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パワー・オブ・コンバットパワー

 完全武装の馬上の人間が、素手の少年に殴り飛ばされ、上空まで吹っ飛ばされた挙句、無様に落下して戦闘不能になった。


 その事実だけでも呆然とするには十分だろうさ。当初考えてた様に、何某かの小細工や策を弄した訳じゃ無いのは、逆に青鎧の騎士(ジルドレー)の連れて来た騎士達が証明しちまった格好だ。


「……じゃ、本格的に始めようか、オファニム!!」


 バクンッと黒鎧(オファニム)の胸部が開き、俺はそこに飛び込む。胸部装甲が閉じると同時に、魔力装甲を起動。物理的に接続され、オファニムの全身を走るスリットから赤色の閃光が脈動するかの様に流れ始める。


 オファニムが手に持っていた聖斧(ファティマ)を担ぎ直すと、俺は、目の前の首を振るだけの置物になった騎士達を無視して、兵士達が密集している場所へと飛び込む。

 傍らに随伴するのはミカ、バラキ、ウリ、ケルブ。


 たとえ、これまでよりも数が多いとしたってやる事は変わらない。ファティマをぶん回し、兵士を薙ぎ倒すだけだ。ミカとバラキが分身し、兵士達を翻弄したかと思えば、ウリは魔力装甲で刃を作り鎧ごと兵士を切り裂いて行く。……ちゃんと手加減してるよな? ケルブはその巨体で突っ込んで行くだけで、面白い様に兵士を吹き飛ばして行く。ここまで乱戦に成れば、弓兵も魔術師も役には立たない。フレンドリーファイアに成っちまうし、こっちの人数が少数過ぎて、むしろ味方の被害の方がデカくなっちまうしな。


 わざと速度を抑えた一撃で、兵士をノックバックして間合いを作る。返す刀でファティマを振り上げると、プラーナを加速循環させる。濃く濃く濃く濃く、速く速く速く速く。


「セイッ!! ヤアアアアアァァァァァァァァァァッ!!!!」


 ファティマを叩きつけられた地面が爆風をまき散らし、爆音を轟かせて粉塵が舞う。土煙が晴れた後に見えるのは巨大なクレーター。

 それだけで、既に兵士は腰が引け、足が震えている。農地に大穴を開けっちまう事に思う所はあるが、人さえ無事なら立て直す事も出来んだろう精神で。


「て、敵は単騎だぞ!! 取り囲んで討てぇ!!」


 軍部のお偉いさんらしき輩が叫んでいるが、おまいら忘れてねぇよな? ここに居るのは俺の家族だけだが、後方には無傷の王国軍が居るんだぜ?


 もっとも、アイツらに手出しはさせる気ねぇけど。


 そもそも取り囲んでって、それやって吹っ飛ばされてる現状が見えてねぇんかね?

 上官の命令で、鬨の声をあげながら兵士が迫ってくるが、悪いけど、気合程度で覆せるほど実力差ってヤツは小さかねぇんだわ。

 受け止めてやるなんてワンクッションも無しに、ファティマを振るって、その衝撃波で無造作に兵士達を蹴散らす。

 間合いが空いたら、即クレーター。

 二発目は、兵士の後ろで右往左往している騎士達を巻き込む様に。


 お偉いさん達が落馬し、叱咤の声が聞こえなくなると、途端に兵士が壊走を始めた。最奥の貴族達が慌ててソレを押しとどめようと声を上げるが、一旦始まっちまった流れは、早々治まるもんじゃねぇ。


 ガキン!!


 こうやって、恐怖で縛るとかしない限りな。 俺は、兵士の1人を切りつけようとした貴族の剣を弾くと、ソイツを殴り飛ばした。

 助けられた方の兵士もポカンとしてるが、その周囲の貴族もポカンとしてる。


「ほれ、味方に斬られる前に、とっとと逃げろや」


 そう言われ、ようやっと事態を飲み込めたのか、コクコクと頷いた後、その兵士は貴族連中の居ない方へと逃げ始めた。

 ハッとして同じ様に剣を振り下ろそうとした貴族に、俺が【威圧】を掛けると、その貴族はビクンッと身体を震わせたかと思ったら、そのまま騎馬からずり落ちる。


『【進言】マスター、【威圧】に力を乗せ過ぎだと具申します』


 味方を攻撃とかアホな行為に、思わずイラっと来ちまった様だな。落ち着け、もちつけ俺。


 俺が何もしてないのに、相手が倒れたって見える様な状態を作るのは好ましくない。

 確実に“俺が手を下した”って見える様にせんと、また、都合の良い言い訳を作らせちまう。

 キッカリ、俺に倒されたって事を自覚してもらわんとなぁ。


 その代わり、人死には出んように手加減はするが。望ましいのは全身打撲程度。ただ、骨折しても勘弁な。


 歩兵と騎士、弓兵の一部があっと言う間に戦闘不能になる。恐らくは徴兵された農民なんかで構成されている歩兵はこの状況で戦意を保ってなんざは居られんだろうから、壊走も致し方なしだろうさ。

 恐らく接敵時に弓兵で数を減らしつつ前進し、歩兵同士の乱戦に成った所に騎兵を突撃させ、その都度魔法で援護って予定でのこの布陣だったんだろう。まぁまぁオーソドックスな戦法ではある。


 ただ、最初にジルドレーが動いちまって、その上、他の精鋭(笑)の騎士がその場で動かなくなっちまったんで、弓兵も攻撃が出来なかったんだろうし、それに歩兵が前進して無い事で、騎士達が突撃をする間合いが取れて無いってのも致命的だった。


 本当なら、後詰の兵を殿にして撤退いしつつ、城に逃げ込んだら籠城ってのがセオリーなんだろうが、俺の単騎で、ここまで入り込まれたら、無傷の王国軍が動くって事を考えて、それを警戒して早々行動に移せるもんじゃないし、例え逃げ出しても追撃できる自信があるぞ? 俺。


 そもそも王国軍に手を出させる心算とか無いし。


 さて、予定通り終わらせるとしますか。俺だけで、今回も。

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