言われたからやっただけ
目の前で、ビクンビクンと痙攣するかの様に身を震わせ、しかし、力が入らないのか、ぐったりとした様子で横たわっている触手。
そんな俺達の事を聖武器達が怖れ慄く様に見ていた。
『【戦慄】私達が見ていたモノなど、所詮はマスターの力の一片でしか無かったと言う事なのですね』
『【驚愕】ボク達は見誤って居たのデス。そしてまだきっと、オーナーには後、2段階とかあるのデス』
ねぇよ。そもそも2段階って何がさ。
「とーるは底なし。わたしもチロチロが無かったらきっとやられている」
なん、だとっ…… 舌先でチロチロするのに、そんな意味があったのか!? いや、無いな、適当こいてるだけだなラミアーは。
そんな小芝居とは無関係にイブとティネッツエちゃんは、司祭さんに善哉っぽい物をご馳走になりながら、まったりとして居るんだがね。
今あった事をありのまま話すぜ! 触手に、全力で、プラーナを、注ぎ込んだ。
魂だなんだと言う括りにするから大事な感じになったが、そう仰々しく考えんでも良かったんよ。
魂魄理論で言えば、魂ってのは肉体を動かす為に宿る気で、魄は精神を動かす為の気な訳だ。そう言う風に考えてしまえば、魂を分けるって行為を俺は当たり前のようにやっている事になる。プラーナの注入がそうだ。
プラーナってのは、生命を動かす根源的なエネルギーな訳だから、つまり、“魂”と同じ物って事になる。
何と言うか、この“魂”を『=霊魂』と捉えると、自我やら何やらを含んだ、いわゆる霊体だとか精神体だとかなんだとか思えるが、肉体を動かす為のエネルギーだと捉えれば、それはつまり活動エネルギーって言うだけの事に過ぎない。
とは言え、枯渇すれば命の危険が有るのは変わりないし、実際、俺だって何度もぶっ倒れてる。
ただ、俺のプラーナが、常人とは桁違いに多いって事も確かな筈なんだ。
プラーナってのは、肉体を動かす為のエネルギーでもあるが、魔法なりなんなりを使う時に触媒として使われる物でもある。そして、その時に使われる量ってのは、それ程多くはないらしい。
あれ程の大魔法を使えるイブが、俺よりプラーナの保有量で言えば著しく少ないと言えば、その変換率の高さが理解できるだろうか?
いや、この場合、俺の方が著しく多いって言った方が正しいのか。
そもそもの話、俺は『プラーナ使い』らしいからな。エネルギーでしか無いものを凝縮して身体に纏える程の……
まぁ、その辺詳しく突っ込むと、色々大変な事になりそうな気がするんでスルーしとくが……エネルギー保存の法則とかなぁ。
ちょっと意識が遠くなったわ。自分の事なのに。出来る物は出来るんだからしょうがねぇよな。うん。
そんな訳で、『ここで言う魂=プラーナ』と定義したんで、さっそくやって遣った訳だな。
で、結果がこれ、いつも通りと言えばいつも通り。
と、どうやら復活したらしい触手がムクリと起き上がった。
「で、これで良いの……」
そこに居た全員が、『え?』って感じで触手を見る。
『いっぱい、だよぉ』
何が!! ってか、まぁ『お腹が』って事だよな? だよな?
いや、だって、そう言った触手、何か膨れてるんよ。何と言うか、その、触手を人間に見立てた場合のお腹の辺りが
え? 何コレ、どうなってんの?




