もうどうなってるのやら
社の中に通された俺達は、やけに機嫌のよい司祭に歓待を受けている。いや、どうしてこうなった。
恐らく、俺達の事を『神子』だと勘違い……勘違いだよな。だって、ラミアーただのアルビノだし……いや、ラミアーの事を『神子』だとは言って無いんだが、その『神子』って事で思い当たるのが彼女だけって話でしかないんだけんどもよ、ただ、アルビノを『神子』扱いしてるのって光教会なんだよなぁ。
いや、ここでも同じって可能性も有るんだが、何かが引っ掛かるんよね。
特に、司祭がずっと俺の方を見てるって辺りと、例の触手が常に俺の後ろを着いてくる辺りが。
うん、室内って辺でラミアー、俺の肩から降りたんだけんどもよ。その後からそんな感じ。
触手な、あの後、また地面に引っ込んだ後、社ん中の井戸みたいな所から再び出現したんよ。
その姿、正にパックン……いや、何でも無い。
で、井戸から出てきた後は蔓を伸ばし伸ばし、俺の背後に……いったい何なのよ。
この世界の魔物って、前世のソレに類似が多いんだが、リストリアータって名称には全く類似する物が浮かばない。
吹上の洋名のストリアータが辛うじて似てるか?
「ささ、神子さま! ごゆるりとお寛ぎください!!」
「……」
そう言いつつ、俺にお茶を勧める司祭。お茶請けのクリーム餡白玉旨!! イブとティネッツエちゃんも美味しそうに頬張っている。いや、さっきまで団子とか食べてたよね? 君ら。
で、何か、ラミアーだけが、何か警戒してる感じか? 因みに犬達は外でお水と冷や飯を貰ってる。てか、ああ、やっぱ俺なんだ。神子って。
「いや、何で俺?」
「それは竜樹様が……」
そう言って司祭が、俺の後ろに佇んでる触手の方をチラリと見る。さっき、司祭さんが俺達の所に来たのも、この触手が何か言ったからっぽいな。
俺達の視線を受けた触手がみょんみょんしながら弾んだ声を出す。
『生命力、多い、強い!! スゴイ!!』
会話をして欲しい。
え~と? 俺の生命力が多くて強いから? で良いのか? 思考形態が違い過ぎるのか、ソレで、なぜ神子に成るんだか、オジサンには良く分からないよ。
「むう!!」
「どうした? ラミアー」
「とーるは、自分の!!」
触手の言葉を聞いたラミアーが唐突に俺の頭を抱いて、威嚇を始める。どうした? いきなり。ってか自分のて……
『わけて』
何を?
「むう!!」
更にヒートアップするラミアーを落ち着かせる為に、抱きついている背中をポンポンと叩く。
てか、さっきから意味が良く分からんのじゃが? 当事者なのに。
ラミアーが俺に抱きついた事に驚いたのか、イブとティネッツエちゃんがが目をパチクリとしながらこっちを見てる。
うん? 驚いたってだけって感じの表情じゃないな?
『【発言】失礼ながら、我々には何故ラミアーが憤っているのかが理解できません』
そりゃそうだ、俺だって良く分からん。
『【否定】そうじゃなくて、オーナーとラミアーは、何と会話してるのデス?』
あん? 何って……
「もしかして、お前等にはこの“触手”の言葉が聞こえてない?」
俺の言葉に、イブがブンブンと首を縦に振り、ティネッツエちゃんが『ふえぇ』と声を漏らす。
「おお!! やはり神子様には、竜樹様のお言葉がはっきりと聞こえておられるのですね!!」
「はい?」
いや、さっきアンタも、触手に言われたから俺達の所に来たみたいな事言ってたよね?
全体的に何言ってんのか分からんのじゃが!?




