竜? 神? 獣?
竜神様のお社ってのは、木造だけど結構な立派な造りの場所だった。何て言うか木造の教会を彷彿とさせるような?
そんなお社の前に、ちょっとした休息所やらお守りを売ってる所やらそんな感じの場所がチラホラと。
それとは別に、恐らくこの社の由来となった竜神リストリアータの壁画成らぬ石像と言うか由来説明の模型の様なものが……どこのミニチュア映画かと。それでも竜神像120cm位あるけど。
結構、精巧な出来で、イブとティネッツエちゃんも興味津々って感じで見てる。ラミアー、髪を引っ張らないでくれ、ちゃんと見に行くから。
まぁ、ミニチュア付属のストーリーを要約すると、昔この辺りは荒れ果てた荒野だったんだが、そこに竜神がご降臨あそばして雨を降らせて、森が出来ました。でも、その代わりに竜神は力を使い果たしてこの地に倒れ伏したのです。どっとはらい。みたいな。
この辺りの湖5つってのが、リストリアータの倒れ伏した跡なんだとか。おいおい、この湖に棲んでるんじゃなかったんかいって感じ。
まぁ、神話みたいなもんだしなぁ。って、言っても。その同じ神話時代のファティマさん達から見てどうなの? この話。
『【嘆息】気象を操れる生物兵器は存在しましたが、結局、使われたと言う話はありませんでしたので』
『【苦笑】一カ所の気象を変えちゃうと、バタフライエフェクト的に他の場所の気象バランスも崩れちゃうので、使うに使えなかったのデス』
って、こういう生き物に関しては否定しないんか。マジか。と言うかこのリストリアータのミニチュアがどうみてもビ〇ランテです。ありがとうございます。
こういう時、どんな反応して良いか分からないよ。なんかこう、エルダートレントだったとかって方がまだ納得感が強いんじゃが!?
湖に棲んでるとかって言うんでシーサーペントとか首長竜的な物を想像してたんだけんどもね、まさかの植物怪獣だったでござるよ。
そう言えば、アレも湖に出現してたっけか。
いや、それよりもこの世界に有るのか!? Gの細胞!! オキシジェンをデストロイする兵器が必要なんか!?
いや、まだ戦う羽目になるって決まった訳じゃない。
このミニチュア劇場的には既に倒れ伏してるはずなんじゃから、今まで生きてたってより、復活しました的な感じに成るはずだ。
もしかすると、この奇妙な気配がそうなのかもしれんが、もしかすれば残り香的な何かなのかも知れんし、判断を早まっちゃいけないわな。
ゾワッ……え?
一瞬の虚。それが何なのかと考える間もなく、地面が揺れた。
地震……じゃない!! この唐突な地面の揺れ方は、むしろ、大型重機でも移動してるソレに近い!!が、それよりも!!
「みんな大丈……」
俺が声をかける前にラミアーが頭にしがみ付く。ちょ、前が見えんぞ!! ラミアー!! てか、俺の腕にしがみ付いて来たのはティネッツエちゃんか?
『【警戒】ただの地震ではありませんね』
『【憮然】これでただの地震だったら大した物デス』
「ワンワン!!」
「アオン! ワン!!」
「ワオン! ワオン!!」
「ワンワン! ワオン!!」
聖武器達と犬達は、警戒しつつも冷静な様だ。
イブは、イブは大丈夫なのか!?
揺れが収まり、ってか小刻みに震えてるのはラミアーか? 大丈夫だと太腿を叩いてやると、バツが悪そうに体を起こした。
「トール、様!!」
不意にイブの声が俺を呼ぶ。ああ、大丈夫だったのかと彼女の方を見る。
…………
……
…
マジか、周囲の気配が強すぎて、全く気が付かんかったぞ? こんなん。
目の前の石畳を突き破ってニョッキしている触手。
あれだ、『リ〇ル・ショップ・オブ・ホラーズ』だ。もしくは『パッ〇ンフラワー』……
いや、うん。分かってた分かってた。コイツはそんなもんじゃねぇって。
俺は触手を一回見てから眉間を揉み、もう一回見てから、チラリとミニチュアの方を見る。
あ、うん。やっぱりな。うん。違ってて貰いたかったけど、間違いない。コイツだ。
ただし本体ではなく、その周囲で鎌首もたげてる、蔓の先が牙の生えたつぼみ状の触手。それでも俺なんか一飲み出来るであろう大きさの触手が、見下ろすかの様に俺の眼前に。
竜種か? 竜種なのか? 通常、出会う事ってか、伝説に聞くだけみたいな存在に、出会ったのこれで三度目よ!?




