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偉いはずなのに教育が足りてないってどうよ?

 何ちゅうかね、ハーゲンマッパ改めヘーゲンバッハ子爵ってのの部屋に案内されたわけだけんどもよ。何かステレオタイプが詰まった傲慢貴族ってか悪役子爵ってか。

 そもそも従者が他人を見下した感じの鼠顔の小男って所からしてテンプレートだったうえに、世紀末な感じの、何かコイツ等だけポストアポカリプスっぽい護衛達って言うね。

 もはや、こっちを値踏みするかの様なってか、確実に値踏みしつつも下卑た想像満載なんだろうなって言う視線とか、あまりにそれらしすぎて逆に感動を覚えたわ。


「ほほう? ほう、うむ、成程……」


 声すらも、潰れたヒキガエルっぽい、豪奢な服着てアクセサリージャラジャラつけたハゲヒキガエルこと、ヘーゲンバッハ子爵のガマ睨みじみた視線に、流石にティネッツエちゃんの顔色が悪いんだわ。


「うん、貴様のメンバーも貰い受けようか」


 ……開口一番、何言ってんだろうな。このカエル。いや、分からんでもない。心情をって意味ではなく物語のテンプレートとして、この手の輩が考えそうな事としてはって意味で。

 まぁ、俺の今ここに居るパーティーメンバー、美少女二人に美術品二体。そして美幼女一人だからな。子爵の中の七つの大罪のうちの【強欲(グリード)】が右手の暗黒封印を揺るがすほどに疼いちまったんだろう。厨二病乙。


「駄目だが?」

「うん? 何と言った?」

「駄目だが?」


 難聴だろうか? ハーレム系主人公たるもの難聴じゃなきゃいけないらしいが、このヒキガエル、この後、前世に目覚めて心を入れ替える予定でもあるのかね?


 だったとしても言う事を聞いてやる気はないが。一応視線で『そこん所どうなん?』って聞いてみたけど、全員が全員、即決で首振ってたわ。


「き、貴様!! 子爵様の命に逆らうのか!!」

「逆に、俺が子爵様とやらの命令を聞かなきゃいけない理由って何よ」

「は? いや、だから……」


 こういう返しはされた事が無かったのか、俺に文句を言って来たネズミ系従者が口をパクパクさせて言い淀む。子爵は子爵で、目をギョロっと見開いて、顔を真っ赤にさせ始めた。


「こ、こ、この無礼者を叩き伏せろ!!」


 殺せじゃないんだ、子爵様。その程度には理性があるのか?

 彼の命令で世紀末達が動き出すが……


「ゴハッ!!」

「ゲブェ!!」

「グガッ!!」

「ブヘッ!!」

『【嘆息】……他愛のない』


 モップでファティマに一瞬の内に叩き伏せられた。何か俺、最近戦ってない気がするなぁ。あ、キマイラん時は戦ったか? いや、ありゃただの狩りだったか。やっぱり戦ってねぇわ。

 何か、ネズミ系従者が青くなってるが、まぁ、それはお互い様と言うよりか、襲い掛からせたんは、お前ん所の親玉なんだし、何の罪もないティネッツエちゃんの事を青くさせて、むしろ借り作ってる身なんだから、甘んじて受け入れとけやって言うな? それでもティネッツエちゃんの事については許さんけど。


 で、ヒキガエルの方は、目をこれでもかと見開いた上で『ヒッヒッ』って引き攣った声を上げてる訳なんだわ。


「俺は聞いただけだぞ? 『俺が命令を聞かなきゃいけない理由って何よ?』ってさ。それの答えが『叩き伏せろ』って、意味不明にも程があるだろうが」

「ん!」

「馬鹿の考え休むに似たりぃ~」


 煽るな煽るな。二人とも。

 煽って良いのは煽られる覚悟のある奴だけなんだからね?


「ほら、答えてくれよ、ヘーゲンバッハ子爵さんよ」


 真っ赤な顔で引き攣った様な声を出していたヘーゲンバッハだったが、多少は息を整えられたのか口を開いた。


「平民がぁっ!! 貴族に逆らってっ!! ただで済むとでもぉっ!!」


 ハイ頂きました。傲慢系貴族のテンプレート。何と言うステレオタイプ!! いやいや、ホントに、()()()な台詞吐くんな。

 でもまぁ、勘違いは訂正しておかないとな。すれ違い系ラブコメじゃあるまいし。


「いつから、俺が、貴族じゃないと勘違いしてた?」

「はひっ!?」


 俺の言葉に、たぶん逆の意味で言葉を失っただろうヒキガエル子爵。

 そんな事、思いもしなかったってぇ表情だな。この国だと、貴族が冒険者になるとか、冒険者が武功を上げて貴族になるってのは無いんかね?


「う、嘘だ!! 貴様!! ワシを謀ってるのであろう!! 貴様の様な者!! 見た事など無いわ!!」

「この国の貴族だなんて(ひと)(こと)()ってないだろうよ。この国には、他国から入ってくる貴族は居ないのか?」

「え! いや、それはぁ……」


 何だろうね、この想像力の欠如さ加減。避暑や巡礼なら兎も角、旅をする貴族ってやつは珍しいだろうが、皆無って訳じゃ無かろうに、いや、レアだから、自分に当たるなんて思っても見ていないんだろうな。

 俺は、大きくため息を吐くと、左手を腰後ろに当て、右手で胸元を押さえる。


「初にお目にかかる。私はデストネーチェ王国が辺境伯を任されている、オーサキ領領主、トール・オーサキ辺境伯だ。お目に掛かれ、嬉しく思うぞ? ヘーゲンバッハ子爵殿?」


 俺が国王から貰った“国王の紋章入りの宝剣”を見せつつ、そう名乗ると、ヘーゲンバッハさん、声にならない悲鳴を上げて、椅子ごと後ろにひっくり返ったわ。

 大丈夫なんか? 頭。その体重掛かると、結構、不味いだろうに。


 よし、後ろのラミアー&聖武器ズ、笑いこらえてプルプルしない!!

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