悪いと思ってるなら態度で示そうよ
「こ、この度はワタクシ共の勘違いで、ご迷惑をおかけして、大変申し訳なく……」
平民に対して傲慢な分、その身分差が自分の所に来ると、途端に弱くなるよな。一応他国の貴族だから、『そんなモン知ったこっちゃねぇ』とかって突っぱねる事も出来る筈なんだけど、流石に外交的に他国の貴族に喧嘩売っちゃ不味いと思ったのか、それとも単に自分より上の爵位だから謙ってるのか……何も考えずに『爵位が上だからヤバイ』とか思ってるだけな気もするな。
まぁ良いけど。
だいたい、勘違いってのはどう言う勘違いの事なんじゃろな? 俺の事を平民だと思ってたから失礼な態度を取ったって事なのか。だとしても、そもそも、俺のキャンピングカーを買いたいって事自体から無茶ぶりだった筈なんだ。
馬車を売っている店に置いてある……あのキャンピングカーもこの際、馬車って事にしとくが、馬車以外は、基本持ち主が居て、使用している馬車の筈だろ? それを売ってくれってのは、その代わりにお前は既存の馬車を再び買えって事な訳だ。
確かに既に売られてる馬車ってのもあるが、そう言うのは普通、旅商人が使うような荷馬車や幌馬車とかで、俺達が使ってる様な箱形の馬車っての“ワケあり”で売りに出された様な物でなければ、オーダーメイドってのが常識な訳なんよ。
つまり、人が使ってる馬車を欲しがるって事は、荷馬車や幌馬車、ワケあり中古品に買い替えるか、新しい馬車が出来上がるまで、足止めされるかの二択になる訳なんよね。
もうその時点で失礼だし常識ハズレな訳なんだが……
まぁ、これ以上は過干渉だろうから、俺が被害を受けなかったって事で“良し”としなくちゃいけんか。正直、こう言う権力笠に着た輩って好きじゃ無いんじゃがね。
だとしてもどこぞのご老公宜しく『やっておしまい』……いやこれ、別の悪女だったわ。戻して、『懲らしめて御上げなさい』って訳にゃいかんからなぁ。そもそも、あの副将軍海外で活動してないし。
多分おおよそ、俺が居なくなりゃ、同じ事繰り返すんだろうなぁって思うんだが、流石に他国の貴族に、これ以上手を出すのもなって言うジレンマ。
『【平気】マスター主催のブートキャンプなら、心の底からデトックス!!』
『【微笑】もし、目撃される事を心配しているんだったら、大丈夫デェス!! どうにでも出来る場所の心当たりはバッチリデェス!!』
「……おまいら何考えてる?」
俺の問いに答えずほくそ笑む聖武器二人に、俺は『やっぱ教育間違ったかなぁ』とか思った訳で……
******
ヒキガエルが……あ、違った。ヘーゲンバッハ子爵が疲れ切ってべしゃりと潰れた瞬間に、即座に踏みつけ&強制プラーナ注入。ガブリが『ヒャンヒャン』と子爵の耳元でがなり立ててるんは、多分、『どうしたその様は!!』とかって叱責してるんだろう。そんな感じがする。そしてそれにはハゲ同。
「ぁひょえぇ!!」
「ほらほら、回復しただろう? してねぇとは言わせんよ? 回復したなら、もうワンセット、行って、来いやあぁ!!」
「はひぃ!!」
のたのたと起き上がり、再びアスレチックに戻って行くヘーゲンバッハ子爵を見ながら嘆息をする。ミカ、バラキ、ウリに追い立てられてる世紀末共から子爵、既に10周近く周回遅れだかんね? ネズミ従者が5周くらい遅れてるのか? つまりは子爵がダントツの最下位。
貴族だからと言って戦働きが得意って事ぁねぇんだろうけんどもよ。だとしても動けなさすぎだろう。
まぁ、あの体型ならさもありなんだが。
今回は、膝を悪くする心配なく鍛えられるんだから、感謝されこそすれ恨まれる筋合いはないな、うん。
『【流石】安定のサディスティック』
『【感服】ボク達には出来ない事をいとも簡単にやってのけるデス!! そこにシビレるデス!! 憧れるっデスウゥゥ!!』
「いっぱい、運動、する、と、気持ちいい、よ?」
「あせをかくと、すがすがしいですよね? いぶねーさま!」
ファティマとジャンヌが不穏当な事ぬかしやがる。それは絶対、風評被害だこの野郎!!
イブとティネッツエちゃんはそのまま育ってください。
そしてラミアーは、なぜ俺の肩に乗っている? 重くは無いが。
『うわぁ、結構ドン引きできますよ。何です、その鬼畜っぷり』
「あ、ロボ監督、遺跡貸してくれてありがとう」
『いえいえ、せっかく作ったアスレチックコース、試運転はしたかったんで良いんですけど、私の質問全スルーですか』
だからそれ、風評被害だから。別に俺に加虐趣味があるって訳じゃ無い。そこまでする必要があるからやってるだけだし、それに……
「……敵に、容赦する必要ってある?」
『上に立つ者としての寛容さは必要だと思うよ?』
「それは、後々に“味方になる可能性がある”場合じゃね?」
敵ってのはつまり完全に相容れない相手って事だろ?
「同じ方向を向けるんなら、そりゃ、“敵”じゃねぇだろ」
『ああ、貴方の価値観は、陣営だとか国だとかの枠組みとは外れてるんだね。成程、納得した』
納得して貰えて結構だわ。結局、俺と敵対するかどうかってのは、その主義主張に多少なり理解して納得できるかどうかでしかないんだからさ。
その上で、周囲の空気を読んで、どの程度で納めるかって事でしかない。徹底的に出来るってんなら、そりゃ、徹底的にやるさね。
今みたいにな。




