話はまとまった
「トール様におかれましては、ご機嫌よろしく……」
「そう言うの良いから」
交易都市にヘーゲンバッハが到着した。ギョロリとした目はそのままだが体格的には引き締まってがっしりとした感じになったな。
ネズミ従者の方も背筋が伸びたおかげで、以前の様な卑屈さが見えなくなった。
「あれ? 以前の護衛達は解雇したのか?」
「いや!! サー!! それは流石に酷いです!! サー!!」
「サー!! 俺達は心身ともに生まれ変わったのです!! サー!!」
「……冗談だよ」
いや、面影は残ってるけどさ、以前のコイツ等、マジで世紀末だったじゃん? それがお揃いの皮鎧着て、髪型もモヒカンだったりリーゼントだったり逆立ててたりしてたのが、全員サラサラストレートヘアになってるんだぜ? 別人かと思ったじゃん。てか、モヒカンはどうやって髪を増やしたのさ。
「ハハハ、全てはトール様のおかげです」
ヘーゲンバッハもヘーゲンバッハで、あのだみ声は何処行ったよ。てか、モヒカンの髪増えてんのは俺がやった事じゃねぇと思う。後、イブさん、激しく頷かなくて良いからね?
「とーるさま、すごいです!」
ティネッツエちゃん、その賞賛の意味が、俺には理解できないんだけれども!? まさか、俺に髪を生やす力があるとか、勘違いして無いよな!?
『【訂正】恐らく、素行不良だった者が、立ち直って見える事に対する賞賛だと思います。マスター』
……そう言えば、髪型に関しての事なんざ、一言も口には出してなかったな。失敗失敗。
******
ヘーゲンバッハとダンボースとの顔見せは無事に終わった。なんでか、二人して顔を合わせた途端に立ち上がって、ハグからの健闘をたたえ合うかの如く背を叩き合う。うん。まるで意味が分からん。
てか、俺以外の娘さん達が頷いてるのを見ると、彼女達には意味が分かってるらしいんだが、俺にはさっぱりなんじゃが!?
「ナカーマ」
『【苦笑】同じ経験を持つ者同士の絆と言った所でしょうか?』
「え? 何、同じ様にブートキャンプを乗り越えたから連帯感が生まれた、的な?」
『【訂正】むしろ、真に仕えるべき相手を見つけた者同士の連帯感デス!』
いや、何それ、確かに思考誘導的な事はしたが、別に『俺に仕えろ!』とか命令なんざしてないんだが?
『【満足】それが真なる支配者と言う者デス!!』
イブもティネッツエちゃんも頷かないで!! ってか、おまい、しょっちゅうそう言うこと言ってるが、俺にその気は無いかんな? のんべんだらりと面白おかしく、ちょっと刺激的に暮らせれば良いだけだからな? そこん所、間違っちゃ駄目なんだからね!!
「でも、冒険も好き」
「……否定はしない」
だって男の子だもの。
前世合わせりゃ立派なアラフィフだが、どんなに年とっても冒険心ってのは擦り切れないんよ。特に男は。
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「私の領地にも支店を出しましょう」
「おお!! それは有り難い!!」
何か二人の間で、そう言う風に話が纏ったらしい。ライザさん達は読み書きはまだまだだが、四則演算は何とか形になった。まぁ、掛け算なんかは丸暗記だし、表作ったからな。
最低限形に成ったんで、また、旅に戻ろうと思ったんだが、その前に待ったがかかった。ダンボースから。
「ヘーゲンバッハ子爵と同じ様に、連絡が付く物をいただきたく存じます」
「あー」
分からんでもないが、どうするかね。




