さぁ、出発だ!!
結局、3日程かけて材料は集め終わったんだわ。ヘーゲンバッハ一行は、その後、俺のしたためた手紙を持って、遺跡街へと向かって行った。
「我が主も行かれてしまわれるのですね」
「『我が主』は止めれ。そらまぁな、ところで、どっかお勧めの街ってある?」
俺の質問に、ダンボースが頭を捻る。少しばかり思考を巡らせていた様だったが、すぐに口を開いた。
「は!! ここから近いのであればリストリアータか、パルナシオのカリアステロが良いかと!」
成程、分からん。そもそも、ここの大陸の地名なんざビタイチ知らんのだが、それに何故近い所を勧める。別に交易都市が俺の本拠地って訳じゃねぇんだが?
まぁ良い。お勧め聞いて答えたんだ。良いと思っての事だろう。ただ、名前聞いただけじゃ、どんな所か分からんのよ。
こう、コメディー系ラノベ的に『温泉郷オンセーン』とか『リゾート地トコナッツ』みたいな名称でも無ければ。
「具体的にはどんな所なん?」
「は!! リストリアータは湖の有る高級別荘地で、風光明媚な為、王都の貴族などが良く足を運びます。パルナシオのカリアステロは光教会の本拠地で……」
「よし、リストリアータに行こう」
何と言うかどっちもどっちな気もするが、よりにもよって“光教会”の本拠地とか。いや、光教会自体が悪いんじゃないとは思うんだが、どうしても、それを隠れ蓑にしてヤンチャやってた邪教集団の事がなぁ。それに、聖王国の事も有ってあまり良い印象が無いってのも有る。
いや、中にはレティシアみたいに良い信徒も居るってのは分かってるんだがね。
まぁ、兎も角、次の行先はリストリアータに決まりだ。人気の別荘地だってんなら、社交界の開かれるこの時期は人も少ないだろうし、美しい景色見て、癒されに行きましょう。
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ダンボース商会の従業員となったライザさん達とはここでお別れ。それでも6人程が俺達の旅に付き合う事になるんで、でっち上げてた荷馬車をバージョンアップして於いた。何せヘーゲンバッハ待ってる間、結構な時間があったし。
足回りはそのままに、箱自体はワンランクアップの上、内装は寝転んだままでもオッケーな仕様。クッションと座椅子なんかも特注して貰ったんで、座って乗ってるのも大丈夫。中央に机ってかちゃぶ台も固定できる様にして、そのちゃぶ台にはドリンクホルダーもついてるから、飲み食いもオッケー。ただ、移動しながらだと酔いそうな気もするが。前世では車中で飲み食いとか普通にしてたんだがなぁ。今世では道路事情的に厳しそうなんがな。
「床全面毛皮とか高くつきそうだったけど、思ったより安く上がったよな」
「ええ、毛皮の在庫がだぶついて居ましたので」
何かね、兎系の魔物の毛皮が大量に出たらしいよ。ダン何とかスってぇ商会から。そんな訳で、結構安く毛皮敷きの内装の馬車なんて物が作れたんだわ。
「うわ!! フワフワ!!」
「肌触りが気持ちいい!!」
「寝ころんだまま馬車にのれるとか最高!!」
とまぁ、娘さん達にも好評な様だ。荷馬車改め追加馬車はマイクロバスタイプって程じゃないが、結構大きめに作ってあるので、家の娘さん達も合流できる感じに。
ついでに、幾つか“モ○ポリー”とか“カ○ンの開拓”とか“人○”だとかのボードゲーム的な物も作ったんだが、ダンボースに『これを商品として売りに出してよいですか? 我が主』って聞かれたから、オッケー出しといた。
俺がオリジナルを作ったって訳じゃないが、多分版権とかこの世界だと無いし。
「さて、リストリアータに向かいますか!!」




