始まってたわ古代文明
俺達の『何やってんの?』的な視線に居た堪れなく成ったのか、ロボ監督、両手で顔を押さえて蹲ってしまったよ。
「えっと、わたしが【たんち】でひろいところみつけちゃったから……」
「いや、ティネッツエちゃんの所為じゃないし、ここに行こうとか思ったの俺だし」
うん。ここの端末が基本スタンドアローンだったんで、ジャンヌがハッキングかまして内部地図を入手って訳に行かなかったんよね。
なんで、ティネッツエちゃんに【探知】をして貰ってここまで来た訳だ。その辺は流石コボルトって感じだ。地下だと優秀だわ。
「むう」
「いや、イブの【探査】は、障害物が多い所だと使い辛いからな? そこはケースバイケースだと思ってくれ」
自分の魔法が使えなかったからか、イブが少しむくれてる。いや、確かにこの遺跡に入ってから、活躍の場が無かったのも確かだが、それについては俺も同じだし、それ以上に役に立てるはずなのに何にもしなかったラミアーとか居るからな? ラミアーは本当に気まぐれにしか手を貸してくんねぇから。いや、頼めば手は貸してくれるんだが、対価有りで。
それはそれとして、まぁおおよそ、この娘が遺跡の責任者ってぇ事なんだろうさ。
で、本来なら謁見&バトルする部屋みたいな所があって、そこで待ち構えてたロボ監督が見栄を切って行う口上だったんだろうが、場所が場所だからなぁ。
なんと言うか、豪奢な演劇の舞台裏を覗いちゃった様な気分。
多分だが、これ、俺達が監視カメラやらエネミードローンとかゴーレムやらから完全に隠れて潜入しちまった弊害なんだろうな。
要は全く痕跡を見せなかった為に、侵入されてる事に気が付かなかったって言う。
その上で、本来なら冒険者には見せる事のない増築現場にまで俺たちが来ちまったから、色々と準備が出来ていなかったんだろうさ。
『恥ずかしい所を見られた。もうお嫁に行けない……』
お嫁に行く気だったんか、ロボ監督。てか、ロボだよな? 嫁に行くって可能なんか?
『【肯定】あの時代は次元を超えた恋愛も多い時代でしたので、むしろ3次元上に肉体が有る我々は人気商品でした』
ちょっと待て。それは2次嫁が居る人間も居ったってぇ話だよな?
『【肯定】デスデス! ただ、法的な権限も拘束力も無かったのが残念デス。けど、だからこその純愛だったデス』
「それで法的にも有効だったら末期も良い所だと思うわ」
始まってたわ古代文明。
それは兎も角、未だ羞恥心が表に出まくってるロボ監督が、俺達を謁見の間らしき所まで案内してくれた。
『ちょっとここで、待っててください』
そう言って彼女が退出した後、ゴーレムが人数分のパイプ椅子を持って来てくれたんで『有難う』と返しておく。
なんか照れ臭そうにペコリをお辞儀してったが、作業用な外見のゴーレムですらこの性能か。
古代文明、やっぱすげぇな。何か普段、残念な所ばっか見えてるからアレだけど、アレ等の所為で。
さて、恐らくラスボス仕様のロボ監督が座るであろう白地に金の文様が入り、所々に宝石がバランス良く散りばめられた豪奢な椅子と向かい合わせで座る。ラスボスってか普通に清潔感のある王様用って感じだけど。
その間犬達は、部屋の中のあちこちの匂いを嗅いで回っている。自由だなぁ。
バスケットコートなら二つ分は入りそうなただっ広い謁見の間に、たった6人と4頭だけがポツンと居るってぇ結構なシュールな絵面。
早く戻って来てくれんかね?




