交易都市を見に行こう
マンガって物がまぁ、この世界には無かったんで、お試しって事で描いてみた訳なんだ4コマ漫画を。前世では手慰み程度にはイラストとか描いてた訳だし、幸い、家には紙と鉛筆は売るほどあるからな。
犬達は、さして絵の方には興味が惹かれないらしく、宿の部屋の中でゴロゴロしてる。
ミカは俺の脚に擦り寄ってるし、バラキは『撫でれ!!』とばかりに腹を見せてるが。まぁ、もふるけど。
…………
………
……
うん。取り敢えず、俺に4コマ漫画の才能がない事は分かった。
可笑しいぁ。ネタ思い付いた時は面白いと思ったんだがなぁ。オチがタカアシガニだったのが悪かったんかなぁ?
「す、凄い、です」
……それは4コマ漫画見て出る感想じゃないなぁ。イブさんや。フンスと鼻息を荒くしている所を見ると、本気で『凄い』と思ってくれて居るのは確かなんだが、その『凄い』が一体どこに掛ってるのかって言うね。
一応、娘さん等とかにも見せてみたんだけれど、曖昧な苦笑しか貰えんかったわ。多分内容的には可もなく不可も無くだと思うんだが、単純にマンガって物を『読む』って技術がないんだと思う。
そういえば、マンガを『読める』ってのも、ある種のお約束を知っていないと分からんのじゃったわ。
「えが、かわいいとおもいます!!」
うん、やっぱり読み方が分からないっぽいな。それでも、分からないなら分からないなりに良い所を見つけてくれようとする、その優しさが、逆に心に痛いんだぁ。むしろ鳥獣戯画の方が分かり易かったやも知れぬ。
『【称賛】武道を嗜む者が、絵にも通ずると言う事は、ままある事ですが、マスターも文武に通じているのですね』
『【意外】まさかの不条理ナンセンスコメディーそれも萌え絵でデス。これはこれで良いとは思うデス』
無理に褒めなくても良いのよファティマ。そして誰も不条理ナンセンスコメディーなんて描いてないんだジャンヌ。アニメ柄じゃなく劇画タッチの方が良かったか? でもそれだとタカアシガニがなぁ……
「なかーま」
何が!?
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まぁ、俺の心がゴリゴリと削られた4コマの事は放り投げておくとして、リサーチがてら街中を散策。品物が集まるのは同じって言っても、やはり港町とは雰囲気が違うやね。
門を入ってすぐの所は屋台やら露天商やらが多かったが、街中には普通の食い物屋なんかも増えてきた。
それと同じくらい増えて来たのが鉱石を扱う店。宝石の原石だったり、ゴロッとした何かの石だったり。
鉱山として掘削してるんなら、こんな風に売ってるって事は無いだろうから、山で拾って売ってるんかね? 宿に戻ったらライザさんに訊ねてみよう。この辺りに詳しいみたいだし。
だいぶ回復はしてるし、道中は気丈に振舞ってはいたけど、やはり人ごみの中を歩くのはまだ辛いらしく、ライザさんを始めとした娘さん達は、ウリとガブリを護衛代わりに残した宿の方で休んで貰っている。ここで無理したって良い結果なんて得られんだろうからな。
出店計画は、もう少し娘さん達が回復してからの方が良いか。
取り敢えずこの街に来るまでの道中で気が付いたのは、基本的にこの辺りは険しい山が多く、必然、山を登る様な道を避け、谷合に近い場所か、川の辺の道を通る事が多いって事だ。
遺跡の街でも出会ったが、貴族って奴が存在してるし、その貴族連中が領地を守ってるはずなんだが、こう、山地が多いせいなのか、守備を固めているのは都市近郊だけで、街道全てに手が回ってるって訳じゃないっぽい。
にも拘らず魔物に殆ど襲われなかったのは、それぞれの魔物が自身の領域から出て来ないからだろう。
多分、街道の方も、それを意識して通してると思う。やたらと曲がりくねってるのもそれが理由だろうさね。
で、無ければ、キマイラん時みたいに即座に襲われてるはずだし。
それはさて置き、どうもこの辺りは内陸の山岳地帯で、海からは遠い様な感じだな。売っている魚も川魚ばっかりだし、あまり大きな個体も見当たらない。今は冬って事を考えると極点に近いんかね? その割には雪とか降ってないけど。もしかしたら、逆の半球に位置していて、これでも夏なのかもしれんな。
あー、星座ってか、星の並びを確認しとくべきだったな。自分達の領地に居る間に。海に出るって可能性とか考えてなかったから気にもしてなかったけど、大陸間を移動するって事を考えれば、現在位置の指針になる物とか考えとくべきだったわ。GPSとかないんだし。星の位置のずれとかで、大体どのあたりの経度緯度かは出せる筈なんだし。
今後の課題だな。うん。




