心当たりがありまくるんだが?
「う~ん」
『【質問】何か有りましたか? マスター』
冒険者ギルドからの報告書を読んで腕を組む俺を見て、ファティマが、そう尋ねてくる。
何かあったっちゃぁ、何か有りはしてるんだが。
「妖虫種の分布が、また変わったらしいんだわ」
『【納得】ああ、なるほど』
大森林内に巣食う妖虫種は、その環境の変化で、直にその分布を変える。
だから、大森林内で何かが有った事は確かなんだが、それがいったい何かってのは分からない。報告書には、何かが分かったらまた報告するって事で締められてるが……
家の冒険者は、基本、大森林内での討伐がメインだ。なんで、大森林内の異変ってのは、最注意事項に成る訳だな。
そもそも、妖虫種の分布が変わると云々って話を冒険者ギルドに教えたの俺だし。俺、領主だし、話をこっちに持って来てるのは分かるんだが……
この異変の原因、多分、俺分かるんだわ。そう言えば冒険者ギルドにまで通達して無かったな。ってか、分布変化が起こるってのは、予想してしかるべきだったわ。そもそもニーズヘッグの時もそうだったんだし。
原因ね、俺の目の前のソファーで、ラミアーと真剣に三目並べで勝負してるセフィ。そう言やこいつ、竜種じゃん。
そんなん来てたら、分布も変わるっちゅうの。
まぁ、変わった後の分布を調べるのも無駄にはならんから、構わないとは思うが……
後で冒険者ギルドのマスターには、謝罪と説明をしておこう。また朝の枕元の抜け毛が増えるって頭抱えそうだよな。ギルドマスター。
******
第二夫人にお茶に誘われたんで休息がてら中庭へ。えらく自然に呼ばれたんで疑問にも思わんかったんだが、そう言や第二夫人もこの街に屋敷建ててたよな? なんでナチュラルに領主館に滞在してんの?
もっともソレ聞いても答えに成らん回答しか貰えそうにないんだが。
「……引きこもり、ですか」
「そうなのよ、公爵家の嫡男だって言うのに、どうしたものか……」
俺を膝に抱きかかえて、旋毛辺りをスンスンしながら、第二夫人がそう漏らした。ジャンバルディー君、ただ今絶賛引きこもり中らしい。
あー……誕生日の日に色々あったしなぁ。え、俺? 俺はメンタルアラフィフですしおすし。
で、教育を任されてるはずの第一夫人の方も、何の手立ても施さずに放置してるらしい。ホント、何考えてるんじゃろね?
既に他人感覚な俺と違って、お腹を痛めて産んだからか、第二夫人の方は色々気を揉んでるっぽいんだわ。例え第一夫人にジャンバルディー君との接触を禁止されていたとしても、だ。
仮にも第一夫人なんで、対外的にも慣習的にも屋敷内の事は一任されてるんだとか。その辺貴族だよなぁ。んで、第二夫人以降は第一夫人に付き従わないといけないらしい。ただ、第三婦人に関しては公爵の庇護があるせいで、第一夫人もあんまり強くは当たれない。そんなんだから貧乏くじ引くのは必然、第二夫人って事に成る。
もうちょっと、家の中の事に関して興味持とうぜ? 公爵さんよ。
第一夫人が第二夫人に、ジャンバルディー君との接触を禁止してる理由なんだけどさ、何か、生みの親だと、情でどうしても甘くなるからって事らしいんだが、放置してるそっちはどうなのよって思うんよね。
興味も関心もなさそうな放置より、多少甘やかす位の方が……いや、どっちもダメだわ。ちゃんと教育くらいしろやと言いたい。次期当主なんだし。
それとも、第一夫人的には、無能に育って貰って、自分所の一族からの養子縁組の方が目当てなんかね? ドロッドロやなぁ。
公爵家の内情がどうなって居ようと、俺にとっては他人事ってことに成るんだが、それでも第二夫人が心を痛めているって事については、色々思う所は有る。
ただ、公爵家のごたごたに付き合うつもりはないんで、俺に出来るのは、こうして第二夫人のヌイグルミとして、抱きしめられたりスンスンされたりするだけの事くらいしかない。
ただまぁ、国王に公爵家の実情くらいは伝えておくか。




