって言うと、ライオンヘッドなゴドウィン侯の方が見た目的には近いんだとかなんだとか。もっとも、獣人の人達は全身もっふもふらしいんだが。そう言や、ゴドウィン侯、手は別にもっふもふじゃなかったもんな。
それに、獣人達は、前世の物語で良くあるみたいに、猫の獣人とか犬の獣人とかって区別はなく、ただ、獣人という種族であり、耳が垂れてたり、他より大きかったり長かったりって“個性”はあっても、全くの単一の種族なんだそうだ。
因みに、半獣人は、“半”とは付いていても、別に獣人と人間の直接的なあいの子って訳じゃなく、何世代もの前にこの国に渡ってきた獣人との間の子の子孫で、かなり血が薄まった上での結果らしい。
……ケモミミと尻尾、優性遺伝なのか? 人間、とっくに失ってるんだが。まぁ、前世ですら痕跡は残ってる上に、人間自体が猿人の幼形成熟だって説もあるから、残ってっても可笑しかない……のか?
さてさて、何で、俺がそんなことを確認したのかと言えば、やってきました獣人の王国。うちの古代遺跡の“扉”で。
諸所諸々の仕事を片付けて、ちょっとばっかし、俺が居なくても何とかなるってぇ算段が付いたんで、また“扉”の調査を再開することにしたんよ。
今回の予定は1~2ヶ月程度。年末はまた登城せんとあかんしね。そんなんなんで、今回は地形計測とか後回しにして、イブに【探査】してもらって、サクッと市場と文化風俗の調査だけしてッて感じで。って思ってたんだけど、どうやら選んだ“扉”の出口、すぐ隣の大陸だったらしく、それなりに情報があったんよね。
そんな理由から“扉”から一番近い国に行っとくかって事で、その国が獣人の王国だった訳だ。
“扉”のあった古代遺跡は、今回は平原にある巨大な岩山で、やはり一見すると遺跡には見えない仕様になっていた。
やっぱり、珍しい生き物を飼育する環境を整えるってぇ観点から、遺跡は外部からは見つかり辛くしてるっぽいな。
そんな感じで、また外に出たとたんに囲まれるかとも思ったんだが、どうやら、この遺跡の周囲には、魔物の領域は無かったっぽい。
ここにいた魔物が絶滅したか、数百年の間に環境が変わって、テリトリーを移動したのか。まぁ、それは分からんがね。
因みに、ここのガーディアンは水着姿の女性像だった。ジャンヌ曰く『【嘆息】幸運の男神像と同一系統デス。ただこれ、ノーマルリーチなんで期待度はそれほどでもないデス』って事なんだが……
いや、どういう意味よ。




