初めてじゃ無いお使い
怖いのは最初の一歩だけ。案ずるより産むが易しと言う言葉もある様に、思い悩んでいるより、やってみれば案外簡単だったって事は往々にしてある。
「はふぁ!! 人が……」
「うっ、男がこっち見てる」
「うわぁ、大きい建物が……」
「ふえぇ……」
「ちょっと、人が多すぎて、気持ち悪く……」
「もう、無理、歩けない」
……まぁ、それでも、慣れるまでには時間が必要っぽいけど。
外見年齢10才くらいの少年の後ろに、隠れ切れてないにも拘らず身を寄せ合っている、15才前後の娘さん達。この年齢だとこっちの世界だと良い大人なんじゃがなぁ。
家の娘を含めて、娘さん達も器量良しさんが多い。まぁ、だからこそ、あんな目に遭っちまったんだろうがさ。
なんで、ナンパ目的と言うか、そんな感じで近付いて来る男も多いんだが、それはウリとガブリ、そしてケルブが絶妙に牽制し、ガードしてくれている。ミカとバラキ? 俺に体を擦り付けながら、足元を歩いて居ますよ?
犬達が牽制している集団で、その内訳が美少女×2、美ゴーレム×2、美幼女×2、美人×6、美犬×4、美ゴーレム犬×1、野郎×1ってぇ色物集団な訳だ。
そんなんなんで悪目立ちする事する事。それでなくても目立つパーティーだしな俺等。
視線を集めるんで俺の後ろに身を寄せ合う娘さん達。それが奇異さを生んでさらに視線を集め、その事で増々キョドる娘さん達。その所為でさらに視線を集める負のスパイラル。
って、確実に男性恐怖症を発症させてはる娘さんが居らっしゃるってのに、何故俺の後ろに隠れるか。はい、まだ男性として見てないだけっすよね。知ってた知ってた。
「これ以上歩けないんだったら、ケルブに乗って貰っても構わんよ」
ほら、本人も『大丈夫ですよ~』って言ってるし。
「……目立つから、無理」
ちょっと考えてから、そう答えた。どうやら疲労よりも羞恥心が勝ったらしい。まぁ、全人口100人足らずの村々に住んでたらしいから、ここまで人の行き交いが多い場所は厳しいだろうさ。
気持ちの悪くなったってぇ娘さんの背中をさすりながら歩みを進めてみるが、流石にこの辺りが限界だろうな。
まだ、屋台が有る通りまで着いてないんだが。
「ファティマ、ジャンヌ、俺達はこの辺りで一旦戻るわ。イブ、悪いけど、ファティマ達と一緒に適当な食いもん買って来てくれ」
「ん!」
『【了解】分かりました。マスター』
『【了承】オッケーデス!』
「あ!! わたしもイブねー様を手伝います!!」
「うん、頼む」
嘆息しながら、俺はイブ達に食べ物を買って来てくれとお願いした。
本当なら屋台を楽しんで貰いたかったんだが、無理強いも良くは無いだろう。楽しい思い出が有れば、外に出る事を嫌がるってこたぁ無くなるだろうし。ただ、引きこもりに成らずに外へ出る事が出来たってだけでも充分な成果だ。取り敢えずはこれで良しって事にしておくか。
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「ただいま」
『【帰還】戻りました』
『【追従】戻ったデス!!』
「もどりました」
両手いっぱいに食べ物を抱えたイブ達が戻ってくる。
娘さん達な、宿に戻るなり、またゲーム大会をおっぱじめよったわ。まぁ、何か気を紛らわせる事の出来る趣味が有るってのは良い事だ。特に、こんな状況だと。
まぁ、モ〇ポリーなら、軽食を摘まみながらでもゲームは出来るし、まだ良いか。
「ほれ、別にゲームを止めろとは言わんが、ちゃんと飯は食え」
「「「「「「は~い!!」」」」」」」
こういう時は返事が良いのな。




