社会復帰を目指させる
お米は有ったけど、種籾は売って無かったよ。流石に翌年の米の元になってる物だし、各領の領主が管理してるんだってさ。
有ったら持ち帰ったんだがなぁ。風土的に合うがどうか分からんが。
米って、寒暖差が有った方が美味しくなるんだったか? 家の領地のある大陸、一年中温暖だからなぁ。どうなんじゃろ?
「戻った……」
宿に着いて部屋に入ると、何か留守番組が死屍累々。全員が床に突っ伏してぶっ倒れとる。
「ううぉいぃ!! 何が有った!!」
出て行った時と変わらん宿の様子的にも、荒らされた形跡の無い室内的にも、物取りとかが有ったようには思えんのだが、なぜ彼女達がこんな状態に!?
『【報告】マスター、彼女達はどうも飢餓状態になっている様です』
はい?
『【報告】飢餓状態になっている様です』
余計、何故そんな事になったか分からんのじゃが!?
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呆れれば良いのか何なのか。この娘達、俺等が社に行ってる間、ずっとボードゲームをし続けてたらしいんだわ。飯も食わずに。
「そら、倒れるわ!!」
俺の言葉に、娘さん達がサッと視線を逸らす。
『【嘆息】早速お米が役に立ちましたね』
「最初の米料理じゃし、もうちょっと違う料理を作りたかったわ。塩むすびとか」
「「しお、むすび?」」
イブとティネッツエちゃんが揃って首を傾げる。なんでこの二人はこう、姉妹みたいなリアクションするんかね?
まぁ、良いけど。
娘さん達には、取り敢えずお粥を作って食べて貰ってる。飢餓状態であんまり重いものはキッツいからなぁ。
卵が有れば玉子粥でも良かったんだが、卵がなぁ。養鶏とかをしないせいか、時々しか市場に出回らない上に、そう言うのって権力者の方に先に回っちまうんよね。
いや、俺も権力者の一端では有るんだがよ。流石に自国以外だと、そんなに権力は見せられんよ? 某子爵には思いっきり使ってみせたが。
まぁ、それはそれとして、……あれ? 卵が手に入らないと卵とじ系は全滅か? 参ったな。米一俵分しか買って無いから、そんなに多くはないんだよなぁ。ただ、これ以上の購入だと、流石になぁ。
ん? 『僕がんばるよ!』って、ケルブは良い子だね。だけど、重量の事だけじゃなく積載する場所の都合も有るんで、これ以上は流石に無理だから大丈夫だよ? 有難う。
そして娘さん達は流石に反省してくれ。てか、オールでゲームに熱中してて空腹で潰れる程度には色々と回復してるんな。
ただそれと比例してダメ人間化も進んでる様だが。
「取り敢えず、しばらく体調は整えて貰うが、それが終わったら、一旦街に繰り出すからな?」
「「「「「「ええ!」」」」」」
「ゲームに熱中してて倒れられる位に元気なら、もうかなり回復してるだろうさ。これ、決定事項だからな」
あからさま『面倒』って顔に張り付いてる娘さん達だが、決して怯えや恐怖と言った感情は浮かんでいない。やっぱり回復はしてる様だな。うん。逞しいやね。
後は、社会復帰の為のリハビリだけだな。
トラウマが無いってんなら、こう言うのって、多少強引に行った方が良いし。外に出るタイミングってのは自分で計ってると、ついズルズルと伸ばしがちになるから、そのまま引き籠っちまうってことだってあり得る。
確かに辛い経験をしたんだろうが、甘やかしてるだけってのも俺の性分じゃないからな。
ニートにはさせんよ! ニートには!!




