ニートの空
「で? それだけが目的だったってんなら、帰らせて貰うが?」
「思ったよりせっかちだね。もうちょっと、世間話でも楽しもうかと思ったのに」
うおぉい! 思いっきり、自分の目的だけ話してたろうがい! いや、世間話って事は、断わられる事も織り込み済みってことか?
だとしても話の広げ様がない話題を出す辺り、世間話は苦手な方か? 魔導帝国って事は、『魔導を極める~』とかって言ってる連中の集まりなんだろうし、そのトップって事は、研究室に引きこもってる引きこもりだってのは確定かね?
床ドンして飯持ってこさせてる様子が目に浮かぶようだわ。
「何か、不敬な事、考えてる気配がするなぁ」
「この程度で不敬とか言ってたら、国民全員、縛り首にせにゃならんぞ?」
「いや、ちょっと! 不敬な事は考えてたって事だよね!?」
「カンガエテナイヨ?」
そもそも敬語使ってない時点で不敬っちゃあ不敬だと思うんだわ。
ただなぁ、初見初手がアレだったからなぁ。敬語使うのが馬鹿らしいと言うか、何と言うか。
「あー、いや、場も和んできた事だし、本題に入ろう」
切り替え下手か! うん、俺の中で皇帝、引きこもり確定。
「ベリアルの軍勢の中に、竜種が確認されたんだよ」
な、なんだってぇ~!! って、いきなりブッ込んで来たな。ぶっちゃけまぁ、居ても可笑しかないんだが。
てか、また竜種かよ! 一生に一度目撃できるかどうかな存在じゃなかったんかい!! 俺、既に4体目との遭遇になるんじゃが!?
「……それ、テモ・ハッパーボにも言ってるんだよな?」
「当たり前だろう? S級冒険者にしてドラゴンスレイヤーだよ? あの人。でも、なんか【約定】があって手を出せないんだとかって話でさ」
成程、バフォメットの野郎、ベリアルと、何がしかの契約の様なものを結んでて手を出せないから、俺に振ったんだな。
あの戦闘狂が大規模な戦争になりそうな事に首突っ込まずに、俺を推薦しやがったのは、そう言う理由か!!
「で、その代わりが俺って訳ね」
「いや、君の事だって頼りに思ってるんだよ? こっちだって別に情報を収集してない訳じゃないんだ。君の事に付いても色々とね……」
その色々の内容が気になるんだが? まぁ良い。そうやって情報を集めた結果として、ベリアルのテイムしている竜種を俺に任せようって事にしたって事か。
「つまり、俺に倒せと?」
「まぁ、そうだね。そして、竜種が向こうに居るって事は伏せて於いて貰いたいんだ」
「士気が下がるからか……」
俺の言葉にクロノクルがコクリと頷いた。ただなぁ、俺がここで黙っていたとしたって、結局は見れば分かる事なんだがねぇ。
「だから、出来れば、早い内に叩いて貰えると有り難いんだ」
あんれぇ? なんか凄っげえ無茶振りされた気がする。
それってつまり、ベリアルの行軍途中で奇襲をかけろって言ってるも当然なんじゃが!?




