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最終決戦と言うか

 何時もの様に単騎で出てくる俺に合せるかの様に、クーデター軍からも、少数の騎士と思しき連中が出て来る。人数は10人程だが、実戦オンリーって感じの武骨な鎧姿の集団だわ。

 オファニムを纏って聖斧(ファティマ)を担ぎ、ケルブを含めた犬達をお供にした俺に、その騎士は真っ向から対峙した。俺がドラゴンスレイヤーだって事は分かってるんだろうに、大した胆力だとか言っておけば良いのかね?


『【進言】マスターは気配などを完全に制御して、【威圧】等を全く外に漏らして居ませんから、初対面でその力を推し量るのは難しいかと』


 そんなもんか? 前世で読んだマンガなんかだと『「気」を完全にコントロールしてるだと!! 何と言う技量だ!!』とかって台詞が有ったんだけどなぁ。こっちじゃそう言う事ってないんかね? 見た感じ歴戦って感じの連中なんだがね。


 その中の、青色に染められた鎧を着こんだ騎士が、馬を進めると、彼我の距離で言えば3m程の間合いを取って俺を見下ろす。


「ふうん? 噂には聞いていたが、随分と小さいな」


 ……え、何、いきなり喧嘩売ってんのか? この騎士。あ、いや、戦争してるんだったわ俺等。うっかりうっかり。

 まぁ、買わんのだが。


「……戦闘開始って事でいいんだよな? だからって先手は譲るとかって温い事やる気はねぇぞ? 俺は」


 俺の言葉に、青鎧の騎士に連れ立って来た他の騎士から失笑が漏れる。


「傲慢な事だ。知っているぞ? 貴様が竜種(ドラゴン)と対峙した時には常にS級冒険者が随伴していたと言う事も」


 侮蔑を含んだ声色で青鎧がそう言った。ああ、そう言う事か、俺が、ドラゴンスレイヤーを成し遂げたのはテモ・ハッパーボ、ってかバフォメットの協力と言うか、アイツが主導して、俺はおまけで着いて行ってたとか思ってるってぇ事だな。実際、アイツの力は不可欠ではあったから嘘とも言えんのだが、あれは、全員が死力を尽くさなきゃ倒すなんて到底不可能だったからな? たった一人の力でどうにでもなる様な相手じゃぁない。


「それに、貴様が、あの国の王の隠し子だと言う事もな」


 は? 小声でそう言った青騎士に、思わず目が点に成った。


『【嘆息】随分と愉快な思考の持ち主のようですね。この騎士は』


 あ~いや、遠縁とは言え、親戚筋なんも確かだけどさ。ああ、つまり俺が国王様(セルヴィスおじさん)の隠し子だから優遇されていて、ドラゴンスレイヤーってのも、その為の箔付けの一つだとか思ってるって事か。

 なら、俺が3つ程、領軍全滅させたってのはどう思ってるんだかね?


「……この状況で、その事に何の関係が有るか分からんのだが、第一、()()既に、そちらに付いた軍を潰してるんだが?」

「だが、死者が出たと言う話は聞かない。つまりはそちらの公爵によるプロパガンダなのだろう?」


 そう言う捉え方してんのね。確かに人死にが出ん様にはしてたが、それがあると、負けた方の恨み辛みだとかが消せんくなるから、あえて、出ない様にしてたんだがね。


 何が怖いって“恨み”ってのは人に伝播するんだよ。例えば、ある人物に関して仲の良い友達が居たとして、その人物の悪い所を常にあげつらって居たとするとどうなるか。

 その友達に同調するか、うんざりするかだが、それでも、当人物に対しての評価ってのはどうしたって色眼鏡の付いたものに成っちまう。

 これが、親子で、恨みを吹き込まれて育ったとしたらどうなるかなんて、想像がつくだろう。そう言った“恨み”ってのはどうしたって世代を超えて受け継がれちまう。

 もはやそんな物は“呪い”と同じだ。いや、むしろ“呪いの骨子”とはそう言う物だろう。だが、今回のこれは、その事が裏目った感じか。


 もっとも、そんな深謀遠慮の奇策を弄したと思われてる公爵様、後ろの国王軍の中で青い顔してらっしゃるがね。


「そして、たった3戦しかせず、その後は全て降伏と言う不自然な状況が、これが公爵の策だと言う事を物語ってるぞ?」


 凄いねぇ、良かったねぇ、敵方にすっげぇ評価されてるよ? 公爵。そういや、公爵の名前って何だったけ? まぁ良いや。


「どうせ、その単騎で出てくると言うパフォーマンスで衆目の視線を集めておいて、その間に公爵達が何がしかの工作してると言うのが真相なのだろう。だが、その様な小細工、我々には通用しないぞ!!」


 まるで全てを看破してるって様な言い分だが、俺の戦いに種も仕掛けも無いんだよ。成程? 下手な小細工なんぞされても良い様に、腕っ扱きを連れて来たぞ、と。

 敵の小細工を潰し勝利し、名ばかりのドラゴンスレイヤーを倒して栄誉も得ようと、つまりはそう言う事だな。

 それくらいには自分に自信があるって事だろう。


「まぁ、良いや、俺は、トール・オーサキ。お前は?」

「フッ 私の名前はジルドレー・フォン・エーベルシュタイン!! 貴様の最期を看取るものだ!!」


 そう言い放つと、青騎士ことジルドレーは馬上槍を大上段に構えた。

 ……アホか。ただでさえ距離が出来る馬上からの攻撃で、長物を大上段に構えるて。確かに威力は増すかもしれんが、スピードは落ちるだろうが。

 そもそも、()()は、馬上で携える様に構えて、馬の突撃力で相手を刺し貫く武器だ。上から叩きつけても、こん棒と同じ威力にしかならん。


 いや、確かに鉄塊を叩きつけられれば結構なダメージに成るんだが、それはそれとして、使い方が間違ってるぞ、と。


 俺は溜め息を一つ吐くと、オファニムの中で魔力装甲を解き、おもむろにオファニムをパージした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 名前からして、アカン性癖持ってそうな御仁ですねぇ…
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