魂の
何かね、この司祭さんでも、触手……リストリアータの端末の言ってる事は断片的にしか分からんらしい。何でもそのお言葉を賜れるのは、長い時間の修行をした者だけで、そもそも司祭になる為には、そのお言葉を賜れないと成れんらしいんだわ。
いわゆる御神託ってぇヤツだな。
いや、そもそも触手、かなり断片的にしか言葉を発して無いぞ? いや、声に出てる訳じゃなかったか。これも一応、【念話】の様な物なんかね?
そしてそれは、才能の有るものにしか聞こえない、と。うっわぁ、メチャクチャいらない才能だわ。竜種の声が聞こえるだけの才能て。
『【推測】思念の波長の様な物があるのでしょう』
まぁ、魔力にも波長みたいなものが有るんだから、思念に波長が有っても可笑しかないんだけんどもよ。
……昔は魔力波長に合わせるの苦労したよなぁ。
ただ、それだけだって話なら、ラミアーがここまで反応する事は無いと思うんだが。
『分けて』ってのがその拒否反応の根拠か? そもそも何を分けろと?
「魂」
は? え? 誰の? ってかそれはもしかしなくても……
「とーるの」
やっぱりかぁ……え? この触手、無邪気そうな声でそんな、とんでもないもん要求してんの!?
俺が驚愕で慄いていると、ファティマとジャンヌが、触手に対し戦闘態勢を取る。いきなりモップと杖を構えた二人に、今度は司祭が慌てて後ずさった。
聖武器に武器を突きつけられた触手だったが、しかし、何の感情も浮かんでいないかの様にみよんみよんしている。
やはり、思考のソレが違い過ぎるのか、それとも何か思い違いをしてるのか……
俺は二人を手で制すると、触手に質問を投げかけた。
「お前が俺に『分けて』って言ったのは、俺の魂って事で正しいのか?」
『うん』
間髪入れずにかよ。てか、魂なんざ分け与える方法なんざ知らんし、知ってたとしても、くれてやる訳ねぇだろうが!!
「悪いが、俺は魂の分け方なんざ知らんし、分けるつもりも無いぞ」
『なんで?』
「いや、普通、魂なんざ分けたら死ぬだろう」
『なんで?』
……なぜなに期の子供かな? とは言え、俺も魂の事に関しちゃ、それ程詳しいって訳じゃない。ただ、一般常識的に魂が無くなれば死ぬって認識しているだけだ。
ただ、前世での様々な話を総合すれば、人間に魂が不可欠だって事が推測できる。
「魂ってのは、肉体に宿る気の事だろう? それを分けるって事は、魂の気の半分を……」
あれ? それってもしかして、出来るのかってか、むしろ俺は、いや俺だからこそソレが出来るのか?
「とーる?」
『【困惑】マスター?』
『【不安】オーナー?』
急に黙った俺に不安そうに三人が視線を寄こす。
俺の考えてる事が正しいんなら、何の問題も無い……ハズ。
「大丈夫だ、多分問題ない」
俺はそう言ってニヤリと笑った。




