大瀑布にて
“大瀑布”と言う言葉がそのまま形を成した様なソレに、思わず言葉を失う。
視界の全てが流れ落ちる水で埋め尽くされ、ドドドドドドドと言う轟音だけが鳴り響いている。ベルゴザビネは、この大瀑布で有名な土地らしい。
『【解説】高さ、距離、両方ともに、類を見ない規模だそうです。私も、これ程の規模の滝を見るのは初めての経験です』
『【興奮】個体名【イブ】これを確りと目に焼き付けるデス! 水系の魔法で、この威力をイメージ出来れば、攻撃力向上間違いなしなのデス!!』
「ん!!」
大自然の威容に打ち震えてる俺の横で、何と言う無粋な話をしとるんじゃろか? いや、魔法使いとして、正しい姿勢なんかも知れんが、情緒とかよぉ。
「でか」
『みず、いっぱ~い』
「ワン!! ワンワワワン!!!!」
「アオン!! アオンアオン!!」
「ワオーン!! ワオンワオン!!」
「バフバフ!! ワオン!!!!」
こっちはこっちで何の感動もないんな。まぁ、人外だしなぁ。犬達はコイツ等とは真逆の反応で、結構な感じに興奮して騒いでるけどな。だが決して感動したと言う訳ではないだろう。絶対。
まぁ、どんだけ美麗な風景だったとしても、本能ありきのコイツ等にとっては背景の一部って事でしかないんだろうけどさ。もう少し分かち合いたいとか思うのは俺のエゴなんだろうさね。
「ふわわわわわぁ!! 凄い凄い凄い凄い!!!!」
うん。ティネッツエちゃんはそのまま育ってください。目をキラキラと大きく見開いて、フンスと鼻息も荒い。こういう反応を見ると、連れてきてよかったとか思うやね。
確かに冒険ってのは、ある意味危険と隣り合わせになるものでは有るんだけんどもよ、だからと言って、危険に突っ込んで行くのが冒険って訳じゃない。
普通に暮らしてたら見れない光景を見て、体験できない物を体験するってのも、確かに冒険なんだからさ。そう言う意味では、今、俺達は確かに“冒険”ってヤツをしてるんだわ。
ドドドドドドドッてぇ水の落ちる轟音が耳朶を打ち、視界の全てにその流れ落ちる水が映るってぇ壮絶な光景。
大自然の作る絶景ってのは、筆舌し難いやね。正直、俺の語彙程度で、何を表せるのかって思う位には、鳥肌の立つ風景なんだわ。
ただ、ここに辿り着いて、当たり前の様に何事も無く観光が出来た時点で、俺はちょっと安堵していた。
いや、今までの街、着く所着く所、何んか問題に巻き込まれてたじゃん? ここでも厄介事に絡まれるか? って、ちょっと警戒してたんのも確かなんよね。
何か、この大陸来てから、テンプレかよ!ってぇ位、厄介事に遭遇しまくってたからな。もしかして転生したのがこの大陸だったら、ラノベ主人公的な展開に成ってたのかね?
いや、まぁ、今の俺の状況も似た様なもんかも知れんけんどもさ。
でもまぁ、何事も無いんなら良かった良かった。結構な日数こっちに来てたし、大体の市場調査も終わってる上、こっちに幾つか伝手も出来た。
後は、エクスシーアとかに報告して任しちまっても良いだろう。ついでにルールールーに報告書を渡してルーガルー翁に情報が行けば、あのジジイなら有効活用してくれるだろうさ。
そうと決まったら、これで家の領に帰るかね、残った娘さん達も、家の領まで付いてくる気なんだし、こっちの街をコンプリートしなくちゃいけないって言う訳でも無いだろうし。
そうと決まれば、ここを見たら一旦帰る事にしよう。そうしよう。
俺はそんな事を考えていたんだが。
「おいおい、可愛い娘達が居るじゃんよぉ」
「うわっマジだよ!! レベル高けぇ!!」
……大人しく終わらせてくれねぇかなぁ。




