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旅は道連れ、世は情け

 ファティマの見立てでは取り敢えず彼女達は、一先ず()()()だそうだ。精神的にも肉体的にも。


『【報告】確かに衰弱は著しいですが、ちゃんと栄養を取って安静にして居れば回復するでしょう。それに、彼女達の中に身籠っていた者は居ませんでした』

「そうか」


 取り敢えず、()()な事には成らずにホッとはする。まぁ、彼女達の心情を慮れば、そうも言ってはいられないんだがね。


『【報告】お風呂入れて来たデス』

「磨ききった。心身ともに」

「ああ、有難う」

「お礼、ちょうだい?」

「……はいはい」


 よくよく考えたら、別に首筋晒さんでも良いんじゃね?って思ったんよ。だって俺。指先とかにもプラーナ出せるんだし。ラミアーが俺の首筋をチロチロやる。やめてくんねぇかねぇ。マジでぞわっとするんだよソレ。


 ******


「……あったかい」

「うっ、うう……」

「ぐっえっぐっ……」


 助け出され、あったかいお湯につかり、その間にイブとティネッツエちゃんが作ったシチューを口にした後、思わずと言った感じで涙を流す娘さん達。


「ミカ、バラキ、ウリ、ガブリ、頼めるか?」

「オン」

「アオン」

「ワウン」

「わん」


 犬達が娘さん等に寄り添うと、イブもラミアーも、ファティマとジャンヌも、黙って彼女達の肩を抱いて慰める。

 流石にティネッツエちゃんには荷が重いんで、俺の手伝いをして貰う。まぁ、作った荷台をなるべく居心地よく使える様に布を敷き詰めたりとかな。


 そんな事をしている内に娘さん達の嗚咽は聞こえなくなった。1時間足らずくらいだろうか?


 それでも彼女達の精神が安定するのが早くて助かったわ。案外タフなのか、そう見せてるだけなのか。トラウマには成らんと良いんだがね。


「さて、悪いんだが、俺達もいつまでもここに居るって訳にゃいかんのよ。だから……」

「わたしたちも連れて行ってください」


 いつまでも足止めを喰らってる訳にもいかんので、俺が出発を告げると、おそらく娘さん達の中で最年長らしき女性が、そう言って来た。まぁ、そう成るだろうとは思ってた。ってか、娘さん達を残して行こうとか思っても無かったんだが……先に言われちまったな。


「かまわんよ、元々、それぞれの村までは送ろうと思ってたし」

「いえ、村には戻りません」

「……全員が、か?」

「はい」


 聞けば、住んでいた村を襲われ帰る場所の無くなった者や、村は現存してはいる者も、住んでいた場所には帰りたくないんだとか。村が現存してるって事は、恐らくは差し出されたかしたんだろうし、暴力で連れ去られたんだとしても、そんな彼女達を見る村の人達の目は、余り居心地の良い物には成らんだろうからな。まぁ、気持ちは理解出来んでもない。


「そうか、俺達は色々と町なんかを回ろうと思ってる。もし、残りたいって場所が見つかったら言ってくれ」

「ありがとうございます」


 そうなると選択肢としては二つ。()()()()()新しい街で、新しく生活を始めるか、俺達の街に来るか。もっとも、俺達が別の大陸から来てるなんて事、話してはいないし、そっちは、最終的に俺達に付いてきたいと言う者がいた場合だな。


 俺は御者台に登ると、ケルブに発進の合図をする。ケルブも気を使っているのか、ゆっくりとキャンピングカーは走り出した。

 チラリと後ろに接続した荷台を見る。本当は幌も張りたかったんだが、そこまでの技術は俺には無かったわ。木材の加工がなぁ。

 荷台の娘さん達は、ぼおっと空を眺める者、蹲って身動ぎ一つしない者、バラキを抱きしめて離さない者と様々だ。

 まぁ、彼女達も色々あったんだ。今はゆっくりと考える時間も必要だろうし、そう言った時間を作る為にも、この旅の合間ってのは丁度良いさね。


 ******


 彼女達が、新しい街で生活を始めるにしたって、先立つ物ってのが必要だ。その辺はダンジョンで融通してもらった物を換金して来てあるんで、多少余裕はあるから、それを渡しても良いんだが、だとしてもそのまま渡してって事に成ると、ソレを食い潰すだけになるだろう事は予想に難くない。

 これは決して彼女達の能力が無いって話ではなく、単純に、女だけ、それも、それなりに年齢が上の人間だけで金を稼ごうとすると、その選択肢があまりにも少ないからだ。

 見た所、全員が20才そこそこではあるが、基本、結婚する年齢の若いこの世界で、20才を超えた女性が働きに出ようなんてのは結構な訳アリって事になるし、そう成ればどうしても足元を見られるだろう。


 本当はロボ監督の居た遺跡(ダンジョン)前拠点辺りが適当ではあるんだろうが、あの周辺、この娘さん達の住んでた集落も近かった事もあって、変に顔見知りと出会っちまうと厄介なんで、諦めた。


 うん、まぁ、こっちの大陸に残るって娘さん達に何やらせようかと言えば、家のってか、俺の商会をでっち上げて、そこで売り子さんをやって貰おうかとね。

 まぁ、この大陸での拠点を作りたいとか思った訳だ。いや、こっちの大陸に残りたいって奴が居たらの話だがね。


『【確認】そうなると、この大陸の商業のシステムも調べなければいけませんね。マスター』

「そうだな。その辺も頼めるか? 流石にこっちの方にまでルールールーん所の諜報員は居ないだろうしさ。こんな事なら何人か連れて来れば良かったか?」

『【苦笑】そうなるとマスターの楽しみにしていた“冒険”には成らないと思いますが?』


 だよねぇ。

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