ミッションワン
気配を探知し、近くに誰も居ない事を確認した上で、ヒッソリとカメラの死角を通過する。
と、埃を一摘みしてフッと息を吹きかけると、フワリと舞った埃が光線を可視化した。
やはり、カメラの死角には別の仕掛けか有ったか。
……何処のスニーキングミッションかな? ミカン箱が欲しいミカン箱が!!
全くヤレヤレだぜ。新大陸のダンジョンで修行を積んでなかったらアウトだったわ!!
流石は魔導帝国ってぇ所かね? 成程、古代文明のアーティファクトを良くぞここまで再現したもんだぁね。
てか、これだけの技術があるってのに、周辺諸国に全く流出してないってどう言う事なんだか。
まぁ、独占するって気持ちは分からんでもないが、だとしても不自然な気がするんだよなぁ。
まぁ良い、そんな事、俺が気にする様なこっちゃねぇし。
取り敢えず、皇帝さん所目指しましょうか。
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「おっかえりなさ~い!! 食事にします? お風呂にします? それともぉボ・ク?」
「帰って良い?」
皇帝の私室に潜り込んだ俺の目の前には、何でかピンクのフリフリなエプロンを付けた中学生くらいの美少年。赤味掛かった金髪と翠色の瞳。透明感のある肌と華奢な体躯。これが皇帝? 何ちゅうか、アニメがそのまま3次元に抜け出てきたみたいな感じのヤツだな。声も含めて。
いや、魔導帝国なんだから、家の国みたいな偉丈夫がトップって訳じゃないだろうとは思うが、これはこれでちょっと意外だったわ。いや、逆に王道か?
「……もしかして半妖精族か?」
そう言った俺の言葉に、皇帝クロニクルは目を見開いた。そして苦笑しつつの溜息を一つ吐くと、髪を軽く掻き、口の端を歪めた。
「いやいやまさか、一目で見抜かれるとは思わなかったよ」
ある意味テンプレですので。と、言っても妖精族すら見た事ないんだがね、俺。前世知識でエルフ耳って言ったら横長のアレだったんで、耳が目立たないからハーフの方かな、と思っただけ。
……
いつもならこの辺でファティマの解説とか入るんじゃがね。今回一人で来てるから誰も説明してくれないんでちょっと確証が持てんな。
ただ、おおよそ人間返りした精霊が妖精族なんじゃなかろうかと推測。で、普通に人間と交わって生まれたのが半妖精族って所かね。
そういう意味じゃ、魔人族と同じ様なもんだろう。魔族が人間返りして生まれたのが魔人族で、精霊が人間返りして生まれたのが妖精族ってこったね。
それは兎も角。
「俺を呼んだ理由は?」
「辺境伯さ、個人で遺跡持ってるよね?」
「まぁね」
成程、俺とコンタクトを取りたかったのは、そっちの方の理由か。これだけ古代文明のアーティファクトを収集、再現しているなら、その他の遺跡にあるであろうアーティファクトも、さぞかし気になるだろうさ。
だとしても、立ち入らせる訳にゃいかんのだけどな。何せ家の町。遺跡の機能使って運営してますから。
「僕らの所で調査させて……」
「無理だな」
「え~、即答ぉ?」
皇帝は不満げな表情をするが、俺だって譲る訳にゃいかんのよ。
そもそも、新大陸の方にだって、遺跡の力を使わんといけないしなぁ。
「僕の所で調査させて貰えるなら、アーティファクトの方は複製した後、ちゃんと返すし、事によっちゃあメンテナンスまで引き受けるよぉ~」
成程、そうやって独占して、相場より高く売ってるんだろうな。その上、メンテナンスと称してブラックボックスには触らせないっと。
そりゃ、周囲に広まらん訳だ。




