交易都市とでも言うんだろう
流石に交通の要所ってだけの事はあって、街中に人が多い。人が多いって事は人の目が多いって事でもあって、そりゃまぁ、俺達のキャンピングカーみたいな物は目立つやね。ましてや、それを引いてるのがゴーレム犬って事になりゃ、その注目度は倍率ドンってな感じ。
『【感心】街に入る前に対策をしておいて正解でしたね。マスター』
「だな」
街の外までは道案内をしてくれていたライザさんも、今は幌馬車の方に引っ込んで居る。
さっき言ってた対策ってのは、その幌馬車の事だ。街に入る前に、荷馬車に幌を被せたんよ。まぁ、俺達は色々な意味で目立つって自覚はあるからな。その上で、彼女達にまで注目が行けば、対人恐怖症ってか男性恐怖症気味の彼女達のトラウマを刺激しかねんからな。
流石に加工が苦手とか言ってられんかったわ。
「ひと、凄い」
「ん」
何時もの様に俺の頭に抱きついて圧し掛かってるラミアーと、ライザさんと入れ代わる様に俺の隣に座ったイブが、そう零した様に、人の数がかなり多い。それこそ、最初に行った遺跡の街とは比べ物にならんくらいに。
街道が集まり、商人が行き交うって事はそれなりに珍しい商品も集まるって事でもあるんな。
やはりそこは好奇心が勝るのか、ティネッツエちゃんも御者台に顔を出すと、イブと一緒に屋台で売られている品をキョロキョロと見回しながら目をキラキラさせている。
特にティネッツエちゃん、これが初めての“冒険旅行”だからな。目に映る全てが新鮮だろうさね。
いや、俺とて新大陸は初めてなんだがね。年取るとこう、余りはしゃぎ過ぎるのも……
「ハゲどう」
って、いや、ラミアー、お前の居た遺跡の“扉”ではあるが、お前が捕まってから数百年は経ってるはずだし、そもそもここに来た事あるんか?
「そうだった」
どゆこと? 来た事あるの? 無いの? ってか俺も今は子供だったわ。はしゃいでも不自然じゃなかったわ!
それはさて置き、一先ず宿を探さにゃならんのだが、基本、犬達も入れるような場所の方が好ましいんだよな。
最悪、犬達は馬小屋とかでも大丈夫だろうが、何と無く俺が嫌なんだわ。それに多分、娘さんの中にはアニマルセラピーが、まだ必要な子とか居るし。
そこそこ大きめの宿なら、追加料金次第では犬達も一緒に泊れるとは思う。実際、貴族とかの中には自分の飼っている犬も泊まらせる奴とかも居る訳だし。
例えば、テイマーみたいなジョブとかが有るんだったら、動物も一緒にって宿とかもあると思うんだが、そう言えば、聞いた事ねぇな、テイマー。
その割には俺はライダーだとか犬使いだとか言われてる訳だが。
そんな風に宿を探しつつ、大通り付近の屋台なんかを見てると、結構な珍品なんかが並んでるのな。特に木製だったり焼き物だったりする、用途不明のオブジェクト。
「トール、様、あれ、何?」
そう言ってイブが指さした品物を見る。え? なに、ドリル? みたいな?
……いや、ホントなんだろこれ? 置物? 縁起物? 民芸品? もしかして実用品? だとしても使い方が全く思い浮かばん。
「分からん」
「むう」
何でもは知らないのよ? 知ってる物だけしかよう分からんて。
いや、謎品はこの際置いとこうよ。ほら向こうに可愛い……かは分からない毛玉とか有るし。って、これも良く分からん謎品だったわ!!
ホント、多いな! 謎品!!
その他は毛皮、織物が多い印象。まぁ、交易品って位だから、結構な距離を運んで来たんだろう。つまりは日持ちする品が目立ってるって感じだな。ここで仕入れてまた別の所に持ってって売るって感じか? 良く分からんな。情報が足りん。うん。リサーチ必要。
まぁ、人が多いからって、ここで店を出すって必要もない訳だし、観光がてら見回るって位の心づもりでいた方が良さそうだな。
何せ、俺達の旅はまだ始まったばかりなんだから。
******
って、ちょっと打ち切りエンドみたいな事言っちまったな。『まだちょこっとだけ続くんじゃよ』って、言ってからが長かったマンガとか有ったな。前世で。あ、マンガとか描かせよう誰かに。てか、おまいら描けんか? マンガとか。
『【謝罪】流石にメイド道にマンガを描くと言う技能は有りませんでした。絵画なら兎も角』
『【残念】マンガが描ける程ウイットに富んだ思考はしてないデス』
充分面白だぞ? おまいら。
『【何故】そんな!! こんなに真面目にメイド道をひた走っているだけですのに!!』
『【心外】酷い言い様なのデス!! 謝罪を要求するデス!! 具体的には、魔法名【インフィニティー・ゼロ】を思う存分試させるデス』
そう言うとこだぞ? 聖武器さん達よぉ。おまいらの本分は何処行った!




