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詭弁を潰す

「なんだぁ? その小僧はぁ」

「被害者だよ」


 俺の答えに、ピンと来ないのか、ダンボースが首を傾げる。


「借金か? そんなもん、自業自得だ!! ワシに手間を掛けさせるな!!」


 借金が自業自得だってのは、激しく同意だがね。


「ハゲどう」


 うん、ラミアー。ハゲどう。ハゲどう。分かったが……何故スラングが通じるんだ?

 何か今更な疑問に首を傾げていると、その声でラミアーの存在に気が付いたダンボースが目を剝いた。 


「ん? おぉ!! 随分と良い女じゃないか!! 何だ、その女供を献上する代わりに、待ってくれと言う申し込みだったのか? それなら、考えてやらんでもない!」


 何言ってんだ? コイツ。何と言うか、全てを自分の都合のいい様に解釈しやがるな。ラミアー、俺の後ろの隠れても隠れ切れてないからな? 

 てか、話に聞いてた限りだと、豪商なんだよな? あれか? もしかして『三代目は身上を潰す』とかって奴か?


『【嘆息】話も聞かずに妄想垂れ流しとか、大丈夫なんでしょうか? 商人として』

『【軽蔑】ペットは主人に似るって言うデス。上に弱くて下に強い所はそっくりデス』

「とーる、()()気持ち悪い」


 ペットて。まぁ飼い主って意味ではそうなんだろうけんどもよ。そして、指をさすのは止めなさい。ラミアー。

 なんかギトギトギラギラネッチョリって感じで、イブも眉を顰めてるし、ティネッツエちゃんも自身の姿を隠す様に、後ろで身を竦めている。あれだな、淫欲に塗れた瞳とか、ゴモリーを彷彿とさせるやね。男女逆だが。

 さて、いい加減腹も減って来たし、宿で待ってる娘さん達も居る。とっとと片付けっちまうとするか。


「違うわ。むしろ俺達は迷惑料の徴収に来たんだよ」

「はぁ? 『迷惑料』だとぉ!!」

「そうだよ、街を歩いてただけで、いきなり因縁吹っ掛けられた挙句、家の娘達にちょっかい掛けられそうになったんだからな」


 俺の言葉に、面倒だなって思ってる事を隠そうともせずに、つまらなさそうに口を開いた。


「はぁ? それがどうしたと言うんだ? お前らの様な下級市民が、このワシの手を煩わせる方がよっぽどの迷惑だ」


 ダンボースの言葉で、家の娘さん達が殺気立つ。ってか、ホント、何でおまいらそんなに好戦的なのよ。俺は手で落ち着けとゼスチャーし、ダンボースの方に向き合う。


「ふうん? 下級市民が上級市民の手を煩わさせる方がよっぽど迷惑ってのね。それってつまり、より上の立場の都合の方が優先されるって認識でオッケー?」

「お、おっけぇ? 良く分からんがそう言う事だ! 理解したのならとっとと……」

()は、トール・オーサキ。国王から辺境伯の爵位を賜った者だ」

「は?」


 俺の口上で、ダンボースの動きが止まる。俺は懐から、国王様(セルヴィスおじさん)から貰った短剣を出して見せた。

 流石は腐っても商人って所だろうな、俺の取り出した短剣が、途方もない価値のある物だと言う事が理解できたらしい。その上、この世界で、貴族を騙るってのは犯罪だ。この大陸ってか、少なくともこの国は、貴族って物の権力が強いみたいだからな。その認識も高いだろう。


「もし疑うと言うのであればヘーゲンバッハ子爵に訊ねると良い。快く証言してくれるであろう」


 俺の言葉で、ダンボースがプルプルってかタプンタプンと頬肉を揺らす。


「ワ、ワシの知った事ではない!! そんな物!!」

「……コイツ等、お前の部下なんだよな? 部下の不始末は上司の責任ってのは当たり前の事だろ?」

「知らん知らん!! ソイツ等が迷惑をかけたってのなら、そいつ等の責任だ!! そ、そうだ!! ソイツ等はクビだ!! ワシとは関係なんぞない!!」


 うわ、あっさり切り捨てやがった。破落戸共もここまで簡単にクビを切られるとは思って無かったのか、唖然とした表情になる。


『【推察】恐らく、マスターの事は貴族だと思って無かったのでしょう。その為、自分がどれ程危険な事をしたのか今更ながら思い知ったのだと思います』


 あ、そっちの方ね。まぁ、知ったこっちゃないけど。


「あのな? そんな道理が通ると思うのか? たとえ、今クビを切ったとしたって、俺に不敬を働いたのはお前の部下だったときの話だろ?」

「ち、違う!! 部下なんかじゃない!! 知らん!! そんな奴等は知らん!! ワシは無関係だ!!」


 コロコロと良く言い分が変わるなぁ。だがね、そんな理屈、知ったこっちゃないんだよ。


「だが、お前ん所の店員も、街の人間も、コイツ等がお前の部下だって認識してたんだ。それって、周囲の人間達は、コイツ等がお前の部下だって思ってたって事だろ? 今さら部下じゃなかったって言っても、説得力なんざ無いだろうよ。第一、ここまで周囲の認識がコイツ等がお前の部下だって事になってるのに、それすら、知らなかったってのは無理があるし、もし本当に知らなかったってんなら、お前。相当に商人として無能って事に成んだが?」

「うっぐっ」


 ダンボースは、額に汗をびっしょりかきながら、何とかして責任を逃れようと、言い訳を探して目をキョロキョロとさせる。まぁ、見つからんだろうがね。


 さて、責任を取る時間だぜ? ダンボースさんよ。

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