本格的な狩りは久々だってばよ
街道が魔物の支配領域を避けて通ってるってんのなら、街道を逸れれば、即ちそこは魔物の支配領域って訳で。
「アハハハハハハハ!! まるで虫けらの様じゃぁないかぁ!!」
「むー、【詠唱破棄】【ファイアボール】!!」
『【宣告】マスターのストレス発散の為の贄になりなさい!!』
『【嘆息】普通はこんなに大量に追い立てられないデス。オーナーの犬達もハンパ無いデス』
「お肉!!」
「たいりょうですね!! とーるさま!!」
「キュ!!」
「キュキュキュ!」
「キュホ! キュキュホ!!」
「キュキュッホ! キュホゥ!!」
「アウン!!」
「ワオンワオン!!」
「グルル!! アオーーーーン!!」
「バウバウ!!」
街道を外れて直ぐに出くわしたのが今追いかけてる角兎。アルミラージやジャッカロープともちょっと違う感じの。
二足歩行で石器を手にしてる辺り、知能が高いのか? まるでベストでも着込んでいるかのように上半身の毛皮が赤いんな。
ファティマ曰く『【解説】グレムリンですね』との事。上手い感じに丘の様な場所に巣を発見したんで追い込み漁宜しく犬達が追い立てての俺達が待ち伏せての殲滅。
俺的にはコイツ等、ピーターなラビットを彷彿させるんだわ。フハハハハ!! ミートパイにしてしんぜよう!!
旅から旅への道中、それも娘さんやらを守らなきゃいけんかった関係で、必要以上の狩りが出来なかったって事も有って、ここまで大々的な狩りは久しぶりだわ。
ジャンヌの言う通り、ちょっとストレスが溜まってたみたいだ。成程、そのせいでダンボースの時に、ちょっと、やり過ぎちゃったんだな。うん。全てはストレスの所為だったんだよぉ!! な、何だって~!! もしくは太陽の黒点が増えたから。
何はともあれ、少しはスッキリしたかな? 犬達も含めて。
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「ほう!! これは大量のグレムリン!! 流石は我が主!!」
「流石って、何で?」
“我が主”はやめれ。確かに大漁ではあるが、それは俺達皆の狩猟成果であって、俺だけの手柄って訳じゃない。それにゴブリンやらオークなんかもそれなりに狩ってる中で、グレムリンをピックアップして褒められるってのも良く分からん。
「は!! 僭越ながら説明させていただきますと、グレムリンは、特に馬車や、道具類等の制作された製品を好んで襲ってきますので、我々商人にとって天敵の様な魔物なのです!!」
「へぇ……」
ところ変われば品変わるってヤツか。家の大陸では見ない様な魔物だわ。前世でグレムリンって言えば、モフモフのアレから緑のあん畜生が成るアレか? 悪戯ってかその範疇越えてる殺意高い系の。元は機械系に悪戯する妖精みたいな物だったと思ったが。
第一次大戦中の飛行機乗りの天敵みたいなやつだったはずだけど、機械系に悪戯するって方向性は一緒なのか。
本当に魔物って変な方向に進化してるよな。なんで機械に悪戯とかしたがるんじゃろか? 知的好奇心? いや、そう言えば前世の兎も農機具とかダメにしたりしてたっけか。
まぁ、考えてても答えとか出ないしな、この辺にしとくか。
そう言や、こっちのゴブリン、毛が長く成ってたな。やっぱり基本的に気温が低いもんなぁ。防寒対策じゃろかねぇ?
それはそれとして、グレムリン、商品やら馬車をメインで襲って来るとなれば、確かに商人にとっては天敵の様な存在だわ。成程、ダンボースが流石だと言う訳だ。
一応、俺、コイツの後ろ盾って事になってる訳だからな。さっそく行動に移した様に周囲からは見えるだろう。全部偶然だけど。
ダンボースの性格が180°変化した様に見える事に関しては、戸惑いがありつつも『前よりはマシ』って事で受け入れられつつある様だ。
取り敢えず、ヘーゲンバッハとの顔合わせまではこの街に居なくちゃいけんので、娘さん達に文字や計算を教えつつも、交易都市の観光と周辺の地図製作&狩りに勤しむ事にした。
本来なら、こっちが一商人なんだから、俺達の方が挨拶をしに行かなきゃならんのだろうけど、ヘーゲンバッハの方が、俺に御足労願うのは申し訳ないとかって理屈で、交易都市の方に来ることになったんよ。
まぁ、何か用事のついでだと思うが……俺の所に来るってのがメインじゃねぇよな。
「取り敢えず、狩って来た物は、そっちで処理してくれて構わない」
「は!! 有り難き幸せ!!」
解体すれば、肉やら毛皮やらが手に入るんだ、売るなりなんなりして貰おう。
「ああ、ただ、一部はミートパイにしてくれ。食べたいんで」
「はは! かしこまりました我が主よ」
“我が主”は止めてくれ、マジで。




