使える物は取り敢えず使うスタンス
「そもそも無茶な返済計画で、貸した金を回収しようとするから無理が出るんだよ」
何と言うか、その上で全額回収しようとして払えん様な利子をつける辺りで、破綻してる気がするんよな。
それでも回収出来てるのは、それだけ無茶を重ねてるって話で、その為に破滅に追い込まれた人間も多いって事なんだわ。
確かに、この街の全住人から考えれば一部の人間かもしれないが、それでも確実に、破滅した人数分は街が得られるハズだった利益はへってるんよね。
短期的には金が入ってくるから、損をしてない様に思えるんだけども、長期で見れば損になる。
働ける人間が減るより増えた方が良い何て事は子供でもわかるだろうさ。
それに、物入りで借金を行った奴だって、ちゃんと返済ができるって経験が有れば、もしもの時は、また借りようって気にもなり易い。つまりはリピーター。
そうなれば、貸出の件数も増えるだろうし、利子の総額も増える。
「つまりは、上手く貸し出せって話さね」
「は!! このフットマン・ダンボース!! 目から鱗の思いです!!」
「あ、うん」
心底そう思ってるのは確かなんだろうが、本当に理解してそう思ってるのかが分かりにくくなったな。だってコイツ、俺に完全依存してる“イエスマン”に改造しちまった訳だし。
と言っても、決して思考能力まで奪ったって訳じゃないから、このままでも大丈夫だとは思うんだが、いまいち不安がぬぐえぬ。
成程、これが『過ぎたるは猶及ばざるが如し』と言う事か。まさか実地で学習する時がこようとは思わなんだわ。
取り敢えず、元のダンボースの時みたいに悪辣で自己中心的な小悪党よりは街の住人に優しくなったって事で納得しとくか。
ついでなんで、コイツもダイエットさせとこう。成人病で突然死されても嫌だし。
まぁ、そう言う訳で、ダンボースの事を洗のー……SETTOKUして、俺の下に加えた訳なんだが、表向きには俺とトラブった上で、和解からの俺が後ろ盾に収まったって体にした。基本ヘーゲンバッハ子爵とのつながりが有る人間って事になってるんだけどな。実際そうだし、その辺の事もこの間の手紙で確認済みなんよ。『ちょっと名前借りるけど良いか?』って。
二つ返事でオッケー貰ったわ。
その辺の事も含めてヘーゲンバッハの方にも連絡を入れる事にする。後で、コイツとヘーゲンバッハとの顔合わせもしとかんとな。
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「はい、と言う訳で、こちらがライザさん達に働いて貰うダンボース商会です」
「え? ちょ、ダンボースって、この辺りで一番大きい商会じゃない!!」
説明台詞頂きました。こっちで商売をさせようと思ってた娘さん達をダンボースに紹介する。本当は基盤作りの為にやらせようと思ってただけだから、こう言った商会に入れるってんなら、その方が手っ取り早いしなぁ。
決して、根回しが面倒になったって訳じゃないんだからね!
「で、でも、こう言う商会って他のお店とかからの紹介状が必要なんじゃ……」
「ははは、我が主のご紹介とあらば、御引き受けせぬ理由など有りませぬ」
ライザさんの困惑に、ダンボースが朗らかに答える。うん。綺麗なフットマン君だね。だが、『我が主』は止めて貰おうか。あくまで後ろ盾って事なんだから。
「あー、俺から押し込んどいてなんなんだけど、彼女達は出来るだけ裏方で頼む」
「は!! 承りました!!」
ダンボースは右手を胸に当て一礼する。
「……有り難いんだけど、大丈夫なの? ダンボース商会って、悪い噂も多い所なんだけど」
「ダイジョウブダヨ」
やっぱり、そう言う噂も聞いてるんな。まぁ、平気だと思うけど。キッチリSETTOKUしといたし。
「むー」
ライザが俺に内緒話する為に顔を近づけたからか、イブとバラキが俺達の間に身体を捻じ込んで来る。
「おっと、大丈夫だよ、お嬢ちゃん達、あたしゃ、アンタ達のトール様を取ったりしないからさ」
うーん。最近構ってやれて無かったからか、ちょっと拗ね気味だな。ひと段落付いたら、ちょっと一緒に狩りでも行くか。




