人の強みは連携にある
ウリとラファが、プラーナをまとって幾度もアタックを繰り返すが、電磁場、いや、これはもはや電磁バリアとでも言って良いだろうな。
ムシュフシュの電磁バリアに威力を減衰され、致命傷には届かない。それは、俺の攻撃も同様で、ノックバックが大きいだけで、決定的に成る様な一撃は入れられていない。イブとジャンヌの魔法も同様だ。
「む~!! いっちゃえ!!」
唯一まともにダメージが入っているのがラミアーの【念動力】での直接本体に与えているダメージなんだが、それにしたって向こうの耐久値を考えれば雀の涙といった所か。
『う~! き~つ~いぃ~!!』
セフィは、地面からあらゆる植物を生やし、ムシュフシュを絡め捕る事で、捕縛し続けてくれている。あの巨大を拘束し続けられるってのは、流石は竜種って所だな。そのおかげで、向こうからの攻撃が、基本、尻尾か頭でのダイレクトアタックだけになっているのはかなり助かるわ。
「どっせい!!」
ぶん回してきた尻尾の攻撃を受け流し、反撃の一発を入れるが、やはり効果は薄い。取り敢えず、他の奴らに攻撃が行かない様に自分にヘイトを集めながらも、自身のプラーナを高める様に立ち回る。何せ、身体の活力が活発になる程、【オド】も活性化するそうなんでな。俺に視線を集めるのには丁度よい。
それに、家の家族の中で、一番耐久力が高いの俺なんでな。タンク役に徹すれば他の奴らの攻撃チャンスを増やす事が出来るんよね。
「けど、じり貧だよなぁ」
『【追従】あの電磁バリアを何とかしなければ、まともに攻撃が入りませんから』
こっちが不利なのは触接ダメージを入れられないからって事の他にも、【オド】を奪われ続けているからってのもある。
【オド】は、生体磁場であり、生命エネルギーでもある。要は、俺達は、常にエナジードレインを掛け続けられて居る様なものな訳だ。
こういった戦闘の中で、デバフが常に入っているのがどれだけ負担になるのかってのは、理解できるだろうさ。
お互いに決定打が出ない以上、戦闘の泥沼化はどうしても避けられない。
しかし……
「やはり、ベリアルは近くには居ない様だな」
お互いに効果の薄い攻撃を繰り返しているってのは、こっちには今以上に安全で効果の期待できる攻撃方法がないからって事な訳だが、ムシュフシュに関してはそうではないだろう。電磁バリアが張れるくらいなら、自身に電流を纏う事も、プラズマを放つ事も不可能じゃないはずだ。にも拘らず、未だに拘束から抜け出そうともがきながら、頭か尻尾での攻撃を繰り返している。
「GuuuuuGyaaaaaaaaaooooooooooonnnn!!!!」
『【警告】マスター!!』
「おうよ!!」
そんなことを考えている間にも迫ってきた頭部を受け流し、地面にたたきつけつつ、カウンターで薙ぎ払う。が、やはり直接触れる事は叶わず、吹き飛ばすだけに止まった。
「アン!!」
「ワオン!!」
「アンアン!!」
「ワンワン!!」
「【詠唱破棄】【ファイアジャベリン】!!」
『【攻撃】【詠唱破棄】魔法名【アイシクルランス】デス!!』
そんな風に俺が注意を引き付けてる間に、ミカ、バラキ、ウリ、ラファが何度も足元を中心に攻撃を繰り返し、イブとジャンヌが魔法を放つ。
「むぅ!! 潰れちゃえぇ!!!!」
『だ~る~い~! つ~か~れ~た~!!』
そして、ラミアーが【念動力】によるダイレクトアタックを繰り返していいる間にも、セフィは足止めに徹してくれている。
「ふえぇぇ……」
だが、俺達がこうして攻撃にだけ集中できているのもティネッツエちゃんが周囲を索敵して、何かあったら知らせてくれると信用してるからだがね。それと同時に、ムシュフシュの状態も。
絶えずムシュフシュの体を回り込みながら、攻撃してきた尻尾を受け流し逸らしてカウンターを叩き込む。受け流すときは繊細に、攻撃時は大胆に。少しずつ少しずつ。反応を見ながら、満遍なく。
ただ、それでも、俺達がエナジードレインを受け続けてるってぇ事実は念頭に置きながら。こいつは狩りって訳じゃあねぇんだからな。決定的な一瞬を目敏くつける様に、神経をとがらせる。
ベリアルのテイムがどんな状態の物かは分からないが、この分だと、ほぼ自我のない操り人形状態な気がするんよね。自分の意志で攻撃方法を変えようって感じがないからな。
それと同時に、この事は、変える様に指示する存在が近くにいないって事を証明しちまっても居る。
この様子じゃ、おそらくはこっちの様子を窺ってすら居ないだろうさ。
それ程までに、ベリアルが、このムシュフシュってぇ竜種を信頼してるのか、それとも他にどうしてもやらんといけん用事があるのか……
おそらく、十中八九は引きこもり皇帝の所だろうがね。自らの手で復讐を果たしたい、のであれば。
ベリアル本体の戦闘力がどれ程あるのかは分からない。
ただ、非戦闘タイプだってぇ、ゴモリーやベルゼブブですらあれだけの戦闘力があったんだ。ベリアルだって、弱いとは思えない。
だが、そっちは皇帝に任せるしかないんだ。俺達だって、余裕がある訳じゃないんだからよ。




