表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
323/1157

トラブルは歩いて来ない、常にダッシュで向かってくる

 ダンジョン町に戻った途端に、俺達は宿の主人に呼び出された。何じゃらほい? って、思ってたら、何か俺のキャンピングカーを売ってくれとか言って来た貴族が居るんだとか。


 いや、普通に無理なんだが?


「あれは、俺以外扱える様なもんじゃないで、無理だわ」

「いや、しかし、ヘーゲンバッハ子爵様のお願いを無下には……」

「……じゃ、何も言わずに勝手に出てったって事にしてくれ」

「それがそのぉ……」


 そう言って、何か廊下の方をチラリとみる主人。ああ、成程、既に廊下に従者か誰かが控えてるんな。ってか、これって最早すでにキャンピングカーが自分に渡されるのが当たり前って思ってるんか?

 貴族ってだけで、身分的には大概恐れられるモノではあるけど、この大陸だと、それが顕著なんかね? なんか、宿の主人も最初(はな)から抵抗するってな意思が見られんし。


『【不快】何故マスターが譲歩しなければいけないのでしょう』

「身分、階級ってのは、本来ならそう言うもんさね、こっちがだいぶ緩いってだけで」


 宿屋の主人的には、こっちに相談してるってだけでも、結構頑張ってるって状態なんだろうな。下手すりゃ、俺等がいない間に持ってかれた挙句に、事後承諾って事にもなりかねん所なんだろう。相手が貴族様って事では。まぁ、俺達も貴族ではあるんだが、そんな事は態々言ってねぇしな。知らんものは考慮出来まいて。


「なぁ、ご主人さんよ、埒あかねぇから、先方を呼んで来てくれねぇ?」

「ひ!! ですが……」


 マジか、それ程か。呼び立てる事すら恐れ多いってか。そこまで権力(ちから)があるんか、こっちの貴族。

 家の領とは大違いだな。いや、まぁ、貴族ったって所詮は俺だしな。何っちゅうか平民と目線が同じっちゅうか、しょっちゅう領内のてか、唯一の町ん中に出没してるって事も有って皆慣れてるってのもあるんかね?

 あーいや、向こうでも公爵領とか王都とかの住民の大半はむしろ『貴族様? って言われてもオレ等とは関わり合いのない人たちだからなぁ』みたいな反応だったし、貴族の方も平民とはあまり関わり合ってるって感じじゃなかったからな。

 その分距離感があるんだろう。もっとも、基本的にあまり傲慢なってタイプは居なかった気がする。利己的ではあっても。


 つまりは、こっちの大陸ってかこの辺りの貴族は、平民と距離感が近い上に傲慢だって事なんだろう。もしくは、それを助長する様なルールがあるか。


「……その貴族さんの従者の人にお伺いを立てる事まで出来ないって訳じゃ無いよな?」

「えっと、あの、その程度であれば……」


 そう言って宿の主が廊下へと出て行く。結構、高級な宿なんだがね? そんな所でもお貴族様に逆らえんのじゃろか?


「イブ達には、キャンピングカーで待機してて貰った方が良いかなぁ」

「や!」

「ナカーマ」

『【拒否】マスターのお傍に居させていただきたく』

『【否定】ボクが一緒に居ないなんてありえなのデス』

「あ、あの、おじゃまじゃなければ……」


 即座に全員から拒否かよ。これ、犬達も宿に入れてたら、アイツ等も拒否ってたんかね? 拒否ってた気がするなぁ。


「あ、あの、トール様、ヘーゲンバッハ子爵様の方が部屋に来られるようにと」


 あ、結局俺達が行くのね。ただ、馬車を置かせてもらっただけの宿で、こんな事に巻き込まれるなら、ケルブ辺りに守って貰って、遺跡(ダンジョン)付近に繋いどった方が良かったかね?


 結果から見れば、ケルブもオファニムもダンジョンの中では活躍の機会がなかった訳だし。

 いや、それは結果論か。

 何が起こるか分からん状態で、アイツ等を置いて行くってぇ選択支なんざなかったし、高級宿で()()を預けた事で、こんな面倒事に巻き込まれるなんて思いもしなかったしな。


 あぁ、冒険者ギルドでちょっと絡まれたからって、情報収集を疎かにするべきじゃ無かったな。この国の現状をもう少しでもわかってたら、こんな事態に巻き込まれなかったかもしれないのに。


『【反論】この国の貴族と平民の状況がこの様な感じであるなら、どの道、同じ事は起こっていたでしょう』

『【苦笑】どんな場所にも一定の愚者ってのは居るモノデス。むしろそう言う輩にはオーナーって存在を心底刻んでやれば良いデス!』


 確かに早いか遅いかだけの気もするなぁ。


「まぁ、相手の出方次第だが、ふざけたことぬかしやがったら、何時もの通りOHANASHIかね?」

「トール、様の方、きっと正しい、と、思う、よ?」


 何かいつもそうだが、ちょっとは疑っても良いのよ? イブさんや。今はその全肯定が有難いが。


「操る?」

「それは最後の手段な? ラミアー」

「あの! が、がんばります!!」

「……気持ちだけ受け取っておくんで、ファティマ達と一緒に居てね?」


 何か、こっち来てから随分とアグレッシブな感じだな、ティネッツエちゃん。何かあったんじゃろか?


 でもまぁ、皆のおかげでちょっと肩の力が抜けたわ。

 俺も少~しばっかり、苛ついてたみてぇだな。


「じゃ、そのハーゲンマッパ子爵だったか? の所、案内して貰おうか? ご主人さんよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ