調教とか洗脳とか言われたり言われなかったり
結局、あの後、ラミアーの【魅了の魔眼】使って、ぶっ倒れるまでスクワットをさせたんよ。だって、お腹空いてたし。娘さん達にも色々と説明とかしなきゃいけんかったし。
交易都市だけあって宿の料理にもふんだんに香辛料が使われてて、大変おいしゅうございました。
破落戸達には執務室に『ダンボースさんはお楽しみプレイ中なんで、誰も近づけさせるな』って、言っとけと含んでおいたんで、どんなに声を荒げても従業員が近付く事は無かっただろうさ。その証拠に、案の定、スクワットでぶっ倒れた後、【魅了の魔眼】の効果は切れてたけど、足つって動けんくなってたわ。
今回は娘さん達のケアやら何やらも有るんで、家の娘達は宿の方へ。人慣らしも兼ねてな。俺自体は最低限戦えるし、ぶっちゃけ、教育にも悪いし。
やる事はたった一人相手のSETTOKUなんで、気儘に優雅に独身貴族の様相で。
恐怖と言う物を前提として、あらゆる事を命令され続ける。もしくはあらゆる行動に許可が必要となるって事を繰り返していると、そのストレスを緩和する為か、命じている相手に対し、親しみを抱く様に成るらしい。ストックホルム症候群だったか?
そしてもう一つ、人間を唐突に何時もの環境と、かけ離れた場所へと連れて行き、極度の緊張と緩和を繰り返させた後、強烈な体験をさせる事により、意識を望む方向へ動かす事が出来る。
あれだ、魔術結社の入会儀式とかでやるヤツ。
これって、大体同じ心理状況にさせられてるって捉えて良いと思うんだわ。その時に対象が一人だけなら尚依存度は高くなるぞ、と。
まぁ、何が言いたいかと言えば、人間、自己生存の為には意識すら入れ替えるよって話。
「お、お願いしますぅ。もう、もう限界ですぅ……」
「誰が、口を利いて良いと言った!! 黙って足を動かせ!! 安心しろ、ぶっ倒れたらまた回復してやるぞ!! クソッタレ!!」
「はひぃぃ!!」
棒で足元を叩くと、悲鳴を上げつつもダンボースが踏み台昇降を再開する。さて、これで何時間目かね? 少なくとも一昼夜は超えてるはずだ。何時もの様に、ぶっ倒れたらプラーナ強制注入するだけの簡単なお仕事。
破落戸達には借金取り以外の業務はいつも通りに続けてくれと言い渡し、ダンボースだけを連れて来てのSETTOKU作業。この店の地下とかにあるかな? とは思ってたんだが、やっぱあったわお楽しみ拷問部屋。と言っても器具の数はそれほど多くないがね。まぁ、前世の拷問史がひどすぎるってだけの話でもあるんだろうが、鞭と手かせ足かせ位なら、まだ健全ってレベルだし。
それは兎も角、今回はもう単純作業の繰り返し。何せ踏み台昇降。一歩上がって足を揃えて一歩下がって足を揃えるの繰り返し。
人間ね、本気で足を酷使したら座れなくなるんよ。何ちゅうか脚が曲がらない。その上つる確実に。
で、筋を伸ばそうとして脚を曲げようとすると、今度は太腿の後ろがつる。伸ばそうとしても曲げようとしても脚つると言う地獄。そうこうしてる内に膝の上辺りの筋もつって来る。脚がどんな状態でもつりっぱなしで、最早煉獄。
だが、そこは回復させたうえでワンモアセットで繰り返し。ただの踏み台昇降が自ら上がる刑の執行への第一歩に早変わり。
疲れ切って疲れ切った後も疲れ切り擦り切れるまで疲れさせる。まずはそこから。
最終的には『はい』と『イエス』しか言えない様にしてくれるわ!!
******
『【驚愕】今までのも結構な技術だと思っていましたが、更に上のレベルが有るとは考えが及んでいませんでしたマスター』
『【爆笑】元の面影がないデス!! ッパないデス!! さすがオーナー!!』
頼んでたお使いの返事が届いたのか、聖武器ズが顔を見せたのは5日後の事だった。その時に俺とダンボースを見てドン引きしてるが、俺だって、本意って訳じゃないんよ? うん。
まぁ、こんな技術が有る前世の世界がどうかと思うけどな。だが、使える物は親でも使うとです。実際、あまり時間も掛けられんかったから、急ピッチで仕上げた感はある。突貫だったから、ダンボースの個性を残してやるなんて余裕が無かった事については否めないがね。
「お前は何だ!!」
「は!! クソ虫でございます!!」
「お前生きている価値はあるか!!」
「は!! ございません!!」
「だが、死ぬ事は俺が許さん!!」
「は!! 有難う御座います!!」
うん。ちょっとやりすぎたかなとは思うが。反省はしない。




