分からなけりゃ聞けば良い
助け出した後の事は、彼女等の一族に委ねっちまって構わないらしいんだが、どう脱出させるかが問題なんだわ。
それと分かる様に派手に行くのが良いのか、秘密裏に助け出して、僅かでも時間を稼ぐのが良いのか。
俺の隠形を期待してってのなら、秘密裏にって事だと思うんだが、俺の戦闘力をって事なら、また話が変わって来る。
どっちだろうとやり様は有るんだが、いや、やり様が有るからこそ、どっちの方が良いのやら。とは言ってもぶっちゃけその辺の政治的判断って奴はよう分からんのよね。
取り敢えず、この都市から脱出させた後、クーデターを詳らかにして、王族が正統を主張しつつ、臨時政府を置く事は既定路線らしいんだが……
「一応、この国の公爵領に一時的に避難させる予定です」
「そうなの?」
「はい、こちらの公爵様は王族派ですので、協力を約束して下さっています」
ああ、そこまで話は通ってるんね。てか、やっぱ優秀だよなルールールーも、ここの一族も。うん。優秀なのは認めるんだけどもよ。あのジジイの性格さえまともなら。
「まぁ、良いや」
「は?」
「ああ、こっちの話。じゃぁ、ルールールー達は、その公爵ん所で、先に準備を進めてて貰えるか?」
「はい?」
何にせよ、その公爵様ん所まで送るってのは決定事項に成ったから。俺ん中では。
「って、訳で公爵領の場所だけ教えてくれ」
「はい、それは構いませんが……」
「どうやってとかは聞くなよ? 俺だってどっちの方が良いのかなんて分からんし、まだ決まっても無いんだからよ」
訳が分からないって顔してるが、俺だって何が最良かなんてのは分からんのよ。
******
「はい、と言う訳で、幽閉されてる塔まで来てみました。あ、これ、国王様からの書状と、一応、宝剣ね」
「驚いたわ、……確かにあの人からの書状のようね」
俺の前には第一王妃。つまりは国王様の従妹殿。
「ふうん?」
書状を見、俺の顔を眺めて溜息を吐く。なんか問題でもあったんかね? それはさて置き、どうしたら最良なのか分からんのだったら、当人たちに聞けば良い。って事で、取り敢えず、話を通し易そうな第一王妃ん所に来た訳だ。国王様の従妹殿って事だしな。
「王との連絡を取らないと決められないのだけど、“ソレ”は貴方が請け負って下さるのよね?」
「まぁね」
「良いわ、信用しましょう。この場であまり騒ぎが大きく成るのは困るから、脱出するのなら、なるべく静かな方が好ましいのだけれど……」
そう言って、眠りこけてる見張りの兵をチラリと見る第一王妃。うん。眠らせた。邪魔だったし。姿見られるのもアレだったんでクロロホルム使って。知ってた? あれってご家庭にある幾つかの物使うと結構簡単に作れるんだぜ?
それはさて置き、第一王妃様は、なるべく静かにって事ね。
「じゃ、さっそく行きましょうかね、連絡係として。で、国王さんが何処いるか知ってる? あ、それと手紙も書いてくれる? 紙とペンは売るほどあるんで」
俺がそう言うと、こんなに簡単に請け負うとか思って無かったのか、第一王妃様は目を丸くした。けれど、時間も惜しいって分かるのか、手早く手紙を書いてくれた。
「じゃ、国王さん所、行って来るわ」
「……ちょっと、行く前に1つ良いかしら?」
「はい? 答えられる類の事なら」
いくら書状が有るからって、やっぱる初対面に人間を信じるってのは難しいかね? それも、今後の人生が掛かってるって場面だと。
そう思って、俺は第一王妃様に分からない様に、溜息を一つ吐いた。
「貴方って、セルヴィスの庶子なのかしら?」
「チガウヨ?」




