理解はした同情はしない
このまま通り沿いで騒いでると悪目立ちするからと、一旦オッサンの家へ。
「わ、わたし、お母さんの様子見てきます!」
俺達に水を勧めた後、女の子はそう言って、奥の部屋に引っ込んで行った。破落戸共が口を開こうとする度に、ミカ達に頭でどつかれ、踏みつけられを繰り返している内に、唸られると口をつぐむ様になった。ああ、学習できるんだ。破落戸なのに。
「で、コイツ等何?」
「……」
俺の質問に、最初は言い渋ってたオッサンだったが、俺が引かぬ媚ぬ省みぬのだと分かると、ダンボースについて、少しづつ話してくれた。
オッサンの話をまとめると、まぁ予想通りと言うか、何と言うか。
ダンボースってのは、この街でブイブイ言ってる豪商で、その財力に物言わせて好き勝手やってるってぇ輩なんだそうだ。
この街を治めてるのは王家から来てる代官で、袖の下貰って御目溢ししてるらしい。
「へっへっへ、ビビったか? オレ等に手を出したらどんな目に遭うか……」
「グルルルル」
「ひっ!!」
自分達が優勢そうだと思ったとたんに口を開くか。あんまり学習はしてなかった様だ。
「ミカ、良いよ。 あのな、俺達はそもそも旅人だぞ? こっちはそんなん、街出た時点で関わり合いなんざなくなるっちゅうの」
「な!」
「え!」
なぜ驚く。そしてオッサンも。
「この街を出たって、追手を差し向ける事だって!!」
「つまり、おまいらが報告に帰れないようにすれば良いって事だな?」
「な!」
なぜ驚く。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!! そんな事されたら、こいつらが最後に来たウチに被害が!!」
「そもそも、そんな悪評がある所に金を借りるなや」
「そ、それは!!」
多分、分かってるけど、他から借りられなくてとか、そんな感じなんだろうけどさ。
だとしても方法なんざ幾らでも有るだろう。たとえ合法の範囲だったとしても手段さえ選ばなければな。
だいたいそう言う時ってのは。自身のプライドだったり心証だったりってのが邪魔してるんよね。つまりは『出来る、けど、やりたくない』って言う。
俺だって、無一文からやって来てるんだからな。確かにチート気味な身体能力があったし、幸運にも恵まれちゃいるが、その過程で結構死にかかっても居るんよ? 俺。
無知だった事を差し引いたとしても、安全マージンを割と取る様にしてるのになぁ。即死級事象に偶発的遭遇しまくるって何でじゃ!
まぁ、兎も角、最悪、もっと暮らしやすい所に引っ越すって手段だって有っただろうにさ。農民は、領主の財産の一部でもあるから、あまり勝手に移動とかできんらしいが、オッサン冒険者だろ? 今は定住してるったって、周囲の環境次第で余所に行けないってこたぁ無い筈なんだ。
裏事情を知ったからってのもあるが、あの遺跡街なら、もっと楽に稼げると思うし。
にも拘らずこんな事になってるって、ぶっちゃけ、恥や外聞を投げ捨てられる程の必死さが、足りてねぇって事だろ。
「ここに残るのを決めたのはアンタで、その結果がこれなんだから、後は自分で頑張れや。俺はスルーさせて貰うが」
悔しそうな顔してたって借金が無くなるって訳じゃない。片足に怪我してようが、出来る仕事ってのも探がしゃあるだろうさね。
取り合えす、こっちはこっちで情報を仕入れる所から始めるか。
「……ラミアー、頼めるか?」
「いーよー。じゃ。貰っとくねぇ」
手っ取り早くやりたい時は便利だよなぁラミアーの【魅了の魔眼】。どうせ操られるのは破落戸だし、心も痛まん。
「こっちに集中」
「悪かったて」
いや、そっちが勝手にプラーナ吸ってくのに、俺に何を集中しろと? って、うぉおい!! だから首筋を舌先で嘗めるなや!! ゾワッとするんや!! ゾワッとぉ!!




